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みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。
今回鑑定をするのは『ドラゴン 怒りの鉄拳』です。
ブルース・リー 4Kリマスター復活祭2020にて、人生で初めての映画館ブルース・リー体験をしてきました!
あ、ちなみに今回の記事から、試験的に全体的な文体を変えてみましたので、読みづらいかもしれませんが、よろしくお願いします。
目次
■作品情報
・基本情報
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■原題:精武門 / Fist of Fury
■発掘国/制作年:香港(1972)
■キャッチコピー
鮮血の修羅場を華麗に彩るブルース・リー!
・監督、キャスト
■監督:ロー・ウェイ
■主要キャスト
チェン:ブルース・リー
ユアン:ノラ・ミャオ
師範:ティエン・ファン
ファン:ジェームズ・ティエン
鈴木:橋本力
ウー:ウェイ・ピンアオ
鈴木の用心棒:勝村淳
ペドロフ:ボブ・ベイカー
・あらすじ
20世紀初頭の中国・上海。
中国武術を学ぶための道場「精武館」を創設した偉大な武術家のフォ・ユアンジャが突如として死亡した。
彼の愛弟子であったチェン(ブルース・リー)は師匠の訃報を受け、大雨の中で上海へと帰還するも、師匠の死を受け入れられず悲しみに暮れていた。
師匠の強さを疑わないチェンは、師匠が何者かに暗殺されたのでは?と疑問を抱く。
ほどなくして、日本人の空手道場である「虹口道場」の館長である鈴木(橋本力)らによる度を過ぎた嫌がらせが精武館の生徒たちに降りかかり、事態は深刻になっていく。
日本人たちからの虐げに我慢のできなくなったチェンは、単身虹口道場に乗り込んで日本人たちを蹴散らしていくのだが・・・。
■ざくっと感想
本作の鑑定結果は、、、
ブルース・リーが香港で主演したカンフー映画の2作目。
『ドラゴン危機一発』での成功を上回り、ブルースが香港でスターの地位を確立した作品です。
20世紀初頭の列強に支配された上海を舞台に、悪行の限り尽くす日本人たちに対して立ち向かう主人公の闘いが描かれます。
怪鳥音、ヌンチャクが初めて劇中に登場し、ジークンドーと実戦を意識した武術哲学など、後にブルースのイメージとして定着する演出が盛り沢山。
全編に渡って激おこ状態のブルースが振るう怒りの鉄拳はパワーに満ち溢れており、横暴な日本人たちをギタギタのメタメタにしていく爽快感がたまらない。
1人対多数の道場破り、ロシア人ボクサーとの死闘、ヌンチャクVS刀など、様々なシチュエーションで繰り広げられるバトルの迫力は前作の『ドラゴン 危機一発』以上。
また、ブルースのラブロマンスシーンや他の人物になりきる変装シーンなど、アクションだけでなく彼の演技力にも触れることができる点にも注目したい。
本作は続編やリメイク作などの派生作品が非常に多く、後の香港映画に与えた影響が大きいことでも知られています。
ブルースの前作、『ドラゴン危機一発』についても鑑定しているので、併せてどうぞ☆
以下、ネタバレありの感想と考察になります。
作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!
■感想と考察
・ブルースのスタイルが確立されたアクション
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観客を一気に惹きつける、ブルースのしなやかで猛々しい強さがさらにパワーアップし、劇中で威張りくさっていた日本人たちを完膚なきまでに叩きのめしていく様子が気持ちいいのなんの!
「ワタッ!ホワターーッ!」という独特の雄叫びである怪鳥音(世間一般的にはアチョーといった方が分かりやすい)であったり、鎖で繋がれた2本の棍を予測不可能な動きで振り回すヌンチャクなど、ブルース・リーと聞けば誰もが想像するであろう、後に定着することになるトレードマークが初めて登場したのが本作です。
その唯一無二のアクションスタイルと目をくぎ付けにされるかのようなインパクトは、ブルースのアクションの迫力と並びに彼のカリスマ性までもを際だたせていることは言うまでもなく、『ドラゴン危機一髪』で見せたあのインパクトを凌駕しているのが驚きだ。
特にトリッキーな動きを見せるヌンチャクの衝撃はすさまじいもので、道場破りのシーンで次々と日本人たちを一閃していく痛快さがたまらない。
対戦中の人物の目線をカメラに例え、ブルースの連続蹴りが画面に迫ってくる臨場感溢れる映像演出、迫る刀の斬撃を大げさながらもイカした手の動きで避ける構えだったりと、一つ一つのアクション動作をよりカッコよく見せようとする熱もバッチリと伝わってくる。
武器を失った日本人に対し、「お前なんかこれ(ヌンチャク)を使うまでもねえ!」とヌンチャクを捨てて拳を突き出すチェンの潔きかっこよさには気絶しそうになるね。
・垣間見えるジークンドー哲学
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ブルース演じるチェンの師匠であるフォ・ユアンジャは中国史に実在した武術家であり、複雑な歩法を用いて攻撃をする「迷踪拳(めいそうけん)」の使い手でもあったことから、弟子であるチェン(こちらは架空のキャラ)にも迷踪拳の心得があるという設定になっている。
格闘中に随所で両腕をゆらりと構えるそれらしい動きもあり、中でもロシア人ボクサーのペドロフとの闘いの最中、残像を残しながら妖艶に両腕を揺らす姿は、まるで千手観音を彷彿とさせる神々しさだった。
しかし実際にチェンが戦闘中に迷踪拳の技術を用いているかといえばそうでもなく、むしろブルースらしい、型にとらわれないスタイリッシュな色の戦法がほとんどで、あくまでも迷踪拳の動きは見栄えの補助にすぎない。
ペドロフとの闘いは、アクション中にブルースの真骨頂であるジークンドーの哲学が詰め込まれた見逃せないバトルシーンだ。
ペドロフ役のボブ・ベイカーはプライベートでブルースの弟子だったんですよね。
いざ闘いが始まるまでに両者はじりじりと相手の出方を狙うのだが、ここで2人の構えに明確な違いが表れているのが面白い。
いちいち両腕をそれっぽく構えて型を見せつけて威嚇するペドロフに対し、チェンは自然体で構えていつでも前に出れるように待機をしている。
闘いが始める前から、すでに「型に捕らわれない柔軟な構え」を唱えていたブルースの武術哲学が見受けられるのだ。
いくら型を見せつけても相手にダメージを与えることはできない。
試合と実戦での目的の違いを見せつける、非常に合理的な演出だ。
その後の格闘シーンでも、文字通り相手の拳を遮る手さばき(トラッピングとグワチョイ)、相手をけん制するフェイントの応酬、狙い撃ちした場所から外してがら空きの箇所に拳を叩き込む意表の突き方など、ジークンドーの技が理にかなっていて、当時の他のカンフー映画と比べても、そして今観直しても画期的な動きだということが分かる。
また、ペドロフがボクサーという役柄ながらも、チェンの腕をさらって腕ひしぎ十字固めを決めるサブミッションの動きを見せるのには驚いた。
ブルースはここで、腕が持ってかれる寸前でチェンがペドロフの足に噛みついて窮地を脱するという機転を利かせた回避法を用意している。
これが試合だったら完全にアウトなわけだが、1対1の喧嘩においてこれを卑怯というのであればただの逃げ口上。
形式に捕らわれた試合ではなく実戦的なストリートファイトを想定し、いかに相手を早く倒すかを掲げていたブルースの武術哲学が光る、当時の映画界においては類を見ないアクション演出なのであった。
・ブルース唯一のラブシーン
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ブルースが生涯残した少ない映画の中でも唯一のラブロマンスシーンを観ることができる点も、本作を観るうえでは欠かせない要素だ。
『ドラゴン危機一発』でも風俗嬢とのラブシーンはあったが、あの時ブルース演じる主人公は酔いつぶれていて自発的なものではなかったのでカウントはしない、しちゃだめ。
『ドラゴン危機一発』では売店の少女役であった可憐なノラ・ミャオが、本作ではヒロインのユアン役に昇格。
チェンとユアンが昔から夢見ていた結婚後の理想像を思い描くシーンで、ブルースがいい感じの微笑み方をしてるのにほっこりさせられる。
チェンの目元がクローズアップされる一瞬では、無駄にブルースの瞳がイケメンに輝きすぎていて女子は悶絶必至。
そして互いに唇を重ね合わせるシーンは情熱的で、ブルースが劇中でキスをするシーンはここでしか観ることができないレアものだ。
互いに結ばれるはずだった関係の2人だったが、師匠が日本人に暗殺されたことをきっかけに、チェンが復讐で人殺しとなってしまい、罪を償うためにその夢が途絶えてしまう。
切ないピアノとバイオリンのBGMが静かに響く、まさに愛と哀しみの恋愛模様には心が痛くなる。
結局はチェンと日本人が、やられたらやり返すを繰り返すだけの単調さや冗長に感じる部分も多いストーリーだが、この2人の寂しげな恋愛ドラマだけは、下手な作品よりも雰囲気が出ていると思う。
ちなみにキスの直前まで、チェンは焼いた野犬をむさぼっていたことは内緒だ。
どんな時でも、男はフリスクを常備していなければならない、まるで戒めのようなシーンでもあった。
・ブルースの演技力にも注目
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ブルース演じるチェンは劇中で、日本人の手の内を探ろうと情報収集をするために、車夫、新聞売りの老人、電話の修理工など、いろいろな人物に化けることになる。
ブルースのコスプレ大会みたいなもんだが、それぞれの変装時に異なった人物を演じる、『ドラゴン危機一発』の時にはまだまだ固かった演技の広がりを観ることができる。
そんなコスプレの中でも、電話の修理工の時のキャラにクセがありすぎて最高に笑える。
常にブチギレ状態であったチェンが、いくら日本人の前とはいえ、正体を隠すために常にひょうきんな笑顔の修理工に扮する姿が信じられないほど間抜けなのである。
キャップ帽と分厚い眼鏡姿ということもあり、「配線直しに来た電気屋のおっさん」感が強く、妙に親しみを感じるのは気のせいだろうか。
・徹底した悪の日本人
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本作に登場する日本人は、虹口道場の館長であるスズキを初めとしていずれも非常に凶悪。
中国の租界(外国人によって管理されている地域)において絶対的な法律とも言うべき存在の日本人たちは、チェンたちに対して「アジアの病人」と書かれた額縁を平気で渡しにきたり、「俺の犬になればここを通れるぞ」と最低の侮辱を投げかけたりとやりたい放題。
チェンと闘う際にも、チェンの強さに自分が不利と分かると即座に刀を手にするという、卑怯な一面も目立っている。
共感できる部分が一切ない悪玉であるからこそ、チェンのカミソリのような鋭い眼光で睨みをきかせる目つきや、「中国人と犬は通行禁止」という侮辱的なプレートを粉砕する飛び蹴りが勇ましく際立ち、踏みにじられる民衆たちを鼓舞する英雄像が観客の心に刺さる。
なかなか反日感情の強い作品ではあるが、この作品が意図的に反日意識をもって製作されていたり、ブルースが日本嫌いという訳ではない。
そこをよく勘違いしている人が多いのだけど、スズキ役の橋本力やその用心棒役の勝村淳は、撮影に招かれた際にはかなりの歓迎ムードを受けたそう。
そもそも、当時の香港映画にしては、日本人役にしっかりとした日本人を起用しているのが珍しく、製作サイドのしっかりとした敬意を感じる。
『座頭市』の勝新太郎の大ファンであったブルースが、本人に出演オファーするも折り合いがつかず、感銘を受けた勝新太郎が代わりに勝プロ所属の2人を出演させたというエピソードを踏まえれば、ブルース本人が日本人嫌いでなかったことははっきりしている。
あくまでも、国民の団結させるヒーローの立て役として、この時代の日本人が悪役に選ばれただけの話だ。
そしてブルースは、プライベートでスキヤキにも目がなかったらしい 笑
・端役にあの俳優たちが!
チェンの蛇口道場破りのシーンでは、群がる日本人空手家たちの中に、いまだからこそ見覚えのある面々を確認することができる。
・チェンに蹴っ飛ばされて柱に頭をぶつけるグレーの袴の彼は、『トランスポーター2』や『レッドクリフ』などの名アクション監督、ユン・ケイ(コーリー・ユン)。
・チェンが後ろから迫ってきた2人を同時に裏拳で吹っ飛ばすが、その内の右腕で打たれるのは、なんとジャッキー・チェン。
ちなみにジャッキーは、精武門の庭で女子生徒と手合わせを行っている生徒役としても顔を確認できる。
・チェンに後ろから掴みかかるも腹にエルボーを食らい、そのまま派手に宙に投げられて落ちる人物は、『プロジェクトA』や『チャンピョン鷹』などの名優、ユン・ピョウ。
また、「中国人と犬通るべからず」のプレートの前でチェンを見下す日本人は、『燃えよドラゴン』でブルースのスタントを務めることになり、『カンフーハッスル』の大家役が有名なユン・ワーが演じている。
などなど、香港映画フリークが喜びそうな、後の香港映画界で活躍することになる大物たちの若き姿を確認することができる貴重な作品でもあるのだ。
また、作品のラストのチェンVSスズキにおいて、蹴っ飛ばされたスズキが襖を破って中庭に落ちるスタントを務めたのがジャッキー・チェンであることは、ファンの間では有名な話である。
ジャッキーはこのスタントの技量が認められ、『燃えよドラゴン』にも端役でブルースに呼ばれることになっている。
ジャッキーがスタントマンとして、初めて大きく注目されることになった、香港映画史においてはある意味重要な瞬間でもあった。
・派生作品について
ブルースが演じたチェン(陳真)の、自分たちを虐げる日本人に立ち向かうその勇姿が国民に称賛され、本作オリジナルのヒーローキャラクターでありながら、中華圏では未だに根強い人気を博しています。
本作が後の香港映画に与えた影響は計り知れず、今日において香港の大スターともいえる多くの俳優たちが、本作の続編やリメイク作に携わっているのをご存じだろうか。
具体例としては、
→本作の正当な続編である『レッドドラゴン 新・怒りの鉄拳』に主演。
→本作のリメイクである『フィスト・オブ・レジェンド』に主演。
→本作のリメイクである『新精武門』に主演。
→本作のリメイクであるTVドラマシリーズ『精武門』に主演。
さらに『ドラゴン 怒りの鉄拳』にオマージュを捧げた続編的作品の『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』にも主演。
名だたる名優たちが出演する、各時代の『精武門』を見比べるのもまた一興だ。
最近だと、珍作の『カンフーリーグ』で現代にタイムスリップしてきたというバカ設定でチェンが登場していたのが記憶に新しい(しかも演じているのが『少林サッカー』などのブルース・リーそっくり俳優のチャン・クウォックワン)。
この作品では、アンディ・オン演じるフォ・ユアンジャとの、本作では描かれなかった夢の師弟共演シーンもあり、バカ映画ながらも心が躍ったなあ。
ちなみに、『スピリット』ではジェット・リー主演でフォ・ユアンジャの半生が描かれている。
非常に上質なカンフー映画であるので、本作を観た人にはぜひおすすめしたい作品だ。
■日本がらみ
劇中に登場する日本人たちが身に付けている袴が後ろ前逆になっていることは、日本人であればすぐに分かるだろう。
観ていて違和感しかないのだが、これは製作サイドが「こっちの方がかっこいいやんけ」と日本人側の意見を取り入れることなく撮影を続けたためだそう。
マヌケにしか見えないのだが・・・。
■鑑定結果
ブルースのその後のスタイルが確立された名作。
終始ブチギレ状態のブルース・リーの凄みを堪能したい人は必見ですよ。
となります!!
ブルースの前作、『ドラゴン危機一発』についても鑑定しているので、併せてどうぞ☆
それでは今回の鑑定はここまで。
またお会いしましょう!
よろしければシェアをしていただけると幸いです!↓↓
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