みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。
今回鑑定をするのは『ダイ・ハード』です。
ブルース・ウィリスの出世作かつアクション映画の金字塔として名高い名作です。
クリスマス当日が舞台となっているので、アクション映画ファンの界隈でこの時期に毎年のように盛り上がりを見せ、一種の風習として機能するくらい根強い人気を誇っています(もうクリスマス過ぎてるけど・・・。記事作るの間に合いませんでした 汗)。
それでは早速鑑定していきましょう!
目次
■作品情報
・基本情報
(C) 1988 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
■原題:Die Hard
■発掘国/制作年:アメリカ(1988)
■キャッチコピー
・監督、キャスト
■監督:ジョン・マクティアナン
■主要キャスト
ジョン・マクレーン:ブルース・ウィリス
ホリー:ボニー・ベデリア
ハンス:アラン・リックマン
パウエル:レジナルド・ヴェルジョンソン
エリス:ハート・ボックナー
アーガイル:デヴロー・ホワイト
タカギ社長:ジェームズ・シゲタ
カール:アレクダンダー・ゴドノフ
ビッグ・ジョンソン:ロバート・ダヴィ
・あらすじ
ニューヨークの刑事であるジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)は、仕事の関係で別居中の妻ホリー(ボニー・ベデリア)に会うためにロサンゼルスに到着した。ジョンの送迎のために手配された運転手のアーガイル(デヴロー・ホワイト)が運転するリムジンに乗り込み、ジョンはホリーが勤める日系企業のナカトミ・ビルに到着する。ビル内ではナカトミ商事のクリスマスパーティが開かれており、ジョンは社長のタカギ(ジェームズ・シゲタ)の案内によってホリーと久々の再開を果たす。会話も弾むはずが、2人はちょっとした結婚の価値観の違いから口論をしてしまう。1人になった途端、思わず後悔をするジョンだったが、その一方でナカトミ・ビルに向かって走る怪しいトラックが近づいており・・・。
■ざくっと感想
本作の鑑定結果は、、、
ハリウッドアクション界に「ハゲ」というトレンドを生み出したハゲパイオニアであり、今やハリウッドを代表するアクションスターの1人となったブルース・ウィリスの出世作並びに代表作として名高い本作。ブルース・ウィリスと言ったら誰もが必ず本作を連想するほどの名作アクションで、現在に至るまでシリーズ5作目まで製作がされていることもあってその人気ぶりの高さが伺える。
畑違いの土地で不運にもテロリスト襲撃事件に巻き込まれる刑事の主人公が、あらゆる意味で劣勢の立場にありながらも臨機応変に知恵を絞って立ち向かう姿が、当時ハリウッドアクションを牛耳っていたスタローンやシュワちゃんの立ち回りとは異なっており、後に多くの作品に影響を与えるほどの新たなヒーロー像を確立させました。『プレデター』や『レッド・オクトーバーを追え!』など、当時飛ぶ鳥を落とす勢いであったジョン・マクティアナンが監督を務めていることもあり手堅く火力のあるアクションが売りだが、緻密に練られた脚本、巧みな伏線の張り方と回収法、魅力溢れる悪役のテロリストたちなど、アクション以外にも洗練された見所が盛りだくさんだ。アクション映画の金字塔の1つとも言うべき作品だが、全ての分野において高水準のクオリティを誇るので、純粋にいち映画としてのレベルが相当に高いのです。
悪役について言及すれば、『ハリー・ポッター』シリーズのスネイプ先生役でお馴染みの名優アラン・リックマンがテロリストのボスであるハンスを演じており、映画デビュー作でありながらも映画史に残るようなカリスマ性のある悪役を熱演しているのも見逃せない。
ちなみにタイトルの『ダイ・ハード』とは「なかなか死なない奴、しぶとい奴」という意味で、苦境にも必死に食らいつく主人公マクレーンのことを指しています。
以下、ネタバレありの感想と考察になります。
作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!
■感想と考察
・等身大のニューヒーロー
世界一不運なタイミングで不幸な事故に巻き込まれる不死身の男、ジョン・マクレーン!
(C) 1988 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
80年代のハリウッドアクション界は、『ランボー』のスタローンと『コマンドー』のシュワちゃんという2大アクションスターが築いた筋肉・銃撃・爆発アクションの黄金期であり、業界の主役は完全に彼らでした。そんな80年代の終わりに製作されることになった本作ですが、20世紀FOXの大作ということで実際にスタローンとシュワちゃんにも主演オファーがあったらしい(結局実現はしなかったけど)。名だたる大物たちを押さえ、当時コメディアンとして人気を博していたブルース・ウィリスが起用されたのはまさに異例であり、しかしながら彼の起用がなければここまで名作になっていなかっただろうと考えれば奇跡とも言える。彼の起用が従来のアクションスタイルの何を変えたのか。ブルースが演じる主人公のジョン・マクレーンの活躍を観ていると、それまでの筋肉アクションキャラたちとは異なる点がたくさんあることに気が付く。
まず真っ先に見て分かるのが、ブルースはそれまでのハリウッドアクションスターの代名詞ともいえる屈強な肉体を兼ね備えていないことだ。だらしない体という訳ではないが、それでもどこかくたびれかけたように見える佇まいはどこにでもいそうなおっさんそのもの。そして彼が演じるジョンは、元軍人でも特殊部隊でもなく現職の刑事だ。常人より戦闘能力のあるライセンスではあるものの、決して人殺しに特化したスキルを持っているわけでもないのだ。ムキムキの腕を突き出して相手を一撃粉砕したり、バカでかい重火器を乱射して敵を木っ端みじんにして事を解決できるわけでもない。強さというインパクトに欠けるように感じるジョンだが、だからこそその場に合わせて臨機応変に状況を整理して、出たとこ勝負で予想だにしない行動に打って出るしかない意外性がある。これは自分の型をまだ持っていなかったブルースが主役だからこそ成立したキャラクター形成と立ち回りで、もしスタローンやシュワちゃんが起用されていればアクションの見せ方や印象はまた違っていたはずだ。
筋肉より刑事という職業の勘と頭脳を最大の武器とし、相手の裏をかいて地道にテロリストたちを葬っていくアクションスタイルは、筋肉アクション映画ばかりを見慣れているボンクラだと今でも思わぬ衝撃を受けるだろう。殴り合いでは爽快感よりも徹底して泥臭さを意識し、傷つけられた分に合わせて血を流して弱っていくマクレーンの姿は生々しく、痛みや疲れもダイレクトに伝わってきて彼への強い感情移入を促す。決して無敵の強さを誇ることなくアドレナリンと根性論で立ち向かっていくという、それまでのアクションヒーロー像を一新した等身大のヒーローがジョンなのだ。ジョンが無口なクールガイでなく、小生意気に軽口を叩くチョイワル親父であることも観ていて自然に親近感が湧くので面白い。学校のクラスでジョンが隣の席だったらめっちゃ楽しそう 笑
ツラいときでもユーモアを忘れないマクレーンに、もともとコメディアンとして頭角を現していたブルースを起用したことが、ここに来て功を奏しているんですネ。
事あるたびにマクレーンが呟く「イピカイエー」は、本作屈指の名セリフ。アメリカのカウボーイが使う言葉らしいのだが、作中の訳が「ったりめえよ!」と豪快。いかにもジョンというキャラが使いそうな軽妙な言葉で、その後のシリーズでも「イピカイエー、マザーファッカー!(クソッタレ)」という決めセリフとして定着していくことになる。
・超ドSな大・ハードなアクション
クリスマスナイトに超・ハードでド派手なアクションの連続!
(C) 1988 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
前述の通り、主人公が無敵を誇るビーパワーな爽快系のアクション作品ではないものの、やはりハリウッドの大作ということで迫力ある銃撃シーンや爆発の規模、体を張ったスタントとアクションのレベルはお墨付きのクオリティ。「なかなか死なない」というタイトルが意味するように、致死レベルのアクションと危険がジョンに課せられる超ドSアクション映画なのだ。物語の主な舞台が1棟のビルという自由の効かない閉鎖空間であることも、アクションにスリルと緊張感をもたらすことに成功してる。しかも本作でブルースはあまりスタントを使用していないんだとか。机の上に上っているテロリストに下からぶっ放すシーンで、激しすぎる銃声のせいで左耳の聞こえが一生悪くなってしまったらしく、アクション演出の激しい物々しさも強め。前述もしたけど殴り合いや取っ組み合いのシーンは真に泥臭く、筋肉でぶっ飛ばしたり洗練された蹴り技で綺麗に決めることなし。もみくちゃ加減が他とは一味違う見応えになっている。
ビルの屋上が爆破されることを人質に伝えようと躍起になるジョンと、自信過剰なFBIたちのヘリコプターがナカトミビルに迫るシーンが交互に入り乱れる場面が、物語の最終局面へと突入するハラハラを煽っていて最高に好き。ビルの屋上が吹っ飛んで、火に飲み込まれたFBIのヘリが落ちていくシーンなんてどうやって撮影したんだろうか。マジでヘリコプターを焼いてるのか?
ジョンを追い込みまくる激しいアクションの連続! これぞ「大・ハード」なアクション! 今、上手いこと言った??
・緻密に練られたストーリーと伏線
ジョンに協力する、オヤツ大好きな黒人警官のパウエルの経歴に重要な伏線が。
(C) 1988 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
そして本作は派手なアクションだけが売りではない。とりあえず銃をぶっ放して大爆発をさせておけば、勉強をしないようなバカな男子が黙って虜になるのが80年代のハリウッドアクションの常だった。しかし本作には隅から隅まで丹念に構築されたストーリーが待ち受けており、画だけ観てれば楽しいという従来の大雑把な概念を払拭している。1人身を身を隠しつつ泥臭く戦うジョンを中心とし、彼とテロリストの探り合いで次第に見えてくるテロリストの動向。目まぐるしく動いていく状況の中で、テロリストたちの実態が明らかになっていく緊迫感と、常に物語にのめり込ませる複雑巧緻な奥深さが秀逸だ。
特に目を見張るのが、あまりにも用意周到すぎるテロリストたちの計画だ。通常であればパワープレイでなんでもかんでも無理に押し切ってしまうのが映画上のテロリストのイメージだが、それでは新鮮味がない。本作のテロリストの中にはハンスという切れ者リーダーがおり、警官の機動隊がやってくる、FBIがやってくるといった不利なアクシデントにも「想定済みだ」と動じないので、彼らが一体どういった出方をするのか、悪役という立場を忘れて思わず夢中になってしまう。それは単に警官らを上回る武力を持って制圧ができるという野蛮な意味ではなく、彼らの行動を計画の一部にして利用するというめちゃスマートなもの。FBIが良かれと思って強制させたビル内電力の停止によって、テロリストたちが難攻不落の金庫ゲートを開けてしまう。そう、こいつらはテロリストでもなんでもなく規模がデカすぎる強盗だったのだ。まんまと正義の力を利用して作戦を成功させたハンスたちがこれを「クリスマスの奇跡」と謳っているのがまたニクい。その後もいかにもテロリスト風な目的で自分たちを偽りつつ、屋上に脱出用のヘリを手配させて全てを爆破させ、自分たちを死んだと思い込ませて地下から救急車でしれっと逃げようとしていたという、本当はめちゃくちゃ単純だった作戦にかえって圧倒され、THE☆敵ながら天晴としか言いようがない。
そして至る部分に張り巡らされた伏線とその回収方法。冒頭からジョンの高所恐怖症、裸足を勧められるジョンと極めて重要な伏線がバリバリに張ってあるのを皮切りに、地下駐車場に取り残されたアーガイル、人数キャパ以上の大型トラックで入ってきたテロリストたち、お菓子大好きパウエルなど、伏線を挙げれば枚挙にいとまがない。物語の全てが時計の中の歯車として噛み合い、何でもない演出だと思っていたことが意外な伏線として仕込まれていて、いずれも綺麗に回収されていく奇跡の脚本がお見事の一言に尽きる。最終的にホリーの腕時計までもが伏線になっていたと気付いた時には感心しきりだった。
伏線の極めつけはパウエルの存在。ビル外の警官の中で唯一ジョンを信用するパウエルが、中盤で「過去の失態で銃を抜けなくなっちまった」と己のトラウマを語るシーンがある。このセリフ自体は比較的伏線として読みやすいのだが、思わず熱弁したくなるのはその見せ方だ。テロリストたちは全滅してめでたしめでたしと来ていたところ、死んだと思っていたテロリストメンバーのカールが起き上がり、ジョンに向かってマシンガンを構える・・・。危ない!となったその時、突如拳銃の銃口部分のみがフレームイン。何度も火を噴く拳銃がカールにトドメを指す。銃口への焦点がじわじわとずれ、撃った本人であるパウエルにピントが合って・・・と映画史上最高にイカした伏線の回収演出に拍手が止まらない。ここでバックに流れている音楽もクリスマスらしいきらびやかなカッコよさを纏っていて、ちゃんと気を持っていないとこの神演出に失神しそうになるので注意 笑
また本作ではマスコミの行き過ぎた行動が主人公たちを危険にさらしてしまうというソーシャル的な問題も組み込まれていたりするのが興味深い。みんなが世の報道局をマスゴミと呼びたくなるのが分かるほど、作品を観ていて自己中なレポーターのリチャードに対する嫌悪感は増幅する一方だ。
でもみんな、この不快感をしっかりと心に刻んでおいた方がいいよ。なぜならこいつ、続編の『ダイハード2』ではもっとウザくなって帰ってくるから!笑
・悪の華、ハンス
映画初出演であると思わせない、アラン・リックマンの徹底したキャラづくり。
(C) 1988 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
主人公のジョン・マクレーンの魅力について余すことなく語ってきたけど、本作ではもう1人際立ったカリスマを放つ登場人物が存在する。それがテロリストのリーダー、ハンスである。テロリストと聞けばかなり粗暴なイメージを抱くのかもしれないが、ビシッとしたスーツに身を包み、常に冷静沈着、どこか気品さえ漂わせるハンスの第一印象はヨーロッパの紳士。その見た目通り武力での制圧を第一としないなりふりや、時に人質のトイレ通いを許可したり妊婦への気遣いを認可するジェントルマンな一面も見せるハンス。だからこそハンスが急に武力を発動させたり物凄い剣幕で迫ってくる冷酷な一面が超コワい。銃をゆったりと構えて引き金を引き、相手の頭部を爆発させるという暴挙に出ても、それが一種の美であるかのように錯覚してしまうほど、ハンスという悪役には個性的な品格がある。本作の成功には、主人公だけでなく悪役にもそれまでにない新たな変革をもたらしていることが吉と出ているのは言うまでもないね。
ハンスを演じているのが、『ハリー・ポッター』シリーズのスネイプ先生でお馴染み、惜しまれつつも亡くなったイギリスの名優アラン・リックマンであることにも関心が向きます。実は本作はアランの映画初出演作品。それまで数年舞台俳優として活躍をしていたものの、40歳過ぎという決して若いとは言えない遅咲きでの銀幕デビューだ。しかしそんなキャリアの軽さを微塵も感じさせないほどの持ち前のセンスとカリスマと色気で、初の持ち役にも関らず映画史に残る悪役を形成してしまったことに驚きを隠せない。
せっかくなので、ハンスに関するトリビアも1個紹介します。終盤、ハンスがビルの中腹から落下していく最期を捕らえた場面は今なお名シーンとして語り継がれているが、実はハンスが落ちる瞬間の驚愕の表情はマジモン。というのも、「○秒後に落としますんで一つヨロシク!」とマクティアナン監督から聞いていたアランはカメラが回り始めてから来たる時に備えてスタンバイしていたのだが、なんと監督はアランに伝えていたタイミングよりも早い段階で彼を落としたのだ。身構えていただけに完全に意表を突かれたアランの驚き顔は演技でもなんでもなく、「えッッ!!??」と彼がリアルにビビっている表情なのだ。アランにとってはドッキリもいいところだったろうが、おかげで演技以上に本物の表情を引き出すことに成功し、このシーンは名シーンとして格を上げたのだった。
■日本がらみ
物語の舞台に日系企業のビルが選ばれているのは、当時バブルによって景気がウハウハになっていた日本企業がアメリカにこぞって進出、買収をしていた印象が強かったため。『IT イット』や『ロストワールド ジュラシックパーク』などにスーツで身を固めた堅苦しい日本人ビジネスマンが登場していたことも、まさにこの時代のハリウッドにおける日本人への印象を物語っている。
ちなみにナカトミビルの外観とロケは、製作会社の20世紀FOXの本社ビルが使用されており、非常にコスパの良い撮影だったことが分かる。
ジョンとホリーが久々の再開を果たしたにも関わらず険悪な雰囲気になってしまう発端になったのは、ホリーが名字を勝手に旧姓に変えていたから。「日本の企業では結婚していると働きづらいから・・・」と説明するホリー。これに対してジョンの納得がいっていないということは、アメリカでは会社での勤務にそんなことを気にする必要がないということだ。もう32年前の映画で、働き方改革で日本企業の在り方も変わってきてるんだろうけど、未だに育児休暇の取得とか結婚関連で揉めるケース、たまに耳にするもんねえ。
タカギ役のジェームズ・シゲタはハワイ出身の日系三世で、アメリカにおいて数多くの映画やドラマに出演していた。(C) 1988 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
■鑑定結果
迫力あるアクションと巧みに練られたストーリーが融合した、問答無用の一級作品です。クリスマスに見るべきアクション映画は本作以外に考えられない。
となります!!
それでは今回の鑑定はここまで。
またお会いしましょう!
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