
みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。
今回鑑定をするのは『男たちの挽歌』です。
この度、日本でも4Kリマスター版の劇場公開がスタートしたので、早速109シネマズにて楽しんできました!
それまでカンフーアクションが大多数を占めていた香港映画界に、新たにノワールアクションという新しい風潮を吹き込むきっかけとなった名作。
監督のジョン・ウー、主演のチョウ・ユンファがブレイクするきっかけとなった作品でもあり、ティ・ロンやレスリー・チャン、エミリー・チュウなど非常に豪華なキャストたちも魅力的です。
そんな『男たちの挽歌』のネタバレを明かしながら、感想と考察を鑑定していきますね。
ブレイク前のあの大スターも出演!?
■『男たちの挽歌』のあらすじと基本情報
まずは予告編をどうぞ☆
(C)2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.
■あらすじ
香港マフィアの幹部として偽札事業を担当するホー(ティ・ロン)と相棒のマーク(チョウ・ユンファ)。ホーの弟であるキット(レスリー・チャン)は兄がマフィアであることを知らずに警察官を目指しており、そんな弟の将来のためにも、ホーは足を洗うことを決意する。最後の仕事として後輩のシン(レイ・チーホン)と共に台湾での取引に赴いたホーだったが、相手組織の裏切りに合ってしまい・・・。
(C)2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.
■原題:英雄本色/ A Better Tomorrow
■発掘国/制作年:香港
■上映時間:96分
■監督:ジョン・ウー
■主要キャスト
マーク:チョウ・ユンファ
ホー:ティ・ロン
キット:レスリー・チャン
ジャッキー:エミリー・チュウ
シン:レイ・チーホン
キン:ケネス・ツァン
■『ダウンレンジ』のネタバレ感想と考察
それでは鑑定していきましょう!
ネタバレ①:ジョン・ウーのアクション美学!
香港映画の味を覚えてから、もう何度も繰り返し観ている作品ですが、初の4Kリマスターが劇場の大画面で観れるとなると、そりゃ足を運ばんわけがないですよね〜。そもそもの大前提として、フィルム傷を画面の隅々まで丁寧に取り除いた今回の4Kリマスターのクオリティは良好だったと思いますので、ファンの方ならすぐにGOです!
公開当時に「香港映画といえばカンフーアクションとコメディというそれまでの2大定説をぶっ壊した」と言われるのも納得のノワール・ガンアクション、アクションの頻度は決して多いというわけでもないですが、とにかく画の強さがハンパじゃないです。ロングコートをたなびかせながら二丁拳銃を炸裂させるマークことチョウ・ユンファ、ほとばしる鮮血と惜しみなく撒き散らす銃弾をスローモーションで映し出す過剰なカタルシス、4DX公開でもないのに画面越しにも激しい熱気が伝わる爆発と炎。まだ平和の象徴であるハトポッポはいないものの、後にジョン・ウー節と呼ばれて世界中から称えられる映像美学。35年前の映画にも関わらずブルース・リーのジークンドーアクションと同類の「先見の明」によって全く古臭さを感じさせませんよね〜。
多種多様なアクションに特化した映画の本場である香港が下地になっているからこそ、ガンアクションはただ単に激しいだけではなく、普通の撃ち合いにプラスαを加えた面白いアイデアや演出もちらほらあるんですよね。その中でも特に管理人が好きなのが、マークがホーの仇打ちをするために台湾マフィアを単身襲撃するシーン。多数の敵に対し、マークが懐に忍ばせる二丁拳銃とは別に、自分で後に通るであろう道にあらかじめ他の拳銃を複数隠しておくという下準備をこしらえるんですね(しかもホステスといちゃつきながら歩くフリをしてこそ〜っとね。この演出も素晴らしい)。ナンセンスだけど現実的に考えれば、弾が尽きたら新しい銃に持ち替えればリロードするよりも圧倒的に早いし、何より「発砲 → リロード」という従来の単調な流れを回避しているのがお見事の一言に尽きます。それに中盤、チョウ・ユンファが台車に乗って身を隠しながら発砲するシーンは、絶対に『ワイルド・スピード スカイミッション』のトニー・ジャーに対して発砲したポール・ウォーカーの見せ場に影響を与えていると思う。

ちなみに台湾マフィア襲撃シーンで、部屋に入って2番目にマークに撃たれる(入り口から見て左)敵のザコは、まだまだ下積み時代であった『少林サッカー』のチャウ・シンチーなのは有名な話ですね。
ガンアクションシーンではないけど、レスリー・チャン演じるキットが台湾マフィアの刺客と暗い部屋でガチンコファイトを繰り広げる場面。前述した過去の風潮を払拭させるためか、敢えて香港格闘アクションらしい華麗な蹴り技やアクロバットなどのエンタメ要素が払拭されており、香港映画としては中々地味な画ではある。とにかく無我夢中で殴り合う様子や、勇気を振り絞って加勢してナイフを刺客にブッ刺したジャッキーが我に返ってビビってしまったり、絶体絶命の状況で親父がアツアツに茹でたラーメンを投げつけて援護射撃したりと、ジャッキー・チェンなどの映画を見慣れていればいるほどこの泥臭い立ち回りが、香港映画の中では逆に新鮮に見えるんですよね〜。
ネタバレ②:明日を恥じて生きるなら、今日熱く死ね!
オットコくさ〜い熱いドラマも他の香港映画にはない魅力です。一応、キットの婚約者として、『ファースト・ミッション』でジャッキー・チェンといちゃついていた純白可憐なエミリー・チュウ演じるジャッキー(紛らわしいなあ)ヒロインと呼べるかもしれないけど、彼女も本作では所詮は副産物。物語のメインディッシュはマーク、ホー、キットの、極道と堅気の男たちが織りなす友情・亀裂・メンツの漢のドラマですね。
前半ではマークとホーの相棒同士、そしてホーとキット兄弟がひたすらイチャつくだけの漢のラブラブムービー(笑)なんですけど、中盤の台湾での事件をきっかけにキャラ相関図に360度の変化が生じ、物凄く複雑なドラマが展開する。その中でも何より兄のホーが極道であったことを初めて知った(ちょっと無理があるけど笑)刑事のキットが水と油の関係性になってしまい、おふざけでやっていた取り調べごっこがモノホンの取り調べになってしまう皮肉がなんとも居た堪れないですよね。兄のせいで全てを失い、悪を成敗する執念を燃やすキット、裏社会での経歴から足を洗おうとするも様々な壁が立ちはだかるホー、そしてどん底に陥いりながらメンツのために這い上がろうとするマーク。全員が命などとうに捨てている覚悟が伝わるキャラクターで、原題の「A Better Tomorrow」は(直訳すると「明日よりも良く」)「明日を恥じて生きるなら、今日に熱く死ね!」と言わんばかりの男たちのアツい生き様を表現してるんでしょうね。劇中の相棒と兄弟という関係性の中で見せる男同士の抱擁や涙がとにかく胸をジンジンさせまして・・・。この原題を『男たちの挽歌』という邦題に変えた日本の配給担当者も賞賛に値します。

極道と刑事という正反対の複雑なキャラ構成は、立ち位置と経緯は違えど、後の『インファナル・アフェア』に少なからず影響を与えているんじゃないでしょうか。
ショウブラザーズ時代からの大御所俳優であるティ・ロン、惜しまれつつも若くして亡くなってしまったレスリー・チャンなど、キャスティングもそうそうたるメンバーだけど、やっぱり一番目を惹くのは本作で一気にブレイクしたチョウ・ユンファなんですよね。彼が飾り付けをする明らかな準社会不適合者で、歯車的な組織や会社員には絶対なれそうにないながらも、人間味が一番滲み出ているマークのキャラクターが大好きなんです。180センチ超えの身長であるティ・ロンの相棒としてごく自然に釣り合う高身長ので、ロングコートもよく似合うインパクトを放つ佇まい。背が高く威圧感がありながらも、普段はおちゃらけてひょうきんなことばかりをしているギャップ。そしてヘラヘラしていながらも芯には常に野望が秘められていて、心を燃やしている様子を目つきと目の色だけで表現しているチョウ・ユンファの演技力、後にハリウッドにまで行き着くのも満場一致ですね。

ちなみに本作の監督であるジョン・ウーが台湾警察警部役として、製作総指揮のツイ・ハークが音楽学院の審査員の1人としてカメオ出演してます。
■鑑定結果

ラブロマンスなど不要! 全てが胸を焦がす漢のドラマチックアクション!
■最後に
それでは今回の鑑定はここまで。
またお会いしましょう!
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