ネタバレ/感想/考察『ライフ』の鑑定結果【豪華スターが火星で発見した宇宙生物に喰われる現実派スリラー】

スリラー
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Jing-Fu
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みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。

 

今回鑑定をするのは『ライフ』です。

先日、NASAの火星探査車が無事に火星に着陸したとの記念すべきニュースが報道されていましたね。これから火星の生命の痕跡を探るために土壌を調査するらしいですが、それを聞いた瞬間、同じく火星から採取した土が発端となる本作が真っ先に浮かび、改めて鑑賞してみました。

それでは早速鑑定していきましょう!

■作品情報

・基本情報

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■原題:Life

■発掘国/制作年:アメリカ(2017)

■キャッチコピー

人類の夢も未来も砕かれる

・監督、キャスト

■監督:ダニエル・エスピノーサ

 

■主要キャスト

デビッド・ジョーダン:ジェイク・ギレンボール

ミランダ・ノース:レベッカ・ファーガソン

ローリー:ライアン・レイノルズ

ショウ・ムラカミ:真田広之

ヒュー:アリヨン・バカレ

エカテリーナ・“キャット”・ゴロフキナ :オルガ・ディホビチナヤ

・あらすじ

エカテリーナ・“キャット”・ゴロフキナ (オルガ・ディホビチナヤ)が司令官を務める国際宇宙ステーション(ISS)のメンバー6名は、医者のジョーダン(ジェイク・ギレンボール)や検疫官のミランダ(レベッカ・ファーガソン)など、世界各国から集められたベテランの宇宙飛行士たちで構成されていた。彼らの任務は火星の地球外生命体の調査であり、火星から帰ってきた無人火星探査機のピルグリムを回収することに成功した。ピルグリムが採取した土を解析した結果、その中に微生物が含まれていることが分かり、クルーたちは初の地球外生命体発見に湧き立つ。そのニュースはすぐに地球でも公表され、発見された地球外生命体は「カルビン」と名付けられた。しかしカルビンの生態調査を進めていく過程でカルビンが急速に成長と進化をし始め・・・。

■ざくっと感想

Jing-Fu
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本作の鑑定結果は、、、

鑑定結果ダイヤモンド映画(☆7)!!

現実世界の宇宙を舞台に、人類が初めて遭遇した地球外生命体の微生物「カルビン」によってISSの宇宙飛行士たちが血祭りに上げられていく惨劇を描いたSFスリラーです。ISSという閉鎖空間の中で地球外生命体に襲われるというプロットは、元祖『エイリアン』を思い起こさせますが、本作はコテコテのSFストーリーではないし、物語の舞台も未知の火星と地球の間の宇宙空間であり、現代人からすれば比較的想像の行き届く範囲内。所詮は『エイリアン』の二番煎じに過ぎないけど、明日にでも起こっていてもおかしくはない現実味を帯びた設定の分、エイリアン』よりもリアルな恐怖感が強め。常に進化を続けるカルビンのデザインと攻撃方法も、じわじわと鳥肌が立つような不気味さで染められている。

登場人物はほぼISSのメンバー6人のみとなっており、『エイリアン』プロットのストーリーも含めて非常にコンパクトな印象。しかも『エンド・オブ・ウォッチ』ジェイク・ギレンホール『ミッション・イン・ポッシブル』シリーズのレベッカ・ファーガソン、我らが日本を代表するアクションスターの真田広之、そして『デッドプール』ライアン・レイノルズらと豪華なキャストが集められており、豪華な分、誰が死ぬかが分からないサスペンス調が緊張感を誘う!

 

以下、ネタバレありの感想と考察になります。

作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!


 

 

 

 

 

 

 

 

■感想

・現実味を帯びた恐怖

もしかしたら今まさに遥か頭上で起こっていてもおかしくない身近な恐怖。

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人類史上初の地球外生命体であるカルビンの発見は、ミクロレベルの微生物でありながらも壮大で感動的に描かれているが、反面、いざカルビンが人類の敵として転じた後に画面を支配する焦燥感。すなわち希望と絶望の落差が恐ろしく深い。記事の冒頭にも書いたけど、もう人類は既に火星まで手を伸ばす術を持っているわけ。だからこそ本作の出来事はいつ何時にでも起こっていてもおかしくはない。そう考えると急に背筋が凍り付かないだろうか。ストーリー自体は今までに散々聞き慣れた内容であり、人類が地球外生命体に襲われるという質素な構成でありながらも、それを敢えて現実寄りのストーリーで描いているからこそ本作は恐ろしいのだ。

・最恐の生命体、カルビン

始めは顕微鏡でしか見ることのできないミジンコのようなサイズだったカルビンが、突如として人類の脅威に変貌する突拍子のなさが衝撃的。人の血肉の味を覚えたカルビンが、イカの切り身みたいに頼りなさそうな触手を伸ばして手の指を粉砕し、体に巻き付き、そして体内に入り込む。一連の描写は目を背けたくなるようなグロさはないものの、静と動の破壊描写と体が触手に侵食されていく気持ち悪さは何とも惨たらしい。

そんな感じでISSのクルーたちをパクパクしていくカルビンの体は、取り込んだ栄養を糧にどんどん成長していく。微生物だった外見の面影を残しつつも甲殻生物を思わせる姿に変貌していくカルビンのフォルムは、これまたリアリティを感じさせる秀逸なワイルドさ。遂には人間を超えるデカさになってしまい、おまけに顔まで形成されて文字通りこちらを睨みつけてこんにちはをしてくる表情が怖え。そしてカルビンのハングリー精神は食欲だけではない。彼は微生物のくせに常に学習を続ける知的生命体であったことも判明する。そう、カルビンは非常に勤勉であり、インテリだったのだ。人間を欺く知能を培って「進化」もしていくため、人間とカルビンの知恵比べドラマが生まれ、物語全体が単なるドンパチパニックに留まることなくサスペンスを生み出すことに成功している。さらにカルビンは何をしても殺すことができず、どんな環境でも決して死ぬことはない、まるでクマムシのような完全生命体。ウェイランド・ユタニ社が発見したら喉から手が出るほど欲しそうなしぶとい生態のおかげで、劇中で緊張の糸が緩むことがないのだ。

『エイリアン』よろしく、いち生物の成長と進化、そして本能を描いたとして、まさに「ライフ」=「生命」というタイトルワードは素朴ながらも的を得た単語と言える。あと、今回の記事では上記も含めて『エイリアン』との比較を何回かしているけど、地球外生命体に対して人間の汚い側面が絡むのが常であった『エイリアン』シリーズに対し、本作のカルビンは純粋に恐怖・排除対象として描かれているのが最大の違い。劇中では調査対象が敵意を持っている場合は地球に入れてはいけないというルールが徹底されているようだし、カルビンの存在意義を巡ってクルー同士が衝突することもない(ヒューはカルビンへの慈悲としてアホな行動に出ていたけど)。逃げ惑う人間に終始させ、シンプルなホラーとして楽しむことができるのだ。

ネタバレ欄だから書くけど、まさかデップーことライアン・レイノルズが初っ端でカルビンに殺されるとは思ってなかったなぁ。主役の器を持つ俳優を死なせるという裏切り方がニクい。ライアンは僅かな出番ながらも、体内にCGのカルビンが入り込み、じわじわと無重力空間に血をまき散らして苦しみながら死んでいく様子を熱演しています。

・錯覚を引き起こす無重力映像

本当に宇宙で撮影しているかのような、無重力の臨場感。

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重力のある地球のスタジオで撮影をしながら、画面の中に無重力空間を生み出してしまった映像技術には感服してしまった。それも宇宙空間だけでなく、ISSの内部においても常に俳優たちが空中遊泳をしている。どうやって撮影をしたかと言うと、俳優たちを常時ワイヤーで固定して浮かばせながら演技をさせているのだ。言うのは簡単だけど、1回ワイヤーに固定されるとしばらくは下に降りられないし、ワイヤーを操る裏方スタッフも含めて相当しんどい撮影だったはず。特に冒頭、物語がスタートしてISSのクルーたちが無人火星探査機ピルグリムを回収するまで5分くらいの時間があるんだけど、その間はカメラが一切途切れることもなく、ISS内で各自仕事に励むクルーたちをワンカットで映している幕開けにはビビるよ。もちろん疑似ワンカットなんだろうけど、どこで切っているかも分からないし、ISS内をカメラがクルーと共にスルスルと進んでいき、また上下左右の概念を無視して映り込むクルーたちを観ていると、本当に宇宙空間で撮影をしているとしか思えない没入感に溺れそうになる。『セロ・グラビティ』のようにもっと評価されるべき映像マジックなのにな。

・真田広之の貢献

歴戦のアクションスターも地球外生命体には勝てない?

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その冒頭の長回しで、最初に画面に顔出しをするのが真田広之。これは完全に裏エピソードなんだけど、真田広之は出演陣の中で年長であり一番のキャリアを持っているので、撮影中は周囲からは演技面でもアクション面でもかなりの尊敬の念を集めていたらしい。というのも、彼は本作で宇宙映画への出演が4回目、そしてJACのアクションスターとしてのキャリアの中でワイヤーアクションに何度も携わっており、既に過酷な撮影の下地ができていた(本人曰く、本作では最長で4時間も吊るされてしんどかったんだとか)。そのため、監督は他のキャストに「彼の動きを参考にしなさい」と指示をしていたらしいのだ。ミランダ役のレベッカ・ファーガソンは、現場で真田広之の演技と動きから学びを得たと語っているくらいだ。多分、そういう真田広之のキャリアをちゃんと理解してのキャスティングだったんだろうな、監督。分析力があってエラい。

真田広之は演技面でも、ショウ・ムラカミを年長のベテラン飛行士というバックを感じさせる、流石の風格で落ち着いた演技をしている。地球では念願の我が子が生まれたばかりで、自分にとって大切な生命の誕生が何としてでも生き延びなければならないという強い信念と、「死ねない、死にたくない」という焦りの2面性も見事に体現していた。『サンシャイン2057』の時の噛ませ犬役とは違い、一番最後の犠牲者になるので見せ場も多くて個人的には嬉しい限りでした。

■考察

・何故脱出ポッドが入れ違いになったのか

脱力必至の後味の悪さ。

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本作は『ミスト』などの数々の「胸糞映画」にカウントされるくらい、後味の悪い作品です。

ラスト、他のクルーを失い、カルビンへの反撃も万策尽き果てたジョーダンとミランダ。カルビンを地球に行かせない最終手段として、ジョーダンが2機ある脱出ポッドの内の1つにカルビンを誘い込んで宇宙の果てに消え、もう1機にミランダが乗り込んで地球に帰還するという行動に出る。ジョーダンは宇宙で400日以上を過ごしながら「80億人のバカがいる地球に戻りたくない」と語っており、ミランダは生きて父親に会いたいと語っていたので、一応この利害の一致した決断には納得がいく。2機のポッドは無事に発射され、1機は地球に向かい、もう1機はそのまま宇宙へと足を進めます。しかし、なんとアジアのどこかの海に落ちたのはジョーダンとカルビンの乗ったポッドであり、宇宙を進んでいたのはミランダの乗ったポッドだったのだ。二手に進むポッドにはそれぞれどちらが乗っているかが分からないように演出がされていた。それを踏まえればなんとなく怪しさを感じるし、地球に帰りたくないというジョーダンのセリフがそもそも伏線になっていたのだが、それでもこの展開には驚愕。「開けちゃだめだ!!」とジョーダンが必死に叫ぶもむなしく、助けに来た漁師によってポッドの扉は開かれてしまい、情けなく泣き叫ぶミランダのポッドは宇宙の彼方へと消えていく・・・。は?? もう人類にとってはこの上ないほどのバッドエンディングです。劇場でリアルタイムで観終わった時の脱力感ははっきり覚えてるなぁ。

「ジョーダンは手動で宇宙の果てに向かう」、「ミランダは自動ボタンで地球に帰還する」という明確なHOW TOがあったのにも関わらず、何故2人は入違ってしまったのかを、冷静に考察してみました。

まずはミランダの方。こっちは早い段階で分かりやすいですね。ポッドが発射された直後にISSの破片に当たって軌道がズレている描写がありますから。多分あれで自動システムがイカれたのではないかと。一方のジョーダンは、カルビンの触手に侵食されながらもしっかりと操縦桿を握りしめている。だが触手がその腕にも巻き付き、相当な力なのかジョーダンは悲鳴を上げて操縦桿から手を放してしまう。もう片方の手を伸ばすも、こちらもカルビンによって巻き取られ、全身を拘束されてしまうジョーダン。きっと操縦桿を操作できなかったことによって、そのまま地球に落っこちてしまったのでしょう。

普通ならここで考察終わってたんですけど、よくよく深堀をしてみたら、恐ろしい予想が生まれてしまいました。それは、カルビンがジョーダンの乗るポッドを意図的に地球に落としていたのではないかというもの。カルビンは常に学習を続けて進化する生物です。人間の体内をあさり、彼らが自分と同じく水と酸素を必要とする生態だと理解したカルビンが、生き残った人間2人が地球=水と酸素の宝庫に向かうことを察していたら? カルビンはジョーダンを食べようと拘束したのではなく、敢えてジョーダンに操縦桿を握らせないために動きを封じていたとしたら? ジョーダンは痛みではなく、カルビンにポッドを乗っ取られていることを悟って焦燥感で叫んでいたとしたら? 全て辻褄が合うような気がしませんか・・・?

■日本がらみ

・「呼吸しろ」

序盤の無人機回収ミッションにおいて、せわしなく動くショウに対してジョーダンが「落ち着けショウ。日本語でbreathは?」と問う。それに対しショウは「呼吸しろ」と日本語で答える。母国語の方が安心すると思ったジョーダンの気配りだろうか。

ちなみに本作は他のハリウッド作品と異なり、真田広之が時折発する日本語にも全て日本語字幕が付けられている。外国映画の日本語セリフって物凄く聞き取りづらい時があるので、地味に配慮の効いた親切設計なのだ。

■鑑定結果

Jing-Fu
Jing-Fu

真新しさはないものの、他作品よりも現実寄りな設定がかえって恐ろしく響き渡る、宇宙ホラーの秀作。胸糞映画が好きな人は一度手に取るべき作品です。

鑑定結果:ダイヤモンド映画(☆7)

 

となります!!

 

 

 

それでは今回の鑑定はここまで。

またお会いしましょう!

 

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