ネタバレ/感想/考察『ジャイアントピーチ』の鑑定結果【お化け桃が空を行く、ティム・バートン印のファンタジーアドベンチャー】

ファンタジー
JAMES AND THE GIANT PEACH, 1996. (c) Walt Disney.

 

Jing-Fu
Jing-Fu

みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。

 

今回鑑定をするのは『ジャイアントピーチ』です。

みんな大好きティム・バートンの隠れた名作ファンタジーです。

それでは早速鑑定していきましょう!

■作品情報

・基本情報

JAMES AND THE GIANT PEACH, 1996. (c) Walt Disney.

■原題:James and The Giant Peach

■発掘国/制作年:アメリカ(1996)

■キャッチコピー

ティム・バートンとディズニーがかける”魔法“には、
どんな魔法もかなわない!!

・監督、キャスト

■監督:ヘンリー・セレック

■製作:ティム・バートン

 

■主要キャスト

ジェームス:ポール・テリー

スパイカーおばさん:ジョアンナ・ラムリー

スポンジおばさん:ミリアム・マーゴリーズ

ムカデ(声):リチャード・ドレイファス

キリギリス(声):サイモン・カーロウ

クモ(声):スーザン・サランドン

テントウムシ(声):ジェーン・リーヴス

ミミズ(声):デビッド・シューリス

土ボタル(声):ジョアンナ・ラムリー

老人/ナレーター:ピート・ポスルスウェイト

・あらすじ

9歳の心優しい少年ジェームス(ポール・テリー)は、幼いころに両親をサイに食べられてしまい、その後は叔母であるスパイカーおばさん(ジョアンナ・ラムリー)とスポンジおばさん(ミリアム・マーゴリーズ)に引き取られて暮らしていた。意地悪な叔母2人にこき使われていじめられ続けるジェームスは、何一つ楽しいことを与えられずに暗い毎日を過ごしていた。ある日ジェームスは庭で謎の老人(ピーター・ポスルスウェイト)に出会い、この生活から逃げ出すきっかけを与えられる。両親と共に夢見ていた、アメリカのニューヨークにあるエンパイアステートビルへ向かうことを思い起こしたジェームスは、老人から不思議な緑色の物体を貰うもそれをこぼしてしまう。しかし緑色の物体が当たった庭の枯れ木に突如として1個の桃がつき、あっという間に人間の倍以上の大きさに育った。おばさん2人の目を盗みながら、空腹だったジェームスは桃を一口食べるのだが、、、。

■ざくっと感想

Jing-Fu
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本作の鑑定結果は、、、

鑑定結果ダイヤモンド映画(☆7)!!

『チャーリーとチョコレート工場』や、12/4に日本公開を控えているアン・ハサウェイ主演の『魔女がいっぱい』などの原作小説を生み出した、イギリスの小説家ロアルド・ダールの『おばけ桃の冒険』の映画化作品。管理人が幼少期の頃に飽きるほど繰り返し観ていた映画の1つで、個人的にはそれなりに思い入れが深かったりもする本作は、心優しい少年が巨大化した虫たちと大きな桃に乗って、海の向こうのニューヨークを目指すディズニーのファンタジーアドベンチャーだ。

『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の監督であるヘンリー・セレックと製作のティム・バートンが再タッグを組んだ本作は、同作の流れをくんだクレイアニメが売りとなり、巨大化した虫たちはティム・バートンらしいキモかわいい魅力を振りまいていて、好きな人にはたまらない世界観となっている。しかし全編がクレイアニメという訳ではなく、物語の前半は実写、中盤はクレイアニメ、終盤はそれら2つの融合という創意工夫に富んだ映像で構成されていて、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の二番煎じを回避しているのが実に見事。

楽しいミュージカル調で進むストーリーラインはディズニー作品のお約束。主要キャラである6匹の虫たちだけに留まらず、ヴィランとなるおばさん2人も含めて全員のキャラが濃いのも、作品全体に華を出す良いエフェクトになっていた。

 

以下、ネタバレありの感想と考察になります。

作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!


 

 

 

 

 

 

 

 

■感想

・実写とクレイアニメのトリッキーな組み合わせ

ディズニーらしい、ミュージカルシーンの華やかさ。

JAMES AND THE GIANT PEACH, 1996. (c) Walt Disney.

1人の少年と6匹の虫が巨大な桃に乗り、空を飛びながら海を渡ってニューヨークを目指すという、非常にシンプルだが奇想天外なストーリーは全編観ていて飽きない。中盤から本格始動するクレイアニメシーンでは、ジェームス自身もクレイアニメキャラに変化をするので前半の実写シーンと比べるとガラリと雰囲気が変わる。昼、夜、夕焼け、海、北極、海底、摩天楼など目まぐるしく周囲の環境が変化していくのが、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』よりも種類豊富な色が出てて楽しいね。そしてやはり目を見張るのが、主要キャラとなる6匹の虫たちの動きだ。手足が多くてそれぞれが異なる持ち味を持つ虫たちをきめ細かくエネルギッシュに動かし、テントウムシの羽ばたきやしなやかに身をよじるムカデなど、空想的ながらも本物らしい特徴を押さえて思わず生命を感じさせるのも、流石はティム・バートンの手腕だと拍手を贈りたくなる。

現実世界が舞台ながらも、無数のカモメにクモの糸で桃を引かせて空を飛んだり、機械仕掛けのお化けサメが登場したり、ポンコツ車でずっと海底を進んできたりと、実写場面クレイアニメ場面問わずケレン味の効いたファンタジー要素がてんこ盛りで、好きな人にはたまらんティム・バートン節が全開。終盤ではクレイアニメの虫たちと実写の人間が横に並ぶという、実写とアニメーションの融合で生まれたトリッキーな映像効果が見ものとなっており、そのなんとも言えない質感と味わい深さがGOOD。

全体的に話のテンポも良いし、時折挿入されるディズニー印のミュージカルシーンはなんとも華やか。皆の夢や家族愛を発信する歌の数々は、同じ曲でも順に歌を披露する虫のパートごとに曲調が変化していて面白く、数多くの映画音楽を務めてきたランディ・ニューマンのセンスが光っているのが分かる。映画音楽が好きな人なら絶対楽しめます。

・個性豊かな虫さんたち

ジェームスと共に巨大な桃に乗り込むことになる、通称桃組の6匹の虫たち。ここで登場する巨大虫(大人の背丈)たちは、ジェームスが謎の老人からもらったマカロニのような「不思議な緑色の物体」が当たって変身したらしいが、単に虫を巨大化させたグロテスクな容姿ではなく、アニメーションらしいデフォルメになってるのはお約束。いや、と言ってもティム・バートン プレゼンツなので「キモい」ことに変わりはないかな 笑 だけど各々が異なるファッションで着飾っていたり、性格も考え方も十人十色ということもあり、これまたティム・バートンらしい「キモかわいい」個性的なキャラクターたちに仕上がっている。

 

■ムカデ

JAMES AND THE GIANT PEACH, 1996. (c) Walt Disney.

桃組のムードメーカー的存在。

ジャイアンのように身勝手でガサツだが、いざという時には男を見せる。

 

■キリギリス

JAMES AND THE GIANT PEACH, 1996. (c) Walt Disney.

知的で紳士的な佇まいの音楽家。

頭の引き出しも多く頼りになりそうだが、人が食べようとしていたものを奪って平気で口に運ぶ無礼千万な一面も見せる。

フロントキックの威力がブルース・リー並み。

 

■テントウムシ

JAMES AND THE GIANT PEACH, 1996. (c) Walt Disney.

どことなく泉ピン子に似ている、面倒見の良い母親キャラ。

一旦熱が入るととことん熱く、常に持っているハンドバックで鋼鉄小サメを返り討ちにするほど強い。やっぱりピン子姉さんだわ。

 

■クモ

JAMES AND THE GIANT PEACH, 1996. (c) Walt Disney.

姉御肌かつ強気で、持ち前のクモの糸が何度も活躍する。

人外でミステリアスな妖艶さが、屈折した性癖の人間を刺激しそう。

 

 

■ミミズ

JAMES AND THE GIANT PEACH, 1996. (c) Walt Disney.

小心者で臆病な、THE☆マサオ君。

兄はシャベルで真っ二つにされ、母親はカモに喰われたという気の毒すぎる境遇の虫。

 

■土ホタル

JAMES AND THE GIANT PEACH, 1996. (c) Walt Disney.

耳が遠くてちょっぴりおとぼけのおばあちゃん。

お尻の灯りが明るいのとは裏腹に、自身の影は薄い。

 

劇中ではジェームスとこの虫たちが桃の旅を通して、笑ったり泣いたり喧嘩したり、家族として絆を深めていく様子が微笑ましく映る。ジェームスが忘れかけていた楽しさと温もりを存分に堪能するドラマとアドベンチャーが、二重の意味でファミリームービーとしては上出来のクオリティだ。

・酷すぎヴィランのおばさんたち

タツノコ感溢れる、ヴィランの基本を押さえた鑑。子供をいじめる最低な大人だが、

右は後に『ハリー・ポッター』で子供相手にマンドレイク薬学を教えることになる。

JAMES AND THE GIANT PEACH, 1996. (c) Walt Disney.

虫たちに並び、本作のディズニーヴィランとして君臨するスポンジおばさんとスパイカーおばさんも、悪役として最高にキャラが立っていた。太っちょでちょっと抜けてるスポンジおばさんと、『101匹わんちゃん』のクルエラが完璧にハマりそうなキツい顔のスパイカーおばさん。『ホーム・アローン』のハリーとマーヴを彷彿とさせるというか、デコボコ悪役コンビのテンプレを見事に抑えたこの2人は、弁護できる点が何一つないくらい憎らしい奴らだ。

朝早くから夜遅くまで、休憩をさせることもなく家の雑用をジェームスに強いるわ、まともなメシは与えないわ、外部との接触を許さないわ。現代なら1000%虐待として確実にPTAから苦情が出るほど酷い仕打ちを続けており、ごみ箱に入っていた袋のポテチのカスを食べるジェームスの不憫な姿は涙無くしては観ることはできない。優しいファンタジー映画ながらも、映画史上指折りのクソ野郎っぷりをみせるおばさんを演じた2人は、悪役としては申し分ないナイスキャスティングで良い仕事をしていやがる。男のデコボコ悪役コンビはよく見かけるが、その女バージョンはあまり見かけたことがないのである意味貴重かも。

実写の人物について取り上げたのでついでに触れると、ジェームスの導き役になる謎の老人を演じているのは、ピート・ポスルスウェイト『ロストワールド ジュラシックパーク』『エイリアン3』など、90年代の名作でよく見かける名脇役だ。いつもツルッパゲでスクリーンに登場しているのでよく憶えていたけど、本作の老人は髪があるので最初気づかなかったよ 笑

・サメ映画のはしりとカメオ出演!?

 

手に汗握る、お化けザメとの攻防戦!

JAMES AND THE GIANT PEACH, 1996. (c) Walt Disney.

桃に乗って海を渡る中盤には、2回に渡って派手なアクションシーンが用意されている。

まず1つ目が、突如として海の中から姿を現す、機械仕掛けの巨大な「お化けザメ」の襲撃シーンだ。『メガシャークVSメカシャーク』の先駆けとも言うべきお化けザメは、マシーンギミックと硬質な見た目に細部に渡るこだわりが感じられ、近年流行っているサメ映画ジャンル好きなら間違いなく心に刺さるゲテモノザメだ。さらにはサメフックショットやミニザメミサイルといったロマンを感じる武器も兼ね備えていて、桃組との攻防にをスリル満点に彩っているのがニクい。

それにしても『ジョーズ』でホオジロザメと一戦交えたリチャード・ドレイファスが声を務めるムカデに、お化けザメと対峙させるシーンを用意しているとは、監督さん、確信犯だなコリャ 笑

 

ジャック・スパロウ、、、じゃなかったジャック・スケリントン船長。

JAMES AND THE GIANT PEACH, 1996. (c) Walt Disney.

そして2つ目が、北極(または南極?)の海底で繰り広げられる、幽霊船での争奪戦だ。航路を示す羅針盤を求めてジェームスたちは深海の沈没船に潜るのだが、特に意味もなくここにはガイコツになった乗組員がわんさかいて、桃組に襲い掛かってくるというスリリングなシーン。驚いたことに、この幽霊船の船長はなんとジャック・スケリントンだった!この名前を聞いてピンとくる人は通。そう、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の主人公と同名で見た目も一緒のキャラなのだ。ティム・バートン繋がりで実現したと思われる、遊び心の効いたカメオ出演がちょっぴり嬉しい。さらに乗組員の一人には、あのドナルドダックのガイコツもいたりする。こちらはディズニー繋がりのカメオ出演と言ったところか。ジャック・スケリントンの一撃を、自身のツノ(キバ)で真剣白刃取りして仲間を守る奮闘を見せるムカデの勇姿には思わず気絶しそうになるね。

■考察

・なぜサイなのか

「恐ろしいサイが現れ、ジェームスのお父さんとお母さんを食べてしまったのです」

映画の開始1分ほどで唐突にこのナレーションが入り、ジェームスの両親は呆気なくフェードアウトしてしまう。このことはジェームスの中で相当のトラウマになっているようで、おばさん2人からはしょっちゅうサイのことを脅されたり、冒険の途中でも「サイ」というワードが度々登場する。

そもそもなぜサイなのか?映画を観た誰もが真っ先に疑問に思うことだろう。サイは確かに怒らせると手に付けられない厄介さらしいが、草食動物であるため人を喰うと言われても現実味がない。普通ならライオンとか、クマとかを選ぶところを、何故人喰いジャンルでも見かけたことのないサイに設定したんだろうか。

サイと言っても、劇中で登場するのはサイそのものではなく、空に広がる雷雲の中にサイのシルエットがあるだけ。いくら不思議な世界観の本作だとしても、雲の中に本物の動物がいるとは思えん。ここから考えたのは、ジェームスの両親は実は嵐に巻き込まれて死亡しており、その光景が幼いジェームスには黒いサイが両親を襲っているように見えていたのではないかという仮説。だからラストに登場する雷雲のサイはまさにジェームスのトラウマの化身で、ジェームスの目にしか見えてないんじゃないか。しかし桃組の虫たちにもサイが見えているような言動があるため、やはりこの雷雲サイは現実に存在しているらしい。

劇中ではこれといった説明がされないため、考えていても明確な答えは出せませんでした。まあ、なんでサイなのか、なんで雷雲サイがいるのかを気にしない荒唐無稽さが、ティム・バートン作品らしさの味の一部になっているんでいいんじゃないかな~(適当)。

いずれにしても、ここでジェームスが伏線通り、母親の「困ったら見方を変える」という行動を起こしたことが、ラストでおばさん2人の呪縛から解放される勇気を出すきっかけの1つになったことは間違いない。

■日本がらみ

・今回、特に日本がらみの要素は見つかりませんでした。

 

■鑑定結果

Jing-Fu
Jing-Fu

日本国内では未だに4KやHDリマスターされたブルーレイが発売されておらず(DVD画質をそのままアプコンしたブルーレイのみ)、何かと『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の影に隠れがちな本作ではあるが、ティム・バートンの世界観に浸かりたい人には是非手に取ってほしい名作だ。

 

鑑定結果:ダイヤモンド映画(☆7)

 

となります!!

 

 

 

それでは今回の鑑定はここまで。

またお会いしましょう!

 

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