【ネタバレ/感想/考察】『ブレット・トレイン』の鑑定【ラストは? 原作との違いは?】

アクション
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Jing-Fu
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みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。

今回鑑定をするのは『ブレット・トレイン』です。

日本の小説家である伊坂幸太郎の人気作品『マリア・ビートル』を原作とし、日本の新幹線内に集結した様々な殺し屋たちの任務と思惑の交錯を描くサスペンス・アクション映画です。

原作の持ち味はそのままに、ブラッド・ピットアーロン・テイラー=ジョンソンブライアン・タイラー・ヘンリー真田広之などの豪華キャストたちが物語を彩ります。

そんな『ブレット・トレイン』のネタバレを明かしながら、感想と考察を鑑定していきますね。

原作との違いは?

 

■『ブレット・トレイン』のあらすじと基本情報

まずは予告編をどうぞ☆

映画『ブレット・トレイン』予告1 2022年 全国の映画館で公開

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■あらすじ

任務の度に様々な不幸に襲われてしまうツイてない殺し屋のレディバグ(ブラッド・ピット)。「とあるブリーフケースを奪う」という新たなミッションを受け、日本の東京発の新幹線「ゆかり」に乗り込んだレディバグだが、そこには他にもそれぞれの任務を請け負う殺し屋たちが乗っており・・・。

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■原題:Bullet Train

■発掘国/制作年:アメリカ(2022)

■上映時間:126分

■監督:デヴィッド・リーチ

■主要キャスト

レディ・バグ:ブラッド・ピット

タンジェリン:アーロン・テイラー=ジョンソン

レモン:ブライアン・タイラー・ヘンリー

木村:アンドリュー・小路

プリンス:ジョーイ・キング

エルダー:真田広之

ホワイトデス:マイケル・シャノン

ホーネット:ザジー・ビーツ

ウルフ:ベニート・A・マルティネス・オカシオ

 

■『ブレット・トレイン』のネタバレ感想と考察

①原作のレガシーが守られた映像化

②より際立った「運命」の交錯

③ブラピ×ジャッキー・チェンスタイルのアクション

④世界よ、これが真田広之だ。

それでは鑑定していきましょう!

 

ネタバレ①:原作のレガシーが守られた映像化

幸運なことに、管理人は劇場公開前に試写会(しかもIMAX!)で本作を拝むことのできる機会に恵まれたため、一足お先に楽しんできました。その際に京都でのレットカーペットとプレミア試写会舞台挨拶の中継も観ることができたという至れり尽くせりっぷり。本編も期待通りの面白さだったので劇場公開したらもっかい観にいこうと決めるのと同時に、ツイッターのフォロワーさんからの推しもあって原作となる『マリア・ビートル』も読んでみることにしました!

で、『マリア・ビートル』もまあ面白いこと面白いこと。読んでみた結果、原作の魅力となる「点と点が繋がっていき大きな種明かしが披露されるラスト、同じシチュエーションを複数の登場人物ごとの視点から多角的に説明していくクロスオーバー的な巧妙性」が、映画でも上手く再現できていたと思います。そしてびっくりしたのが、細かいテコ入れや省かれてしまった描写はあれど、大枠は非常に原作に忠実な構成になっていたことですね。2時間の映画の中に約600ページ全てを詰め込むのは無理だとしても、原作の皮だけをかぶって好き放題せず、原作のレガシーを意識しつつハリウッドのアクション大作としてのエンタメ脚色を肉付けができた日本発エンタメの成功例なんじゃないでしょうかコレは。

Jing-Fu
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『ザ・ロストシティ』ブラピがカメオ出演した代わりにと、本作にチャニング・テイタムサンドラ・ブロックがオイシイ役所でカメオ出演してるのは微笑ましいですね。それを飛び越える勢いで、超スペシャルカメオ出演としてワンシーンのためにライアン・レイノルズを呼んだのには笑うことしかできません。

 

考察①:より際立った「運命」の交錯

本作のラストシーンにおけるホワイトデスのセリフによって、作中に登場する雇われ殺し屋が、大なり小なりホワイトデスと何らかの繋がりがあったことが判明します。しかもそれは交友や仕事の関係ではなく、「全員がホワイトデスの妻の死に繋がる行動をした」とするホワイトデス側の私怨対象になってたってことです。備忘録として原作との違いをまとめると・・・

●レディバグ
・ホワイトデスの妻を死に導いた張本人(のカーバーの代理 汗)。
・ラストまで生き残る。
・原作での天道虫。
・原作では峰岸の孫請でブリーフケース奪取の依頼を受けていたかと思いきや、峰岸親子殺害の邪魔になる蜜柑・檸檬コンビを攪乱させるためにスズメバチに雇われていた(と思われる)。
・原作ラストで天道虫は、実は別車両に乗っていた真莉亜(本作のマリア)と合流して足速に駅を去っていった。
●タンジェリンとレモン
・ホワイトデスが妻から離れ彼女が死ぬきっかけを作った。
・タンジェリンは死亡、レモンは最後まで生き残ってプリンスを殺す。
・原作での蜜柑・檸檬
・原作では峰岸から息子とブリーフケース奪取の純粋な依頼を受けている。
・原作では檸檬は王子に頭を撃たれて死亡、蜜柑は天道虫に首を折られて死亡。
●ホーネット
・ホワイトデスの妻を救うはずの医者を暗殺した。
・列車内でレディバグとの戦闘の末に自らの毒で死亡。
・原作でのスズメバチ。原作では2人いて車掌と車内販売に化けてた。
・原作では峰岸親子を殺して名を上げよう企む。
・原作では車内販売の女は天道虫との戦闘の末に天道夢自らの毒で死亡するが、車掌の男は最終地点の盛岡駅で峰岸を毒殺することに成功する。
●息子
・ホワイトデスの息子。不祥事を起こして母親=ホワイトデスの妻が死ぬきっかけをつくった。
・ホーネットによって毒殺される。
・原作では峰岸の息子で「峰岸のぼんぼん」と呼ばれる。
・原作では峰岸の正当な後継者ながらも、馬鹿で無能ということから峰岸からは愛想を尽かされている。
・原作でもスズメバチに毒殺される。

 

ホワイトデスの私怨対象以外のキャラは・・・↓
●プリンス
・ホワイトデスの実の娘で、優遇されないことへの反抗に父親殺害を計画する。
・最後まで生き残って新たなホワイトデスになると誓った瞬間にレモンのトラックで轢き殺される。
・原作での王子。原作ではサイコパス男子中学生。
・原作では峰岸とは赤の他人で、あることがきっかけで同級生に対するいじめを注意されたことにより、興味本位で峰岸の命を狙う。
・原作ではラストで目論みが失敗し、木村の父とその妻に追い詰められて列車内で射殺された(と思われる描写がある)。
●木村
・ホワイトデスのブリーフケースを用意した彼との繋がりが原因で、プリンスにホワイトデス殺害のために利用される。
・ラストまで生き残る。
・原作でも木村。原作ではアルコール依存症でふてぶてしく、周囲への絡みも超めんどくさいオッサン。
・原作ではあることがきっかけで王子に絡んだことにより王子に目をつけられ、峰岸殺害のために利用される。
・原作でもラストまでからくも生き残る。
●エルダー
・過去にホワイトデスにボスと妻を殺されたため、復讐の機会を窺っていたが、木村がきっかけでホワイトデスに近づく機会を得る。
・ラストまで生き残り、ホワイトデスにオーバーキルを与える。
・原作でも木村の父親。原作では妻も登場する。夫婦で往年の伝説の殺し屋。
・原作では孫と息子を傷つけられたことの復讐として、王子を殺すために夫婦で新幹線に乗り込んでくる。
・原作ではラストで妻と共に王子を射殺する(と思われる描写がある)。
●ウルフ
・過去にホーネットに妻を殺されたため、復讐のためにホーネットが潜伏してる新幹線に乗り込んでくる。
・妻が殺された場所に偶然居合わせたレディバグをホーネットの仲間と勘違いして殺そうとするも返り討ちにあって死亡。
・原作では狼。天道虫とも仕事柄面識があったものの、弱いものに手を出す性格を天道虫に咎められ、険悪な仲になってた。
・原作では敬愛する人をスズメバチに殺されたため、復讐のためにスズメバチが潜伏する新幹線に乗り込んでくる。
・原作では天道虫に首を折られて死亡。
●ホワイトデス
・妻の死亡に繋がる人物を全て新幹線に手配して集め、全員殺害を計画する。
・ラストでプリンスの用意した自爆銃を発砲して死亡。
・原作では峰岸。本作でも峰岸は登場するが、ホワイトデスの下克上に合って役柄が引き継がれるという設定に変更。
・原作では息子の奪還任務に失敗した蜜柑と檸檬を殺すために盛岡駅まで出向く。
・原作ではラストにスズメバチの1人に毒殺される。

 

こんな感じでまとめると、改めて原作と本作の違いがよく分かりますね。原作では各々の思惑が複雑に乱れ続けてそれぞれの最終目標に向かっていて、本作では各々の思惑が複雑に絡み合いながらも最終的にはホワイトデスの一点へとたどり着いています。わかりやすく言うと、原作が「矢印がひたすら乱れあっている」のに対し、本作では「矢印が交錯しながらも最終的に1個の点に結びつく」、そんな感じですかね。後者はグランド・ラインみたいなもんですね笑 ウルフ以外のキャラの最終目標をホワイトデスで統一することで、それぞれのドラマが交錯することにより、エルダーが強調して発する「運命」という言葉を際立たせる結果となっていて、個人的にはこの巧妙さがハマりましたね。レモンが東京駅で買った水のペットボトルの軌道を、唐突な名曲「上を向いて歩こう」を流しながら敢えて丹念に描いていることも、監督が本作でいかに「運命」を前面に押し出したかったのかがよく分かりますね〜。

ラストでは新幹線がぶっ飛んだり神聖な京都の街並みに大クラッシュするというヒトデナシな出来事が起こるなど、新幹線が無事に終点に到着した原作と比べるとかなりド派手に改変されています。いかにもハリウッド大作的なノリですが、まあ原作ラストをそのまま映像にするとちょっと大人しすぎたかもしれないし、やっぱりハリウッドのアクション大作ですからこの改変は全然許容できる範囲だと思います。ただ、原作でその類まれなる悪のカリスマ性とサイコパスっぷりが描かれていた王子と比べると、「ホワイトデスの娘だった」というオチがあるにしても、原作ほど綿密に素性が描かれないことによって本作のプリンスのキャラ性は薄まっちゃった感じはありますよね。

Jing-Fu
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もちろん本作では説明しきれない登場人物たちの事細かな心理描写や多角的なドラマを経て、次第に種明かしされていく構成の原作も面白いですよ!

 

それにしても、ホワイトデスはレディバグ、ホーネット、タンジェリンとレモンのコンビ、そして息子をどのようにして始末する段取りをイメージしてたんでしょうかね。「互いに殺し合わせる」と簡単に言ってましたけど、彼らがどのような行動をとってどんな結果になるかは分からないはず。多分↓な感じだと思います。

①レディバグ
タンジェリン・レモンとホーネットとブリーフケースを奪わせ合うことによる死亡。奪い合いを制しても、京都より手前の駅で降りた場合はホワイトデスの部下に、京都駅で降りたらホワイトデス自身に殺されていた?
②ホーネット
タンジェリン・レモンとレディバグとブリーフケースを奪わせ合うことによる死亡。奪い合いを制しても、京都より手前の駅で降りた場合はホワイトデスの部下に、京都駅で降りたらホワイトデス自身に殺されていた?
③タンジェリン・レモン
ホーネットとレディバグとブリーフケースを奪わせ合うことによる死亡。奪い合いを制したとしても、ホーネットによって息子を殺されるので最終的に任務失敗という口実による殺害は避けられなかった。それ以前に息子の救出に失敗していても任務失敗で殺されてた。
④息子:日本のヤクザの三号会に殺されてもよかったし、ホーネットに殺されてもよかった。
Jing-Fu
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ホワイトデスは随分奥さんにこだわってベタ惚れだったようなので、奥さんに対しては家庭的で良い夫だったかもしれないですね笑

 

ネタバレ②:ブラピ×ジャッキー・チェンスタイルのアクション

監督のデヴィット・リーチジャッキー・チェンのアクションに影響を受けている」と公言してるだけあり、監督の過去作以上に本作における殺陣はかなりジャッキー節が強めだったと思います。ブラピが立ち回るシーンはいずれも明らかにジャッキーのアクションが意識されていて、周囲のアイテムや環境をフルに活用するアイデアの数々や、「車内ではお静かに」を遵守して殴り合いながら痛みを声に出すまいとオーバーに振る舞う演技だったり、スネを打ったブラピが患部を激しくさすりながら苦悶の表情を浮かべる「イテテ演技」など、どっからどう見てもまんまジャッキー笑 基本的にブラピが真面目に戦おうとしていない姿勢の中、技よりもアクシデントと偶然が折り重なる中で構成されている立ち回りは、キテレツながら列車内の狭く雑多な環境と程よくマッチもしていて嫌いじゃない。

ブラピ演じるレディバグがウルフと対峙するシーンで、ブラピが魅せるブリーフケースの扱い方に思わず目を見張ります。ブリーフケースで防御に徹するのかと思いきや、手中でケースをクルルッと華麗に回したり逆に打撃武器として叩き込んだり、用途が多彩で画も映える「ブリーフケース拳」にも、色濃くジャッキーからの影響が垣間見えますね! ジャッキー『サイクロンZ』でケースを回してましたし、『アクシデンタルスパイ』ではアキラ100%をしながら鉄のトレイをグルルっと手中でやってたし、「回す」アクションは音も画もよく映えますね。ジャッキーのアクションが好きな人には思わぬ収穫になりましたね。

Jing-Fu
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原作では格闘シーンは2回だけあって、天道虫VS檸檬と天道虫VSスズメバチの格闘の様子が事細かく描かれていて楽しいですが、もっとシリアスな感じでした。

 

ネタバレ③:世界よ、これが真田広之だ。

エルダー役の真田広之。もうね、雰囲気が最高! 決して画面内の滞在時間が長いわけではないにも関わらず、新幹線に乗り込んで本格的に物語に絡んでくる終盤にて、ひとたび画面に登場した途端、画面が一気に引き締まる存在感がハンパじゃないよ。「これまで修羅場をくぐって生きてきた」と語る説得力の高さを裏付ける厳かな顔つきも、プリンスと対峙する時の緊張の糸が張り詰めるようなジワジワ感も、これまで真田広之が俳優として培ってきた、他を押し退けるオーラと緊張感が存分にエルダーという役柄に100%乗っかってる感じがして痺れたねぇ〜。

原作での木村の父が懐に忍ばせるのは拳銃だけど、真田広之が持参するのが銃でいいはずがない、やっぱり刀でないと! そこは監督分かっていらっしゃる。熟練の味が染み込む納刀と抜刀の構えは問答無用にキマったショットになっているし、確かな軌道とスナップの斬撃でエンタメを盛り上げていることも事実。真田広之が刀を構えて振るってるだけでその映画には資産価値が生まれるので、是が非でも真田広之のアクションだけは ひいきしてほしいと毎回目を輝かせてるんですけど、本作での彼の殺陣がほとんどスローモーションでキモであるスピード感に欠け、新幹線内での他の戦いを同時多発的に描く一部となっていて若干テンポが悪いことだけが惜しまれますね。残念ながら『モータル・コンバット』には及ばなかった。あと、エルダーが若い時を演じてた役者さん、雰囲気は真田広之に似てたけど、せっかくなら今アクションスターで流行りの「ご本人CG若返り」やってほしかったな〜。みんな『吼えろ鉄拳』の頃の真田広之とか、観たいでしょ?

Jing-Fu
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真田広之が「ジェントルマン!!」って怒鳴るアクセントの響きがドストライクなんですよ笑

 

■鑑定結果

Jing-Fu
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愛すべきトンデモ日本描写も含めて楽しいエンタメ作品です!

鑑定結果:エメラルド映画(☆8)

 

■最後に

それでは今回の鑑定はここまで。

またお会いしましょう!

 

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