(C)2019 Image Eleven Productions,Inc. All Rights Reserved.
みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。
今回鑑定をするのは、コロナによって公開時期が延期されていた『デッド・ドント・ダイ』です。
コロナウィルスによる自粛生活が続いている中、ようやく映画館が息を吹き返し始めています。
管理人は『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』以来、実に2か月ぶりに映画館に足を運び、ルンルンな気分で本作を楽しんできました!
本ブログでは、映画館で公開された初見の最新作を鑑定するのは初めてで、どことなく鑑定に自信がありませんが、どうぞお付き合いください。
それでは鑑定をしていきます!
目次
■作品情報
・基本情報
(C)2019 Image Eleven Productions,Inc. All Rights Reserved.
■原題:The Dead Don’t Die
■発掘国/制作年:アメリカ(2019)
■キャッチコピー
・監督、キャスト
■監督:ジム・ジャームッシュ
■主要キャスト
クリフ:ビル・マーレイ
ロナルド:アダム・ドライバー
ミンディ:クロエ・セヴィニー
ゼルダ:ティルダ・ウィンストン
フランク:スティーブ・ブシェミ
ハンク:ダニー・グローヴァー
ボビー:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
ゾーイ:セレーナ・ゴメス
ディーン:RZA
・あらすじ
アメリカのいたってのどかな田舎町のセンタービル。
夜なのに空が明るいサマータイム現象や、腕時計やスマホなどの精密機械が壊れてしまう異常現象が世界中で起こっているニュースが流れる中、センタービルも例外ではなかった。
そんな中、町に唯一のダイナー内で女性2人が殺される事件が発生。
町に3人しかいない保安官のクリフ(ビル・マーレイ)、ロナルド(アダム・ドライバー)、ミンディ(クロエ・セヴィニー)は「複数の野生動物の仕業」と推測をする。
そんな中、ロナルドが唐突に「ゾンビの仕業かも」と発言する。
そんなロナルドの予感は的中し、その日の夜に墓地の地面から突如として大勢のゾンビたちが蘇り、センタービルの町が侵食されていく中・・・。
■ざくっと感想
本作の鑑定結果は、、、
「死者は死なない」という分かりやすいタイトルと、事前に公式の予告編を見て「あー、『ショーンオブザデッド』みたいなコメディ色強めのゾンビ映画かな~」という軽い気持ちで劇場に足を運びました。
冒頭から幕引きまで、「勢い」という概念が一切存在せず、びっくりするほど のほほん とストーリーが進行していきます。
主演のビル・マーレイとアダム・ドライバーのコンビを筆頭に、割と多めの登場人物のほとんどがマイペースな行動しかせず、そのゆるみ具合に思わず眠気を誘われるほどでした。
多角的で少々分かりづらく、未回収の伏線もあるストーリー進行ではありますが、それでも出演俳優が無駄に豪華なので、ゆるみの中にも確かで繊細な演技力がこもっており、一定の魅力を保っています。
メタ的な引用を含めた全体的なコメディ要素も、緩んだ世界観と相重なって独特の笑いを生んでいます。
ゾンビ映画かと思いきや、実は現代人への皮肉が描かれた風刺劇だったのでした。
以下、ネタバレありの感想と考察になります。
作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!
■感想と考察
・豪華すぎるキャスト
(C)2019 Image Eleven Productions,Inc. All Rights Reserved.
センタービルの保安官コンビを演じる2人組を、『ゴーストバスターズ』『恋はデジャヴ』などのビル・マーレイと、『スターウォーズ』シリーズのカイロ・レン役が記憶に新しいアダム・ドライバーの、新旧の名優が演じています。
お恥ずかしいことに、管理人はジム・ジャームッシュ監督の作品を観るのは初めてです。
情けなくもいろいろ調べてみると、彼らは過去にも監督のジム・ジャームッシュ作品に出演していたこともあり、いわばジャームッシュ組のメンバーと呼べるのですね。
『グランド・ブダペスト・ホテル』のティルダ・ウィンストンや『レザボア・ドックス』などの超名脇役のスティーブ・ブシェミに加え、クロエ・セヴィニーやトム・ウェイツなどの出演陣も、過去にジャームッシュ作品に出演経験があるようで、今回彼の呼びかけに応えたのでしょうか。
さらに、演技と並び歌手の顔も評価されるセレーナ・ゴメス、『プレデター2』や『リーサル・ウェポン』のダニー・グローヴァー、ヒップホップグループの「ウータンクラン」のリーダーであるRZAなど、確固たる実力をもつ名優たちも参加しています。
個人的に注目していたのはマーシャルアーツ映画をこよなく愛するRZA(『マッハ 無限大』でトニー・ジャーと闘ったラスボス)で、カンフーアクションでゾンビをシバくシーンでもあるのかなあと期待していましたが、残念ながら見事に外れちゃいました。
・ゆるみ切ったゾンビ地獄の群集劇
街にはゾンビが溢れかえっており、どんどんとその波が迫ってくる中、クリフとロナルドの保安官コンビの対応は最初から最後まで超・ゆるい。
ゾンビ映画って、群れをなして迫ってくるゾンビたちに囲まれる人間たちのパニック劇や争いがお約束だと思うのですが、本作にはゾンビ映画、並びにホラー映画に欠かしてはならない「緊迫感」というものがほぼ皆無です。
ゾンビに襲われて内蔵の飛び出た死体を見ても、語気の弱い「yuck(オエッ)」の一言で済ませ、動かなくなったパトカーがゾンビに取り囲まれても、焦ることなくただ平静な様子を保つだけ。
保安官コンビの2人以外の人物たちも、そのほとんどが大げさなリアクションや張り裂ける悲鳴を上げることもなく、本作は「ゆるい」という風呂敷に包まれているかのような作品です。
このオフビート感漂うコメディ演出が、ジャームッシュ監督の持ち味なのでしょうかね~。
ある意味脱力感さえ漂わせる ゆるみ ですが、ただならぬ状況の中で淡々と進むふんわりとしたギャップが妙にウケが良く、思いのほか退屈することなく笑い通せました。
特に、アダムが演じるロナルドの車のカギに「スターデストロイヤー」のキーホルダーがついており、「スターウォーズ?良い映画ね」とゼルダが誉める自虐シーンでは劇場中がドッと笑っていました。
本作のコメディには、作品そのものに対する非常にメタ的な発言もあります。
冒頭、本作のテーマ曲である「デッド・ドント・ダイ」をバックに簡単なキャストロールが流れますが、その直後、パトカー内のラジオから聞こえているのは「デッド・ドント・ダイ」。
「聞き覚えがある曲だな」と首をかしげるクリフに対し、「そりゃそうでしょ、さっき流れたテーマ曲ですから」とさらっと答えるロナルド・・・、えっ?
そして物語の終盤、最初からことあるごとに「まずい結末になる」と連呼していたロナルドに対し、最終的に「結末が分かっているのか?」と問うクリフに返したロナルドのセリフは「はい、台本を読んだんですよ」・・・はっ?
一瞬笑っていいのか分からなくなるほどの強烈なメタ発言ですが、シュールすぎるやり取りがやっぱり笑えるんですよね。
冒頭で「デッド・ドント・ダイ」を本作のテーマ曲だとメタ発言をしていたロナルドを伏線と理解できていれば、終盤の「台本」ネタも想像できそうだったのにな~、悔しい・・・。
・ゾンビは現代人への警鐘?
(C)2019 Image Eleven Productions,Inc. All Rights Reserved.
エネルギー開発に努めるとある企業が極地の資源をいじくったことによって地球の自転軸がずれてしまい、サマータイム現象や精密機械の故障といった謎現象と合わせて、死体がゾンビとして蘇ってしまったという設定です。
ゾンビ映画にあまり詳しくない管理人からすると「ウィルスパンデミックが原因じゃないゾンビ発生って珍しいなあ」と思ってたんですが、どうなんでしょうかね。
そういえば昔見たゾンビの父親、ジョージ・A・ロメロによる『ゾンビ』(1978)は宇宙からの放射能が原因だったような記憶もあるのですが、ジャームッシュ監督はロメロゾンビを意識しているんでしょうか。
墓から蘇ったゾンビたちは、各々が生前の記憶を有しており、生きていたころに馴染みのあった場所に赴いたり、好きだった単語を発言しながらのろのろと進行を続けます。
「生前の行動を見せるゾンビ」は、記憶に新しい邦画名作ゾンビ映画の『アイアムアヒーロー』と似通った見せ方ですね。
ジャームッシュ監督は本作についての発言として、「みんなが自分のことばかり考えられなくなっている。そういう生き方が世界を破滅に導いているのに、みんなは無関心だ。僕らの周りにはそんなゾンビ人間が増えている」とインタビューで残しています。
つまり本作で描かれるゾンビたちは、監督から見た私たち現代人の成れの果て、ということなのです。
「コーヒー、キャンディ、おもちゃ、ファッション、ワイン」、自分たちの好きな、または依存していた単語しか発しないゾンビたちは、言い換えると他人に興味のない欲深き個人主義の人間たち。
中にはスマホを握りしめて「Wi-Fi、Siri、Bluetooth」とぼやき続けるゾンビたちもいて、現代人ならではの依存を明確にした皮肉がとても心に刺さりました。
本作にはゾンビ映画のセオリーである「首を切り落とす」というトドメ方法が用いられていますが、何故かゾンビたちは首を切られて絶命をするも、いずれも出血描写がありませんでした。
代わり切られた断面からは、灰や塵のようなサラサラした粉のようなものが静かに噴き出しているようです。
逆に、ロナルドが「念には念を」とゾンビに食い殺された「人間の死体」の首を切断すると、赤い鮮血がクリフとミンディの額に飛び散ります。
まだ完全にゾンビ化=物欲への依存化していない人間に対し、すでに自分の好きなことにしか執着できない状態になったゾンビ=現代人は血が通っていない虚ろな存在で、切っても灰しか出ない空虚な入れ物と化している、という監督の考えを表現している。
管理人はこのように解釈をしました。
「彼らは最初からゾンビだった」というナレーションが、本作が掲げる皮肉と社会風刺を決定づけています。
そういえば、ロメロのゾンビ作品はもとも社会風刺をモチーフとしていた話もありましたし、やはりジャームッシュ監督がロメロを意識していたことは間違いないですね。
・ティルダ・スウィントンが演じるキャラの意味とは
(C)2019 Image Eleven Productions,Inc. All Rights Reserved.
豪華キャスト人の中で際立った個性を見せつけるのが、ティルダ・スウィントンが演じる謎の女性ゼルダ・ウィンストン。
ゼルダはセンタービルの葬儀屋を買い取り、外国から移住してきた新たな女主人です。
不気味な赤いアイシャドー、『結婚できない男』の阿部ちゃんのようにきっちりと線を描いて直線的に歩く姿、訛りの効いた口調、ゾンビ映画には欠かせない日本刀を握りしめてゾンビをなぎ倒していく謎の強さ。
考察のしがいが詰まったかなりのミステリアス・キャラです。
色々な伏線を残しながら物語の上を進んでいくゼルダですが、その結末はあまりにも衝撃的でした。
ゾンビの群れの中で立ち止まったゼルダの頭上に、なんと巨大なUFO(!!)が飛んできて(映像がチープなのが笑える)、ゼルダはUFOからの光に吸い込まれていきます。
彼女を乗せたUFOは、ゾンビに囲まれたクリフとロナルド、そして大量のゾンビを残して猛スピードで宇宙へと消えていくのです・・・。
ちょっとパンチが強すぎるというか、残していった伏線を何も解決させずに退場するその無茶苦茶なオチには、笑いを通り越して開いた口が閉じません。
果たしてジャームッシュ監督は、ゼルダを単にミステリアスで癖の強すぎるキャラとして描きたかったのでしょうか。
ここで気になったのが、ゼルダとUFOを見た保安官コンビの反応です。
2人とも身を乗り出し、ロナルドにいたっては「こんなの台本にはなかった」とメタ発言をしながら食いついています。
実はクリフとロナルドにも、前述した現代人への皮肉が込められていたのです。
何事にも常に平静で落ち着いた2人の様子は、言い換えれば「外で起こっていることに興味が湧かない・無関心」になります。
突っ込みどころありまくりのゼルダに対してこれといった詮索もせず「スコットランド人かアイルランド人かな?」くらいしか考えていなかったクリフたち。
そんな彼らがいざ登場したUFOにそれまで以上の関心を寄せる様子から、「内に依存して外に無関心な現代人の、自ら分からないことを調べようとせず、何か予想だにしない大きなイベントがないと外に興味が湧かない(悪く例えると人身事故やアクシデントにさっとスマホを向けて食いつく人)姿」を皮肉ったキャラクターであることが分かりました。
ゼルダという謎に包まれたキャラクター、そしてロナルドとクリフのゆるいキャラクターにも、実は現代人の皮肉が隠れていたんですね。
■日本がらみ
・ゼルダの遺体安置所の一室に、仏陀をまつった和室があります。
壁には書道の飾りや武士の描かれた日本絵画のある部屋で、彼女はサムライ刀=日本刀の修行中です。
それっぽい雰囲気で彼女のミステリアスな素性を際立たせています。
しかもよくよく考えると、役名が「ゼルダ」とは、、、。
・「人気のゲームソフト」はニンテンドーゲームボ~イ。
■鑑定結果
ホラー要素や堅いゾンビ映画を期待して観ると肩透かしを食らうかもしれませんが、風刺が前面に出された新たなゾンビ映画として新鮮に受け止めることはできますね。
キャストも豪華なので、彼らの演技を観ているだけでも楽しめます。
となります!!
それでは今回の鑑定はここまで。
またお会いしましょう!
よろしければシェアをしていただけると幸いです!↓↓
コメント