みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。
今回鑑定をするのは『コンジアム』です。
今年の夏休みも異様に暑かったですよね~。
夏に涼しさを生み出すのはアイスとクーラーと、そしてホラー映画!
前々から気になっていた韓国産POVホラーを、夏のお供として手に取ってみました。
それでは鑑定していきましょう。
■作品情報
・基本情報
(C)2018 SHOWBOX & HIVE MEDIA CORP All Rights Reserved
■原題:곤지암
■発掘国/制作年:韓国(2018)
■キャッチコピー
それは “演出“ のはずだった・・・
・監督、キャスト
■監督:チョン・ボムシク
■主要キャスト
ハジュン:ウィ・ハジュン
ジュユン:ユ・ジュユン
アヨン:オ・アヨン
スンウク:イ・スンウク
ソンフン:パク・ソンフン
ジヒョン:パク・ジヒョン
シャーロット:ムン・イェウォン
・あらすじ
韓国で最恐とも言われている心霊スポットの「コンジアム精神病院」で、肝試しのために中に入った学生2人が消息を絶ったというニュースが世間をにぎわせていた。
コンジアムは70年代末、入院していた患者の集団自殺、それを機に女性院長のパク氏が失踪したことにより閉鎖された精神病院の廃墟であり、今では様々な心霊現象が起こる恐ろしい場所として肝試しのスポットになっていた。
韓国内で人気のyoutubeチャンネル「ホラータイムズ」の運営者であるハジュン(ウィ・ハジュン)はそのニュースを耳にし、噂の検証と動画の視聴者数稼ぎのため、撮影クルーのスンウク(イ・スンウク)とソンフン(パク・ソンフン)とともにコンジアム内での動画ライブ配信を計画する。
リアリティを出すために、一般人であるアヨン(オ・アヨン)、ジヒョン(パク・ジヒョン)、シャーロット(ムン・イェウォン)の女子3人組と少しビビりのジュユン(ユ・ジュユン)を参加させるかたちで、一行はコンジアム現地に向かうことになる。
親交を深めた7人はコンジアムに到着すると、外のテントで司令塔としてハジュンを残し、それぞれが自分用の配信用アクションカメラを身に着け、肝試し感覚でコンジアム内部を調査していく。
調査が進む度に、ハジュンが意図していた通り視聴者数が伸びていくのだが、一行がさらに調査を進めると、次第に予期せぬ怪奇現象が起こり始め・・・
■ざくっと感想
本作の鑑定結果は、、、
韓国に実在する心霊スポットの「コンジアム精神病院」を舞台に、youtubeチャンネル用のライブ動画撮影に来た若者たちが怪奇現象と対面する様子を描いた韓国産のホラー作品。
いわゆる番組撮影調のストーリー進行、元精神病院の舞台、やらせ仕込み中に本物の恐怖に襲われる、POV視点の映像など、2011年に斬新なドキュメンタリー式のPOV(主観)ホラーとして注目されたカナダ発の『グレイヴエンカウンターズ』とプロットが基本的に同じである。
なら完全なパクリの便乗作品なのかと言われれば決してそうではなく、生配信ならではの没入感、多様的なカメラを使用した映像演出、アジア特有の湿り気のある恐怖など、『グレイヴエンカウンターズ』とは異なる恐れを体感できることは間違いなし。
しかも撮影にあたってモノホンのコンジアム内でロケをしたらしく(諸説あり、一部別の施設での撮影もあり)、勇敢なのか罰当たりなのかはともかく、とにかく目に映るすべての暗く冷たい背景の薄気味悪さが際立っている。
POVホラーは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『REC』などの名作が開拓してきた新たなホラーの見せ方として、初登場時には世界中で絶賛されていたけど、それももはや昔の話。
今となってはジャンルとしてのネタが枯渇しているイメージがあって、本作ももれなくワッ!!と驚かしてくる演出はそこまで怖くなかったものの、いきなり驚かしにかかってくるお化け屋敷的な恐ろしさよりも、何もない無の「時間」と「雰囲気」で気味の悪さを上手く醸し出しているので、予想していたよりは程よく怖がることができました。
いや~、やっぱりアジアのホラー映画は怖い。
そしてヒロインの女子3人組が可愛い!
以下、ネタバレありの感想と考察になります。
作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!
■感想と考察
・生配信の臨場感
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POVホラーの肝となっているのが、恐ろしい出来事が起こっている最中で撮影を中断しない状況だと思う。
もちろん撮影を止めてしまっては映画として機能しなくなってしまうため、撮影を続ける「理由」が大切になってくるのだが、本作の場合は、「ここで撮影をやめるとせっかく獲得した視聴者数が無駄になって、広告収入も得られなくなんぞ!」という人間の欲とエゴが背景となっている。
この撮影理由に全くの不自然さはない。
むしろ今までに見たことのない理由だったのと同時に、ネット社会が著しく普及している韓国ならではの現代的な演出でもあるとして、マンネリを匂わせることなく斬新に感じた。
劇中で主観視点を担うツールとして、携帯型ビデオカメラや設置カメラはもちろん、他にもパノラマカメラ、GoProのようなアクションカメラ、登場人物の顔をアップに移すCCDカメラ(いわゆる自撮り)、ドローンによる空中撮影など、色々な映像表現が交差することによって見た目に飽きることもない。
中でもCCDカメラの起用はホラーにうってつけで、恐怖に慌てふためくキャラクターたちの顔面を間近で観ることができ、「人が恐れる瞬間」がより生々しく表現、こちらにダイレクトに伝わってくるのが見所だ。
まるでバラエティ番組で心霊スポットに入ってギャーギャー騒ぐ芸能人を見ているかのような、つまる所まさにライブ配信動画を見ているかのような臨場感を味わうことができる。
臨場感で言えば、劇中で時折カメラの映像が不自然に途切れたりノイズが走って乱れたりするシーンも気持ちが悪い。
一瞬「DVDの不調か?レンタル屋に報告しないと・・・」というガッカリ感情が生まれたんだけど、音声は特に不調もなく聞き取れる。
要するにコンジアム内にいる得体のしれない存在が及ぼした怪奇現象演出なわけだが、生配信だからこそ起こり得る映像の乱れは、フィクション作品と分かっていてもどことない気味悪さが漂っていて嫌だ。
ドローンによる撮影が、単なる映像表現の拡張にとどまって恐怖演出を何一つ引き立てられていないのが残念なんだけどね。
この手の作品には、登場人物の中に1人くらいはチェックシャツを着たナード要員がいることが多いけど、本作に登場するホラータイムズの7人はいずれも比較的な美男美女。
この美形な人選にも、韓国のお国柄が出ているのかな?
特に女子3人組は本当に可愛い子たちばかりで、おっとりした看護学生アヨン役のオ・アヨン、天真爛漫な可愛さの弾けるジヒョン役のパク・ジヒョン、妙にやらしい服装で色気を魅せる帰国子女シャーロット役のムン・イェウォンと、可愛さはより取り見取り。
次々と襲い掛かる恐怖に美男美女たちが鼻の穴と口を恥ずかしげもなくおっぴろげ、汗と涙まみれになって化粧も流れていく無様な姿を存分に楽しもうではないか 笑
↑ふわふわしていて優しい印象のアヨン(オ・アヨン)
↑まるで綾瀬はるかのような天真爛漫さのジヒョン(パク・ジヒョン)
↑肝試しには不向きな服装のお色気担当シャーロット(ムン・イェオン)
揃いもそろって美人ばかり。
皆さんは誰が好みでしょうか。
あ、管理人はオ・アヨンのタイプが、好みです!
・脅かし方は可もなく不可もなく
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ホラー映画における主観視点の醍醐味は、突如として画面=目の前いっぱいに幽霊やモンスターが「グワーッ!!」と現れるシーンが普通のホラー映画よりも心底怖いことだ。
本作にも同様のシーンはもちろんあるが、正直な話、この手の怖がらせ方についてはあまりビビることはなかった。
幽霊、というか異形の存在は比較的少数に絞られていて、『グレイヴエンカウンターズ』のように精神病院の患者の幽霊と思われる奇怪な動きをする男、まるで宙から吊られているように足の浮いたまま移動してくる黒髪の女幽霊くらい。
彼らが「こちらに襲い掛かってくるという脅かし」の点でも、ポルターガイストの点でも、特に真新しい見せ方はなかったのかなと。
怖いと言えば怖いけど、安定した(既視感のある)怖さ、という感じ。
でもホラータイムズのメンバーが1人ずつ幽霊に体を乗っ取られ、顔面蒼白、白目がなくなって真っ黒になった目でぶつぶつと呟き始めるのは中々恐ろしかった。
なぜなら、全員が各々の顔を映しているCCDカメラを装備しているわけだから、不意にドアップの顔面を入れられると逃げ場がなく、嫌でも印象にも残りやすい。
この口から発している「ぶつぶつ」がなんとも形容しにくい音なんだけど、妙にスットンキョーな音に聞こえるのは管理人だけだろうか。
強いて分かりやすく言うと『ピクミン2』の冒頭で社長がゴールデンピクピクニンジンを食べる素振りを見せる時に発していた音。
もっと分かんないか。
自撮りCCDカメラは他の場面でも功を奏しており、終盤では暗闇の中でハジュンが自分のすぐ後ろに存在を感じ、震えながら背後を確認しようとする様子が鮮明に捉えられていて、前述したとおり彼の恐れと不安がダイレクトに伝わってきて良い。
あと、最後に登場した足の浮いた女の幽霊は一体何だったんだろう。
「コンジアムの女院長は実は、首を吊って死亡し、その時に首が伸びてしまったらしい」という話も出ていたし、足が浮いているのは首を吊っているからと重なるし、たぶん院長の幽霊なんだろうなー。
・何もない空間と時の怖さ
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幽霊らによる脅かし方がいまいちでも、コンジアム施設内の雰囲気で怖さを伝える演出はとても素晴らしかった。
『グレイブエンカウンターズ』を直接的な怖さ=「陽」とするならば、『コンジアム』は間接的な怖さ=「陰」と言ったところか。
本作は『グレイブエンカウンターズ』にはない「雰囲気」で魅せる恐怖に力が入っている。
コンジアムの施設内部は、『グレイヴエンカウンターズ』の舞台の精神病院よりももっと湿り気があり、より陰湿さの目立つ無機質な空間だ。
浴室やシャワールームなど、「水」と関連性のある部屋を用意したり、長い髪の毛や古風な人形をアイテムに使用したりと、その場に幽霊がいなくとも雰囲気だけで思わず身震いし、背中に冷たい何かが伝っていくかのような薄気味悪さが持続させることに成功している。
この「湿った恐怖」こそ、『グレイヴエンカウンターズ』には見受けられなかった、欧米文化や白人監督では絶対に撮ることができない、日本並びにアジア特有のホラー概念であり、管理人が最も忌み嫌うホラーの見せ方だ。
それに並び、何かが起こりそうで起こらない「無の時」も不穏さを掻き立てている。
タイルの壁に女性が立っているような不気味な染みが付いていて、前に立つ登場人物の背後に見え隠れを繰り返すシーンでは、「あー、これは彼がどいたら染みが消えてる、とかだろうな」と意外に長い尺の中で思わせておきながらも何も起きず、ただただもやもやした気持ち悪さだけが残る。
不本意ながらも、コンジアム内の恐怖の巣とも言える「402号室」に入り込んでしまったシャーロットが、数メートル先に立っている得体のしれない誰かを発見して対峙する場面では、シャーロットが出口に近寄りながらも、その場から微動だにせずに立ち尽くすそいつを恐れながらしきりに見直す。
何回も、そして静かにシャーロットがそいつに視線を送り返す時間が異様に長く、カメラワークもゆっくりなため焦らしもあり、結局は何も動きに変化のないそいつをひたすら見直す「無の時」に不安と緊張感を掻き立てられてしまう(その後の彼女の運命は予想通りだったけど)。
下手に驚かす演出がなくとも、その場に留まりたくないと思わせるような、雰囲気と時だけで観客を舐めまわすホラーも随分居心地が悪いもんだよ。
・ラストの「追悼」の意味は?
エンドロールの一番最後、「映画人チョン・ウシクに追悼の意を表して」のメッセージとともに、1人の男性の写真が表示される。この人は本作の監督であるチョン・ボムシクの実の弟、チョン・ウシクという人らしく、彼も『コンジアム』に製作として携わっていたんだとか。で、撮影中に敗血症で亡くなられているようで、これは兄である監督から弟への追悼メッセージみたいですね。
ご冥福をお祈りいたします。
■日本がらみ
劇中でハジュンがコンジアム精神病院の起源について語るシーンがある。
いろんな諸説がある中で、「日本軍が韓国の独立軍を虐殺して埋めて、その事実を隠すために建てられた建物」という説もあるらしい。
いわくつきの建物として戦争による死者が絡んでいるのは生々しいけど、日本軍て大陸で本当に酷いことをしてたんだなぁと、まさかこの映画を観ていて胸が痛むとは思ってなかった。
■鑑定結果
陽の怖さではなく陰の怖さで攻めた、POVホラーに新たな新鮮さを生み出した意欲作。
実際の場所をロケ地としているだけあって臨場感も高く、廃墟好きやサバイバルホラー好きには是非手に取ってほしい作品。
ああ、辛ラーメンが食べたい!
となります!!
それでは今回の鑑定はここまで。
またお会いしましょう!
よろしければシェアをしていただけると幸いです!↓↓
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