みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。
今回鑑定をするのは『クロール 凶暴領域』です。
ワニ映画を代表するパニック作品といっても過言ではないほど、高クオリティのワニ・パニックホラー作品です。
それでは早速鑑定していきましょう!
■作品情報
・基本情報
(C)2019 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
■原題:Crawl
■発掘国/制作年:アメリカ(2019)
■キャッチコピー
・監督、キャスト
■監督:アレクサンドル・アジャ
■主要キャスト
ヘイリー:カヤ・スコデラリオ
デイヴ:バリー・ペッパー
ベス:モーフィッド・クラーク
ウェイン:ロス・アンダーソン
・あらすじ
幼いころから父親のデイヴ(バリー・ペッパー)による猛トレーニングのもと水泳に励んできたヘイリー(カヤ・スコデラリオ)は、フロリダ大学で開催された水泳大会に出場する。
しかし僅かなタイム差でベスト記録更新に失敗し、大学の奨学金によるサポート枠を逃してしまう。
気落ちするヘイリーが帰宅の準備をしていると、姉のベス(モーフィッド・クラーク)からフロリダ州にカテゴリー5の巨大な竜巻が迫っていることを聞く。
そしてフロリダに住む父親のデイヴとの連絡がつかないという知らせも耳にしたヘイリーは、同じくデイヴに連絡をするも応答がなく、心配になったヘイリー、竜巻の避難勧告を無視してデイヴの家へと向かう。
娘たちが家を出てから妻と離婚をし、一人で暮らしていたデイヴの家に彼の姿はなく、ヘイリーは彼が湖畔の旧宅に行ったのではないかと考える。
デイヴの家に残されていた犬のシュガーを連れ、大雨と強風の中ヘイリーは旧宅に到着する。
そして地下室で大怪我をして気絶したデイヴを発見したヘイリーは、彼を上階に上げようと試みるも・・・。
■ざくっと感想
本作の鑑定結果は、、、
モンスターパニックというジャンルにおいて、その人気における筆頭格は間違いなくサメ映画だが、実はワニ映画も結構量産されていたりもする。
でもワニ映画というワードが出て、ピンとくる作品がないんだよね。
サメ映画における王道作品の『ジョーズ』や『ディープ・ブルー』のような快作は見当たらないし、はたまた『シャークネード』といった多くの人の心を鷲掴みにしたバカ映画もありそうでない。
しいて言うなら『アリゲーター』か『UMAレイク・プラシッド』くらいかなあ、面白かった作品は。
それでも一連のサメ映画と比較すると認知度は低いように感じるし、ようするに中途半端な作品や低俗な作品がゴロゴロするワニ映画界は、いまいちパッとしない残念な界隅なのである。
アレクサンドル・アジャ監督は本作を撮影するにあたり「ワニ映画の『ジョーズ』を作ろう!」と、まるでサメ映画を牽制するかのような意気込みを見せていたらしい。
その情熱通り、本作ではワニの恐ろしさを着飾らない堅実なホラー演出で魅せていて、スリリングなパニック劇に仕上がっていました。
身近な「家」の中にワニが徘徊しているという設定も、今までに聞いたことのないシチュエーションで斬新だった。
ワニだけでなく、災害による浸水のリミット制限、不潔な床下空間などといった、異なる種類の恐怖が織り込まれていて、登場人物も極力少なく絞られており、綺麗にまとまっている感じも良いです。
近年の『メイズランナー』シリーズや『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』などといった話題作で頭角を現し始めた、若手女優のカヤ・スコデラリオが主演を務め、逆境に立ち向かう強い女性像を熱演しています。
以下、ネタバレありの感想と考察になります。
作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!
■感想
・シンプルにワニが怖い
(C)2019 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
本作に登場するワニは、家の近くのワニ園で飼育されていたごく普通のワニ。
太古の眠りより目覚めた絶滅したはずの古代種でもなければ、どこかの国の軍が遺伝子操作をして生み出した生物兵器でもない。
その他、ワニ映画をはじめとするモンスター映画のほとんどが「とりあえず、もっとデカく、デカく!」とモンスターの常識外れのデカさに頼る中、本作のワニはそれらと比べると随分小さく、実物大にとどまっている(いや、実物のワニは十分デカいサイズなんだけどね)。
無駄に現実離れした設定で動物を脚色するよりも、現実的な範囲で描かれるリアルさの方が恐怖を想像しやすいよね。
同じ家の中に、本能むき出しのワニがのっしのっしと歩いていたら・・・。
ふと振り向いて、そこに大口を開けたワニがスタンバイしていたら・・・。
まさに「そこをワニが徘徊する恐怖」、怖すぎだ。
家と言っても普通の状態の家じゃない。
薄暗く入り組んだ動きづらい床下、浸水して水と物が漂う荒れた部屋といった、動作的にも視覚的にも自由の効かない状況の中、いつどこからワニが飛び出してくるのか分からない駆け引きがとてもスリリングだった。
水陸両用のパワータイプ装甲車として、浸水した家の環境を完全に支配したワニが、一方的にお化け屋敷のように飛び出してくるのはずるい。
ワニを着飾らせることなく、あくまでも自然界の等身大殺人マシーンに徹底させ、シンプルな恐怖対象として描いていることでパニックホラーの基本を遵守していました。
メインのキャラ、というよりかは登場人物自体が非常にコンパクトに抑えられているので、ワニによる人喰いシーンはほとんど拝めないのかなと勝手に予想していたけど、そこはプロのワニくんたち、ちょっとしたモブキャラたちを容赦なくガブガブ好き放題にしてくれる。
血祭りにされる人間たちが叫ぶ様子が何とも痛々しいが、見た目にはグロテスクなシーンは言うほど重くはなかったので(腕がちぎれたりはするけれど 汗)、そういうのが苦手な人でもまあ問題はないでしょう。
『ピラニア3D』で阿鼻叫喚のグロ描写が強めだったアジャ監督にしては、本作における残虐さはそこそこマイルドに仕上がっていて意外だった。
ワニの牙が食い込んだ自身の脚をヘイリーが圧迫するシーンがあるんだけど、ここで演じるカヤは息を殺して一筋の涙をくっきりと流すんですよね。
傷口をまじまじと見せなくても、観ていて「痛そう」と分かる表現は見事でした。
・ワニ映画であることの意味
(C)2019 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
自慢の顎で獲物を捕らえたワニが、体を高速回転させて獲物の肉を引きちぎる「デスロール」が演出に取り込まれていたのには目を見張りました。
抜群の破壊力を持つ「デスロール」はワニの必殺技で、『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』でも谷底のワニたちが回転している様子を見ることができた。
ワニをテーマとするパニック作品として、これぞワニ!という技をしっかりと見せ場に用意し、他の動物のパニック作品とちゃんと差別化を図っているのが素晴らしい。
最後の最後に用意されたワニサービスに、ワニオタクなら歓喜することは間違いないでしょう!
ヘビなら長い胴体を、クモだったらネバネバの糸をアクションに活かさなくてはいけない。
ただガブガブ、バクバクやっているだけで満足をし、色が出ずに失敗している作品なんてごまんとあるもんだ。
他にも咥えた人間を弱らせるために振り回す素振りを見せたり、硬いウロコがパイプに当たって音を立てるちょっとしたサスペンス演出もあって、ワニにしか出せない魅力をフルで立たせていることが手堅い評価ポイントですね!
・3種類の恐怖
(C)2019 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
本作は単にワニが怖いだけではありません。
異なる3種類の恐怖アプローチが巧みに噛み合うことにより、パニックホラーの風格を引き立てています。
しかも、本作には『死霊のはらわた』シリーズなど数多くのホラー映画を監督・プロデュースしてきたサム・ライミが製作として参加していることもあり、ホラー作品としての怖さはお墨付きなのです。
■考察
・クロールで取り戻す家族関係と競技人生
(C)2019 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
本作のタイトルの「クロール=crawl」とは、「這う、腹ばいで進む」という意味を持つ英語ですが、ここでは水泳における泳ぎの一種の「クロール」との掛け詞になっていたりもします。
冒頭の水泳大会で、ヘイリーがクロールを得意としていることからもそれが分かる掴みの伏線の上手さ。
「這う」とは狭い床下でのヘイリーとデイヴの移動姿のことを指していて、当然ながら4足歩行の低姿勢が常となるワニの機動力と比べると圧倒的に不利な立場だ。
だから地の利を得ているワニに、2人とも序盤はなす術もなくやりたい放題にされている。
ここに台風による浸水が進めば、水陸両用のワニが完全に場を支配することになってしまうが、本作の場合は別の話だった。
浸水がもたらす影響は、前述した通り「焦燥的な恐怖」の助長であるが、同時にヘイリーが力を発揮することのできるグラウンドコンディションを整えることにも繋がっていて、単なるパニック演出に留まっていない対極性が他作品とは一線を下しているポイントだ。
また、この極限状態の中でヘイリーは家族の信頼性を取り戻すことにも大きな意味がある。
両親は離婚、姉も結婚して子供持ち、ヘイリー自身も実家から既に巣立っているため、一家は家族としての形を失っている状態。
疎遠になっていた父親のデイヴと久しぶりに再会し、互いに長年心に溜めていた本音を吐露した結果、それぞれの想いと真実を理解し合い、ヘイリーとデイヴは再び家族の絆を結ぶことになる。
冷たさの中に温もりを与えてくれる、そんな美しき家族愛を観ている背景で、冒頭でヘイリーが水泳選手としての限界を感じていた原因が「コーチであった父親の不在」だったことも判明する。
デイヴは「今日からお前は頂点捕食者だっ!!」と松岡修造ばりの叱咤激励を飛ばし、それによってヘイリーは「私は頂点捕食者よ!」と自己暗示をかけ、水泳能力と強靭な精神力を成長させてきた。
つまりヘイリーは父親との家族関係だけでなく、自身の競技人生には必要不可欠であったコーチをも取り戻したことになる。
自身の能力を発揮できる環境も、心と体のコンディションも、ワニと互角に戦うための全てが揃った!
「お前ならワニよりも早く泳げる!」とデイヴの熱血スパルタ指導に火をつけられたヘイリーは、冒頭の伏線通り、「クロール」でワニに水泳勝負を挑むことになる。
通常なら恐怖一辺倒であるモンスターを相手に、頂点捕食者として自ら自然界の捕食者に勝負を仕掛けていく水中バトルは、今までに観たことがない展開でちょっと燃える。
ビビっていたワニに対し、罵声も浴びせられるほど身も心も逞しくなったヘイリーの勇姿は、その後の彼女の「水泳選手」としての活躍を暗示しているかのようですね。
本作は堅実なホラーパニック作品であるが、実は上記のヘイリーのタフさが唯一のツッコミどころとなっている。
だって彼女、あまりにも強すぎるんですよ。
ワニに拳銃を握った腕ごとバクっと喰われても、そのまま引き金を引き続けてワニの脳天を破壊するわ、しまいにはワニの痛恨の一撃である「デスロール」をくらいながらも、ほとんど致命傷さえ受けずに耐えきるわ。
どこのターミネーターだよ! 笑
そしてワニとの水泳勝負でヘイリーが勝ってしまうシーンも少々非現実的だ。
確かにクロールは個人の技量を除けば最速の泳ぎ方ではあるものの、人類がワニを凌ぐ速さで泳ぐことなんてできるんだろうか。
気になって調べてみたけど、ワニは時速30kmの速さで泳ぐことができるらしい。
池江璃花子 選手は自由形で50メートルを24秒で泳いでいたので、時速に変換すると約7.5kmの速さになる。
・・・ワニよりも早く泳げるヘイリー。
短距離と長距離ではコンディションが違ってくるのかもしれないが、劇中に水泳競技でタイムについて悩む必要などなかったのでは??
まあここらへん突っ込むのは野暮ですかね。
あと実はワニって、本気を出せば陸上を時速50kmで走ることもできる怪物らしいです。
水中よりも陸上の方がスピードが速いのか!
つまり時速44.6kmの記録を持つ人類最速の男であるウサイン・ボルトよりも速いことになる。
怖え~、日本に野性のワニがいなくてほっとしたよ。
■日本がらみ
■鑑定結果
おすすめのワニ映画は?と聞かれて、自信を持って紹介することのできるワニ映画になっていました。
エンタメ性もドラマも秀逸な業界最高峰のワニホラーを、とくと噛みしめてください(ワニだけにね)。
となります!!
それでは今回の鑑定はここまで。
またお会いしましょう!
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