ネタバレ/感想『ドランクモンキー 酔拳』の鑑定結果【酔えば酔うほど強くなるジャッキー !?】

アクション
© 1978, 1985 Seasonal Film Corporation. All Rights Reserved.

 

Jing-Fu
Jing-Fu

みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。

 

今回鑑定をするのは『ドランクモンキー 酔拳』です。

母親の影響でジャッキー・チェン大大大好きな管理人ですが、ブログを始めて早半年、初のジャッキー作品の鑑定となります!

■作品情報

・基本情報

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■原題:醉拳/Drunken Master

■発掘国/制作年:香港(1978)

■キャッチコピー

むかしドラゴン、いまドランク! 酔えば酔うほど強くなる、世にも不思議な酔八拳

 

・監督、キャスト

■監督:ユエン・ウーピン

■製作:ウースー・ユエン

■主要キャスト

フェイフォン:ジャッキー・チェン

ソウ・ハッイー:ユエン・シャオティエン

イム・ティッサム:ウォン・チュン・リー

ウォン・ケイイン:ラム・カウ

師範代:ディーン・セキ

棒使いのチョイ:チョイ・ハー

鉄頭のチュウ:サン・クワイ

フェイフォンの叔母:リンダ・リン・イン

・あらすじ

地元の名士であるウォン・ケイイン(ラム・カウ)が運営するカンフーの名門道場。ここで稽古をするケイインの息子のウォン・フェイフォン(ジャッキー・チェン)は、カンフーの腕はそこそこながらも教養がなく、道場の悪友たちと遊びまわって自堕落に暮らしていた。ある日フェイフォンが叔母(リンダ・リン・イン)の娘に手を出したこと、憂さ晴らしのために喧嘩をした相手に大怪我を追わせて面目を潰されたことに腹を立てたケイインは、フェイフォンを修行の厳しさで知られる酔拳の師匠のソウ・ハッイー(ユエン・シャオティエン)のもとに預けて、フェイフォンの性根を叩き直すことを決める。それを嫌がるフェイフォンは夜の内に家から逃げ出し、立ち寄った飲食店で無銭飲食をして従業員たちから袋叩きにされるのだが・・・。

■ざくっと感想

Jing-Fu
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本作の鑑定結果は、、、

鑑定結果ダイヤモンド映画(☆8)!!

『スネーキーモンキー 蛇拳』で自身のコミカルカンフー路線を確立させたジャッキー・チェンが立て続けに主演した作品で、日本で初めて劇場公開されたジャッキー主演作として知名度はかなり高い。『スネーキーモンキー 蛇拳』の姉妹作品であるため、師匠やラスボスなども含めてキャラは違うが同一のキャストが多数出演している。香港はもちろん、公開当時は日本でも記録的大ヒットとなったそうで、初期のジャッキーの代表作となった名作だ。監督は、後に『マトリックス』『キル・ビル』などハリウッド作品のも呼ばれることになる香港の名アクション監督のユエン・ウーピン

「酔えば酔うほど強くなる」という単純明快なキャッチフレーズの酔拳を習得するため、主人公ウォン・フェイフォンが奇想天外な修行を積んで強くなっていくスポ魂的な成長物語だ。ウォン・フェイフォンとは中国の歴史上に実在していた武術家の一人で、医学にも精通して自警団を束ねて民衆をまとめ上げるなど、列強の時代に国内の治安維持に努めたとして評価されており、日本でいえば坂本龍馬くらいの知名度を誇っているらしい。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』ジェット・リーが堅実な同人物を演じているのも有名だが、「そんな高名な人物がもしも怠け者だったら?」という隙を突いたアイデア自体が面白すぎる。

撮影当時のジャッキーが弱冠23歳という若さもあり、とにかく全編通してエネルギッシュにパフォーマンスを披露するジャッキーを楽しめるのが最大の魅力。本当に強くなるのかが分からないおもしろ修行の数々、ジャッキー節の効いたカンフーアクション、多彩な型を見せつける酔八仙拳といった、観客を楽しませるために試行錯誤されたアクションシーンこれでもかというほど詰め込まれているのがたまらない。

『スネーキーモンキー 蛇拳』の頃はまだぬぐい切れてなかったストーリーの暗い一面も、本作ではほとんど影を落としていて明るさがグッと強くなった。くだらない騒動ばかり起こすフェイフォンや、師匠の風貌に似つかわしくないソウとフェイフォンの師弟掛け合いなど、後のジャッキー作品の基本となるコメディ要素が随所に華を添えており、まさに笑えてかっこいいカンフー映画の代表作と呼ぶに相応しい。母親からの勧めで、管理人が初めて観たジャッキー作品として個人的な思い入れもある、楽しい作品です。

 

以下、ネタバレありの感想と考察になります。

作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!


 

 

 

 

 

 

 

 

■感想と考察

・コミカルカンフーの集大成

フェイフォンと師匠のヘンテコ掛け合いに注目!

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ジャッキーを第二のブルース・リーとして売り出そうとしていた、ファンの間では好感度0のロー・ウェイ監督の呪縛(詳しくはいつか、『スネーキーモンキー 蛇拳』の鑑定をする時に言及しますね)から逃れ、『スネーキーモンキー 蛇拳』で自身のコミカルカンフースタイルに確かな手ごたえを掴んだジャッキー。そんな自分にしか出せない色をさらに高めようとする意欲の勢いが、本作のアクションシーン全てから溢れ出ているのが分かるだろう。ふざけるところはふざけて、カッコよく決める時には決める。中途半端なことをせずにアクションとドラマの中で緩急をクッキリと両立させることによって、万人が気軽かつのめり込み、笑って楽しめる素晴らしいエンタメ作品になっている。ジャッキーが自身のスタイルを形成して100%それを出し切っていることからも、本作はいわゆる初期の「拳シリーズ」の集大成とも呼ぶべき作品なのかもしれない。

ストーリーとしては他愛もないもので、ボンクラな主人公が初めて屈辱的な敗北を味わい、師匠に弟子入りをして過酷な修行を繰り返していくという、いわゆる典型的なスポ魂物語だ。公開当時の日本には腐るほどのスポ魂アニメが溢れており、すでに下地が出来上がっていたことも多くの人々に受け入れられた理由の一つだと思う。

コメディ要素は前作の『スネーキーモンキー 蛇拳』と比べてもかなり強め。主人公フェイフォンの自堕落な生活とくだらない言動を、ジャッキーが渾身の身振りと顔芸でオーバー気味に表現していて、まるでギャグマンガを読んでいるかのように常に笑いを誘う。特にジャッキーの顔芸は達人レベル。例えば腹筋の修行シーンでは、師匠が眠っている隙にフェイフォンがコソコソとズルをするんだけど、この時のジャッキーの顔が完璧な「子供がズルをする時の顔」を浮べていてめちゃくちゃ笑える(結局師匠にはバレてるんだけど)。この豊かでオーバーな顔芸が、彼が喜劇役者としてのセンスを兼ね備えているのを代弁しているのだ。

他にも威厳ある師匠の風格に似つかわしくないソウの汚らしい風貌と茶目っ気が『スネーキーモンキー 蛇拳』の時より増しているのも笑わしにかかっているし、そんなフェイフォンとソウのデコボコ師弟やり取りは漫才をしているようにしか見えない。都度笑いの挿入される軽快な作風が喜怒哀楽の「楽」を刺激し、格闘の中にさえお笑い要素を兼ね備えているのが、ブルース・リー作品とはまた一味違う魅力となっている。

漫才と言えば、実は本作は日本の人気お笑い芸人にもかなりの影響を与えていたりもする。例えば次長課長の河本が得意とする「お前に食わせるタンメンはねえ!」の出っ歯顔は、本作の食堂シーンで登場する出っ歯従業員(「そうは酢豚の天津飯だコノヤロー」の人)の顔をモチーフとしているし、ドランクドラゴンなんかはコンビ名が本作のタイトルそのまんまだもんなあ。

・視覚的な楽しさを追求したアクション

拳VS頭!! 劇中屈指の名カンフー対決だ。

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ブルース・リーはそれまでの単調な画のカンフーアクションを一掃し、ヌンチャクや渾身の飛び蹴りを取り入れることによって格闘に初めて「立体感」を生み出していた。一方本作のジャッキーはというと、アクションの中にバック転や側転などといった京劇仕込みのアクロバットを併用させ、ブルース・リーとは異なる見せ方でアクションを立体的に映えさせて個性を光らせている。身の回りの環境を活かして動き回り、突拍子もない身のよじり方を披露することによって「避ける」という新たな概念を意識させ、格闘の中に一方的ではないドラマを持たせているので一切の飽きがない。これぞジャッキースタイルを語る上で隠れがちだが極めて重要なポイントだ。

それぞれの修行シーンや格闘シーンのシチュエーションにも非常にこだわりが感じられる。修行シーンは実用的な筋トレを単に見せるのではなく、面白おかしく奇想天外なメニューを意識していて印象に残りやすい。格闘シーンでは各ステージの違いだとか、使用されるアイテムや武器の豊富さなど、『スネーキーモンキー 蛇拳』のアクションよりも自由度が前面に出ていて、古臭さを感じさせないバラエティに富んだカンフーアクションが見ものだ。後に香港の大物アクション監督となるユエン・ウーピン監督とジャッキーが、ウースー・ユエンのもとで自由に発想と実行を繰り返し、良い映画を作ろうとあれこれアイデアを出し合う舞台裏が思わず思い浮かぶのも微笑ましい。ちなみにウーピン監督が、冒頭で鳥かごを持った坊ちゃんに「邪魔だ!」と殴られるかわいそうな物売り役でカメオ出演しているのは、あまり知られていないこそこそトリビア。

劇中で数あるカンフーアクションの中でも、フェイフォンが鉄頭のチュウと闘うワンシーンが最も面白かった!当時の名脇役、サン・クワイ扮するチュウはその名の通り固い頭を武器としていて、『鬼滅の刃』の炭次郎も顔負けの怒涛の連続頭突きを突き出す。対するフェイフォンは手足と周りのアイテムを駆使して応戦するが、互いの手足が交わるわけではないので、当然ながらジャッキーの動きはそれまで以上に奇抜になり、格闘の流れがかなり特殊に映ることになる。手足VS頭。こんな斬新な格闘シーンは先にも後にも観たことがない。フェイフォンがズボンを使用してカウンターを発動したり、フェイフォンと師匠のコンビネーションが披露されることもあり、実は作中屈指の名格闘シーンと掲げる人が多かったりもするらしい。おまけに、この戦いではフェイフォンが柄に鎖のついたハンマーを使用するんだけど、明らかにブルース・リーを意識してヌンチャクのように振り回していたりするのね。最後もハンマーを体の周りで振り回して綺麗に決める!と思いきや、自分の体にぶち当てて失敗するという情けない締め方を見せる。単純にコメディシーンとして捉えることもできるけど、これはジャッキーブルース・リーへのオマージュを意識しつつ、彼なりに「自分とブルース・リーの違い」を表現した粋な演出なのだろう。ロー・ウェイブルース・リースタイルを強制され、「ナンバーワンだったブルースの真似をしても超えられる訳がない」と、自身のスタイル形成に躍起になったジャッキーロー・ウェイに対する反旗の翻しと考えると興味深いね。

・ジャッキーの超人的パフォーマンス

ジャッキーの強靭な身体能力がいかんなく発揮される奇想天外な修行シーンの数々。

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酔拳は酒を飲めば飲むほど強くなるらしいが、実は酔ってるようで酔ってはおらず、相手を油断させつつ全身から殺気を発して技を研ぎ澄ませるという、海外留学先でたかが白ワイン2杯を飲んで記憶を無くすほどの下戸な管理人には到底習得不可能な特殊なカンフーである。「飲んでも飲まれるな」とは上手く言ったもんだなあ。

劇中でお披露目される「酔八仙拳」は、中国の名高い8人の仙人がそれぞれ酒に酔った姿を8つの型として表現しているのだが、中盤でジャッキーが見せる酔八仙拳の演武が放つ迫力には思わず目を見張る。もちろん忠実に沿っているわけではなく本作用に創作された動きなのだが、強靱な筋肉と体幹、しなやかさとアクロバティックな動き、例えばハンドスプリングならぬネックスプリングを連続3回繰り出す超人パフォーマンスなど、ジャッキーが秘めるあらゆる身体能力の高さを自然かつ合理的に解凍することに成功しているからだ。他の各修行シーンにも同じ成果が出ていると言える。撮影地のホテル滞在中に、毎晩鏡の前で「どう動けば面白くかっこよく映るのか」を試行錯誤して劇中の酔八仙拳を完成させたと聞けば、彼の熱い意気込みと創作意欲が伝わってくることだろう。

・『酔拳』が食欲を掻き立てる?

カービィじゃないんだからさあ、、、笑

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フェイフォンが飲食店でブルトーザー無銭飲食をする大食いシーンも見逃せない。マナーもへったくれもない勢いでフェイフォンがテーブルに並べられた料理をたいらげていく様子は、なんとも汚らしく度を通り越した行儀の悪さ。しかし無我夢中で食事をする姿を見ていると、自然と活力が湧いてくるのが不思議だ。他人が美味しそ~に食事をしていると、たまらず空腹を感じてこちらも何かを食べたくなる。ジャッキーの豪快な食事シーンにはそうやって食欲をそそらせる効果があり、仕事とかプライベートで嫌なことがあってどうにも食欲が湧かない、そんな憂鬱さを晴らしたい時に是非とも観てほしいシーンなのだ。おかわり!

ジャッキーが見せる大胆な食いっぷりはまさに少年漫画の主人公そのもの。彼の姿に『ドラゴンボール』の悟空が影響を受けているのは明らかだし、『ONE PIECE』のルフィも少なからず本作のジャッキーを意識しているに違いない。カンフーアクション以外でも後世の作品に影響を与えているんですなー、ジャッキーは。

ちなみに間食したフェイフォンが腰帯を緩めて膨れ上がった腹を縮ませるシーンは、これまた『ドラゴンへの道』ブルース・リーへのオマージュである。

■日本がらみ

・今回、特に日本がらみの要素は見つかりませんでした。

 

■鑑定結果

Jing-Fu
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笑って楽しいカンフー映画の代名詞であるし、ジャッキーの魅力がふんだんに詰まっていることもあるので、ジャッキー入門作品として手に取るのもアリだ。「今考えると、酒を飲んで喧嘩するなんてサイテーだった」と、今のジャッキーからするとあまり好印象な作品ではないみたいだが、、、

鑑定結果:ダイヤモンド映画(☆8)

 

となります!!

 

 

 

それでは今回の鑑定はここまで。

またお会いしましょう!

 

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