【ネタバレ/感想/考察】韓国映画『THE WITCH 魔女』の鑑定【ラストの意味とは】

サスペンス
(C)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

 

Jing-Fu
Jing-Fu

みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。

 

今回鑑定をするのは『THE WITCH 魔女』です。

SNSでの評判により、前々から気になっていた韓国映画ですが、この度ネットフリックスにて配信が開始されたので、やっと観ることができました!

それでは早速鑑定していきましょう。

■作品情報

・基本情報

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■原題:마녀/The Witch: Part 1 – The Subversion

■発掘国/制作年:韓国(2018)

■キャッチコピー

最強少女、覚醒
宿命を背負った少女が暴走する、バイオレンス・サイキック・アクション

・監督、キャスト

■監督:パク・フンジョン

 

■主要キャスト

ク・ジャユン:キム・ダミ

ドクター・ペク:チョ・ミンス

ミスター・チェ:パク・ヒスン

英語を話す男:チェ・ウシク

ミョンヒ:コ・ミンシ

ク:チェ・ジョンウ

ク婦人:オ・ミヒ

英語を話す女:チョン・ダウン

・あらすじ

ある日の朝方、酪農家のク(チェ・ジョンウ)は敷地内で血まみれで倒れていた少女(キム・ダミ)を発見する。

すぐに少女の介抱をしたクとク婦人(オ・ミヒ)は、自身らに子供がいないことから身寄りのない少女にジャユンと名付けて、娘として育てていくことを決めた。

10年後、19歳の高校3年生になったジャユンは学校に通いながら、ク夫妻の酪農を手伝う毎日をおくっていた。

しかし酪農業界は不景気が続き、そして母親のク婦人の認知症も進行しているため、少しでも家計の足しが必要な状況であった。

そんな時に、親友のミョンヒ(コ・ミンシ)からスター発掘オーディション番組に出演してみないかと勧められたジャユンは、優勝賞金5億ウォンで家族を助けられないかと思い、オーディション番組への参加を決める。

可愛らしい容姿と歌の上手さ、そしてカメラの前で見せた「ある特技」が話題となり、ジャユンは予選を通過してソウル大会に進むことが決まった。

ジャユンは長年続く謎の頭痛に苦しみ、医者からこのままでは余命2~3か月だと告げられながらも、オーディション番組への参加を続けるが、徐々に彼女の周りに怪しい人物たちが現れ始め・・・。

■ざくっと感想

Jing-Fu
Jing-Fu

本作の鑑定結果は、、、

ダイヤモンド映画(☆7)!!

酪農家の娘として過ごすごく普通の女子高生が、自身の秘められた過去の記憶を取り戻して覚醒していく復讐劇で、『メメント』とか『トータル・リコール』のように、記憶をテーマにしたよく聞くタイプの映画だろうな~・・・。

で、少女が主役ということは、『レオン』『ニキータ』のような愛と哀しみを漂わせるアクション作品で、一体韓国映画でどんなリュック・ベッソンをやってくれるんだろうな~・・・。

と力を抜いていた前半部分だったが、中盤から「んん?」と二度見をする出来事が発生し、後半では「そうきたか!!」と予想外の展開に驚愕した。

気を緩ませていた分、物語が進むにつれてどんどん目が釘付けになる始末。

前半と後半ではまるでコントラストの異なる作風、ありがちなストーリーへの予想を唐突に裏切る急展開、まさかまさかの○○バトル要素など、既存の同ジャンル作品の型を崩す斬新さが見事な作品でした。

伏線の張り方も上手いので、観終わった後に思わずもう一度観直したくもなるし、その中で実は本作は1話完結作品ではないので、ラストまで観ても多くの謎が残されたままなのも興味深い。

韓国映画特有のバイオレンス面が際立つアクションの濃さはもちろん、○○によるエクストリームバトルで他にはない新境地の迫力が生み出されていることにも目が惹かれる。

主役のジャユンを演じたキム・ダミはほとんどキャリアのない新人女優らしいが、本作で見せる前半と後半でのギャップがありすぎる表情がそれを全く感じさせないほどの演技力で、本ブログで紹介をするのであればまさに「輝く原石の発掘」と言うに相応しいデビューだろう。

 

以下、ネタバレありの感想と考察になります。

作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!


 

 

 

 

 

 

 

 

■感想と考察

・ジャンル破りの斬新な展開

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まず何より目を見張るのが、物語の前半と後半でクッキリと作品のトーンが変化する作品全体のコントラストだ。

前半は酪農家の娘としてごく普通の生活をおくるク・ジャユンの日常が中心に描かれています。

父母の仕事を手伝う健気さ、親友のミョンヒとの仲睦まじい女子高生の一面、認知症が進行する母を想う素直さなど、微笑ましくもどこか哀愁の漂う雰囲気はポスターのダークさとは程遠く、一見すると恩愛なドラマを観ているのではないかと錯覚するほど和んでいる。

でもその中に時折、ジャユンの隠された過去と記憶をチラつかせ、ジャユンを襲う謎の頭痛、彼女を取り巻く怪しい集団が次第に色を出し始め、徐々に不穏なサスペンス色を強めていくんですよね。

白が黒に侵食されるように、中盤で突如として一瞬のゴア・アクションがブレイクするんだけど、前半のゆったりしていた空気もあって、いつもの韓国映画を観ているよりも残酷度が際立っているような気がする。

そして謎の企業の女リーダー、ドクターペクによって明らかになるジャユンの過去。

実はジャユンは、脳を研究する謎の企業による遺伝子操作の末に生まれた人造人間で、超人的な身体能力を兼ね備えていることもさることながら、なんと超能力で物を浮かばせることもできるという、ジャンルの枠を超えすぎたトンデモSFがぶっこまれるのだ!!

堅実な韓国ノワールをイメージしてたから、なおさら開いた口が閉じないわけだが、これはこれでかなり斬新なアイデアではある。

幼いながらも能力があまりにも覚醒した彼女を恐れた企業の本社が、ジャユンの抹殺を目論み、それを察知したジャユンは多数の追っ手を殺傷してク夫妻のもとへ逃げていたという事実が次々と明らかになっていく。

ここでジャユンを映すカメラが、左右交互に半円を描くように動いているのが、せわしなく動く彼女の思考回路を表しているかのようで面白かったですね。

「頭痛、記憶、覚醒」と聞けば、最近で言うとイコ・ウワイス『ヘッド・ショット』と同じプロットだ。

Jing-Fu
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さて、ジャユンの過去も明らかになったことだし、ここから彼女の自由をかけた死闘が繰り広げられるんだろう(得意げ)。

ところが、直後の目を見開いてニンマリと得意げに微笑むジャユンの表情を見てから、物語はさらに急カーブを巻き起こしてしまう。

驚愕、ジャユンは最初から記憶など失っていなかったのだ。

ドクター・ペクが長年姿を晦ましていたジャユンをTV番組で発見したのではなく、脳の暴走による頭痛を治める方法を知っているはずのドクター・ペクに発見されるよう、ジャユンがあえてTV番組に出演していたという、まるで半沢直樹を観ているかのような裏の裏のかき具合だ。

なぜク夫妻を選んだのか、骨髄移植についてのリサーチ、TV番組への出演etc…。

ドクター・ペクの語りによって中盤までの何気ないシーンに伏線が張られていたことが判明し、それがここで回収されたと思いきや、さらにそれらの裏をかいていたジャユンの真実によって、伏線に二重の意味が隠されていたことに翻弄されるのが、ジャユンの筋書き通りというか、監督の手中で綺麗に弄ばれているかのようだ、やられたね。

本当に彼女が記憶を失っているのか否か、実は序盤の方からその疑問を観客に悩ませるような演出と展開はあったんだけど、こうも潔白にタネ明かしをさせられると細かいモヤモヤがどうでもよくなってくる。

でその後の終盤は、頭痛抑制の薬を手に入れたジャユンと、ドクター・ペクの手下であるアメリカ帰りの人造人間集団、人造人間第一世代のミスター・チェとその手下たちが入り乱れるカオスな殺し合いが繰り広げられるんだけど、もう完全にジャユンのワンサイドゲームなんですよね。

覚醒した超人能力とサイキックスキルを隠す必要のなくなったジャユンは突如ランボー化して、群がる敵を次々と血祭りに上げていく。

これがタイトルにもある、彼女が「魔女」と呼ばれるゆえんなのだ。

物語の前半が比較的落ち着いていただけに、後半の怒涛のダーク展開とバイオレンス・アクションの「過激さ」がもう1レベル上に際立つ運び方には感服した。

・ウザすぎるアメリカ帰りども

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ドクター・ペクの手先として暗躍し、ジャユンのもとに迫ってくる4人組の人造人間グループ。

アメリカ帰りという設定があり、会話の途中で得意げに英文を発する彼らの内の男女2人が中心となっているが、こいつらがとにかくウザい。

いちいち口調や仕草が人の神経を逆なでるというか、女の方は特に、両手をポケットインしながらガムを常にクチャクチャしてすました表情で歩いているのが最高に腹立たしい。

どうにも生理的にこういうタイプの人間は好きになれないので、観ていて何度画面をたたき割りたくなったことか。

まあ映画の場合で言えば、それくらい彼らの演技が優れているということなんだけどね。

男の方がチェ・ウシクだと気付いた時にはそれなりに驚きましたね。

『新感染 ファイナルエクスプレス』で顔をくしゃくしゃにしながらゾンビにバットを振るっていた彼が、ここまで大人びたオーラを出す演技ができる俳優だったとは恐れ入った。

『新感染 ファイナルエクスプレス』の鑑定結果はこちら☆

 

最近だと日本でも大ヒットした『パラサイト 半地下の家族』で、家庭教師として富裕層に寄生し、可憐な教え子までゲットしやがる主人公家族の長男役が記憶に新しいです。

『パラサイト 半地下の家族』の鑑定結果はこちら☆

 

大作でコンスタントにキャリアを築いており、韓国の柳楽優弥な印象で今後の活躍が楽しみな俳優ですね!

それはそうと、この男女の役名が「英語を話す男」と「英語を話す女」という、80年代の香港映画のようなテキトーさなのには失笑した。

逆に明確な名前がないことが、人造人間という無機質さを強調しているとプラスに考えるべきか。

・ハリウッドからの影響を感じる、まさかの超人アクション

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惨殺で血みどろなアクションを発展させてきた韓国映画らしく、本作のゴア描写も期待を裏切らない凄まじさだった。

銃撃による頭部破壊や掌底での顔面潰し、人命を軽視した殺人の連続で飛び散る鮮血に抜かりはないが、実はアクション演出の至る所に、ハリウッドのアクション映画からの影響が見え隠れしているのが興味深い。

ジャユンが銃と近接格闘を駆使して手際よく連続キルをしていく様子からは、少なからず『ジョン・ウィック』からの影響を感じるほどスタイリッシュにキマっていた。

それだけを書いていると他作品との明確な違いは感じられないが、本作には唯一無二のトッピングとして、アクションの中に超人スキルとサイキックパワーが組み込まれているのが他にはない味だ。

ジャユンをはじめ、遺伝子操作によって生み出された人造人間たちが超人的な身体能力を活かして跳躍し、飛び回り、スピーディに駆け抜ける様子はまるでマーベルヒーロー映画を彷彿とさせるし、サイキックパワーを使い、周りの物を動かして武器や盾に利用するのは完全に『スター・ウォーズ』のフォースバトルを観ているかのように興奮する。

身体が頑丈ということもあって、ジャユンと英語を話す男がコンクリート壁を砕きながら押し合いを続ける姿なんか、まさに『ターミネーター2』におけるシュワちゃんロバート・パトリック「困ったらドツキ合い!」の再来で、スタイリッシュでありながらも重量感さえも感じるという、矛盾した相乗効果による見応えはマシマシだ。

様々なハリウッドアクションの長所をふんだんに取り入れたエクストリームバトルによって、格闘アクションのダイナミックさとグロさもエクストリーム化しており、韓国アクションの見せ方に新たな可能性を生み出した意欲が伝わってくるのが素晴らしい。

何から何までがウザすぎるすぎる「英語を話す女」だが、ナイフの刃を壁に突き立てたままダッシュで前進し、そのまま相手をザシュっと高速一閃するところだけは素直に惚れた。

 

画面の中のキャラクターは縦横無尽に派手に動き回っているにも関わらず、実は彼らを映すカメラワーク自体は比較的落ち着いているため、カット割りが多いにも関わらずその場で起こっているアクションが見やすいというのも、地味に大きいポイントだったりもする。

これができずに画面酔いを起こす作品も山ほどあるから、ここは意外に重要なんだよね~。

・キム・ダミのモンスター級演技

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主人公のジャユンの表情と佇まいの色を、物語の前半と後半で360度塗り替えて描いている点も、前述した作品全体のトーンの変化と相まって身震いする要素の一つ。

前半ではごく普通のいたいけな女子高生として純真さを振りまいていたジャユンが、後半になって本性をさらけ出した後は薄気味悪い微笑みと手練れた殺人スキルを開花させるという、『レオン』のマチルダもおったまげの強烈さだね。

とにかくラストスパートにおけるジャユンの目を見開き、不敵に笑って歯を見せ、大量の返り血を浴びるダークさのギャップだけでその場を支配している存在感が恐ろしすぎる。

演じるキム・ダミには本作以前にほとんど役者経験がなかったというのが、個人的には物語の展開に負けず劣らずの最大のサプライズだった。

いきなり主演を任された本作で周囲に喰われることもなく、際立つ未知の新人像を画面に焼き付かせたあたり、まさに「魔女」というか、モンスター級の演技力と呼ぶにふさわしいでしょう。

彼女の今後への期待値も、いやがおうにも上がってしまいました。

・今後はどうなるのか?

物語の中盤から後半にかけての畳みかける急展開で、次々と回収された伏線。

しかしドクター・ペクたちが所属していた謎の企業の本社の真実や、幕引きで何の前触れもなく登場したジャユンの姉など、まだまだ解決のしていない謎がたくさん残されたまま作品は終了する。

「The WITCH 魔女」という邦題からは分からないのだが、実は本作は2部構成なのである。

まあ、冒頭のタイトルロールで「The Witch: Part 1 –  The Subversion」という原題がいきなり表示され、「パート1 !? マジか!」と話がこれだけで終わらないことはすぐに分かるんだけど、事前のネタバレ嫌いな管理人にとっては邦題しか頼る部分がなかったので、思いがけない驚きとなりました。

ちなみにThe Subversionは「破壊・転覆」という意味を持っていて、ジャユンの覚醒した破壊行為のことなのか、ジャユンによって潰されていく親元の企業のことを指しているのかが気になる。

とにもかくにもまだまだ進撃のとまらないジャユンの次の物語は、『The Witch: Part 2』(The Witch/魔女 −第2部 衝突−)として撮影が進められているようで、2021年に続編として公開予定らしい。

本社に乗り込んだジャユンがさらにヒートアップしたサイキックゴアアクションを披露するのか、ラストで登場した姉とともに、未だ不明となっている両親との悲しい家族劇が展開されるのか、考えるだけで楽しいです。

■日本がらみ

・今回、特に日本がらみの要素は見つかりませんでした。

 

■鑑定結果

Jing-Fu
Jing-Fu

軽い気持ちで観ると、前半と後半のあらゆるギャップに驚かされる逸品。

韓国アクションの新たな試みは、まだまだ広がっていく韓国映画の可能性を感じるほど刺激的でした。

 

鑑定結果:ダイヤモンド映画(☆7)!!

 

となります!!

 

 

 

それでは今回の鑑定はここまで。

またお会いしましょう!

 

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