みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。
今回鑑定をするのは『ヘッド・ショット』です。
『ザ・レイド』シリーズで出世したインドネシアのアクションスター、イコ・ウワイスが主演のアクション・サスペンスです。
『ザ・レイド』とはまた異なる趣の格闘シーンの連続で、インドネシアホラーの担い手であるモー・ブラザーズが監督をしているだけあって、格闘中の残酷描写にも抜かりはありません。
そんな『ヘッド・ショット』のネタバレを明かしながら、感想と考察を鑑定していきますね。
グロ描写は『ザ・レイド』以上!?
目次
■『ヘッド・ショット』のあらすじと基本情報
まずは予告編をどうぞ☆
© 2016 PT. Satu Indonesia Film
■あらすじ
ある日、砂浜に瀕死の男(イコ・ウワイス)が流れ着く。病院に運び込まれた男は頭部に銃弾が撃ち込まれていたものの死んではおらず、女医のアイリン(チェルシー・イスラン)の治療によってなんとか一命を取り留める。2ヶ月後に目覚めた男はそれまでの記憶を全て失っており、アイリンから「イシュマエル」と呼ばれることになるのだが・・・
© 2016 PT. Satu Indonesia Film
■原題:Headshot
■発掘国/制作年:インドネシア(2016)
■上映時間:118分
■キャッチコピー:最強VS最悪
■監督:ティモ・ジャヤント
キモ・スタンボエル
■主要キャスト
イシュマエル/アブディ:イコ・ウワイス
アイリン:チェルシー・イスラン
リー:サニー・パン
リカ:ジュリー・エステル
ベシ:ベリー・トリー・ユリスマン
テジョ:デヴィッド・ヘンドラワン
タノ:ザック・リー
日本人殺し屋:後藤 洋央紀
■『ヘッド・ショット』のネタバレ感想と考察
それでは鑑定していきましょう!
ネタバレ①:残酷描写強めのサスペンス・アクション
ショットガンを構えるイコも決まってる!
© 2016 PT. Satu Indonesia Film
ヘッドショット! ヘッドショット!! ん〜、思わず何回でも口に出したくなる、刺激的でカタルシスな響きのタイトルに目を惹かれる。タイトルはイコ演じる頭を撃たれて記憶喪失になった主人公イシュマエルのことを指していて、「記憶を失っていた主人公が実は殺人マシーンだった」が徐々に明らかになっていく、ジャッキー・チェンの『WHO AM I ?』のような記憶喪失×マーシャルアーツアクションな映画だった(ジャッキーは殺人マシーンじゃないけど)。組織を裏切った落とし前として、自分が所属していた組織のメンバーが次々と刺客として送り込まれ、それを順番に返り討ちにしていくイシュマエルの壮絶な独立運動が描かれます。
ちなみに記憶を失って過去を思い出せないアブディに名付けられたイシュマエルとは、劇中でアイリンが読んでいた名作『白鯨』のキャラクターから取られています。
ストーリー自体は既に聞き慣れたもので、特別な真新しさはない。むしろちょっと説明不足な部分もあって、例えば大規模犯罪シンジケートの一員であったアブディが何故組織を離れることになったのか、何故頭を撃たれて処刑される羽目(処刑自体は失敗)になったのかについて具体的な説明がないのが地味に気になるところ。幼い頃から犯罪組織のリーダーであるリーの元で洗脳じみた訓練に励み、同じ釜の飯を食ってきたような仲間たちを裏切るなんてよっぽどの理由があったんだろうが、これについて「もう殺しは嫌だ!」の一言でサラッと終わらせてしまう呆気なさ。ここを丁寧に描けて物語に絡められていれば、より『ザ・レイド GOKUDO』と同水準のドラマに近づけたかもしれない。それに映画としての粗が目立つとこもあり、代表格としては劇中のインドネシア警察が『ザ・レイド GOKUDO』以上に役立たずな存在に成り下がっていることだ。まず冒頭の脱獄囚と囚人たちの謀反への対処があまりにもおざなりすぎる。後ろで悲鳴を上げて絶命している別の警官にも気付かず、武装した囚人たち相手に防護服も身に付けず隠れもせず、「いのちをだいじに」ではなく正面から「ガンガンいこうぜ!」さくせんで発砲して相打ちの全滅。最重要囚人を収監している割にはお粗末な対応だなぁ。中盤では街中では最も硬いガードを持つだろう警察署もやけにあっさりと制圧されてしまうし、インドネシアってこんなにも法と秩序が通用しない狂気じみた国なのか? インドネシア警察が単に弱いとかそう言うことでなく見せ方の問題で、ここら辺だけ随分脚本が手抜き仕様ではないか??笑
リアルな話で、インドネシアではこんなにも秩序が通用しない狂気じみた国だったら仕方がないけど笑
とは言っても全体的に観るに耐えない作品というわけでもなく、重たくシリアスなストーリーには手堅くのめり込める展開の面白さはあるし、「罪を犯してきた主人公の改心とそれの受け入れ」と「しがらみからの解放」という、シリアスの中に『ザ・レイド』よりも希望の光が差し込むテーマもある。シラット使いの格闘アクションのクオリティはお墨付きだし、何よりあの『ザ・レイド GOKUDO』を凌駕するほどインドネシアン・ゴア描写が凄まじいこと凄まじいこと。本作で監督を務めたティモ・ジャヤントとキモ・スタンボエルのコンビ、通称「モー・ブラザーズ」は、衰退して壊滅寸前のインドネシア映画界に再び息吹を与えた貢献人で、『マカブル 永遠の血族』をはじめ、当初から残虐スプラッター描写に重点を置いてきた実績がある。そんな外道カルトな2人が監督を務めたもんだから、あんだけ騒がれた『ザ・レイド GOKUDO』がまだマイルドに見えてきてしまうほど、本作の残虐絵巻には突出した見応えがありました。
モー・ブラザーズはハリウッド作品の『ABC・オブ・デス』や『V/H/S ネクストレベル』にも参加していたり、北村一輝主演の日本×インドネシア合作の問題作『KILLERS キラーズ』も手がけている、一貫して軸のブレない仕事を続けてます。
ネタバレ②:『ザ・レイド』と差別化を図る格闘シーケンス
本作のアクションを「ザ・レイドと比べると見応えがない」と低評価をしている人をよく見かけるけど、なぜに??? 全然そんなことありませんよ。確かに『ザ・レイド』のように群がってくるザコをイコが無双していく爽快感はないかもしれないが、それで良いじゃない。だって本作は『ザ・レイド』シリーズじゃないから。『ザ・レイド』と同じことをやってもしょうがない。その点、本作では1人ずつ順番に押し寄せる刺客と拳を交えていく、言うなれば王道のバトル漫画みたいな1体1の中ボス戦を主流として、『ザ・レイド』とはしっかり差別化をできているとして評価すべきだ。周囲の物の利用、武器、真剣タイマンなど、闘う状況もオプションも様々、敵側のキャラたちも個性派揃いで飽きがない。あとはアクション中の人体破壊と流血描写が『ザ・レイド』すら踏み越えていくほど画の迫力も強めです。
アクション中の演出面でも、『ザ・レイド』シリーズにはなかった見せ方がいくつもあって新鮮味がある。例えばイコと敵が殴り合っている周囲をカメラを持ったカメラマンがグルグルと回って撮影しているのは物凄く臨場感が高いし、キャラクターが構えている最中、拳に力を込めたり感情を高ぶらせる時には画面がそれと連動するかのようにブルブルと揺れるのも他作品では観たことがない。
「新しいことをやろう」とするスタッフたちの気概がひしひしと伝わってきて嫌いにはなれないですね。
・イコ・ウワイスVSデヴィッド・ヘンドラワン&ザック・リー
使えるものはなんでも使う!
© 2016 PT. Satu Indonesia Film
チビとデカの坊主刺客コンビとの対決。デヴィッド・ヘンドラワン演じるチビ坊主のテジョはショットガンを装備したキャラだけど、単にイシュマエルを銃撃で圧倒するのではなく、互いに密着してショットガンを掴み合ったままどのように立ち回るのかが見所になってます。ショットガンの銃身をカウンターとして叩きつけるだけでなく、ショットガンをぶっ放した時に銃身が後ろに飛ぶ反動を打撃として採用しているのが面白かった。劣勢になったイシュマエルが机の下を這いながら逃げ、それをテジョが机の上からショットガンで追い詰めていく様子は、間違いなく『ダイ・ハード』から影響を受けてるよね。
続けて突撃してくる、デカ坊主のタノ。雄叫びと強面の押しが強くて怖すぎるザック・リーとの対戦では、消化器や卓上電話機、タイプライターなどの身近ツールを鈍器としてぶつけまくる非常に危なっかしい立ち回りが特徴になってます。イコがザック・リーの膝を決める時、バトルもののアニメみたいなカメラワークで映像がギュイーンと動いて、イコの蹴りの溜めを強調しているのが印象的でしたね〜。
・イコ・ウワイスVSベリー・トリー・ユリスマン
解放的な自然の中で、凝縮的な動きの闘い。
© 2016 PT. Satu Indonesia Film
もっさい見た目な警棒の使い手であるベシを演じるベリー・トリー・ユリスマンは、『ザ・レイド GOKUDO』で凶暴なベースボール・バットマンを演じていた人で、イコとは2戦目の闘いになります。『ザ・レイド GOKUDO』ではまるで自分の体の一部であるかのように自由自在にバットを使いこなしていたユリスマンだが、本作での警棒の扱いもかなり手練れたもの。とにかく手数を!と言わんばかりに至近距離から連撃を繰り出し、スピードで相手にマウントを取らせない振り回しは思わず呆気に取られる。
長回しの中でのユリスマンの警棒の舐め回しには恐れ入るが、それ以上に目を奪われるのが応戦するイコの腕の動きだ。警棒が高速で叩きつけられるのを腕を振り回して防御している様子がスローモーションで流れるんだけど、これがまた凄いのなんの。挙動の一つ一つに長年培ってきた熟練の技が染み込んでいて、ただがむしゃらに腕を振り回しているだけなのにめちゃめちゃ画になってる! これはそんじゃそこらの素人が見よう見真似でやってみても絶対に再現ができないプロの領域。それを心ゆくまでに堪能できるスローのサービス。まさに芸術と呼ぶべき動きと演出だ!
イコがユリスマンの両膝を両肘で交互に崩す「膝崩し」も超かっこいいです。
・イコ・ウワイスVSジュリー・エステル
独特な動きで絡め取る絞技!
© 2016 PT. Satu Indonesia Film
こちらも『ザ・レイド GOKUDO』以来の再戦。ハンマーガールを演じていたジュリー・エステルが、本作ではナイフの使い手である紅一点リカとして登場する。『ザ・レイド GOKUDO』よりもサシでの絡み時間が長く見応えがあり、ナイフのポテンシャルを全面に活かしながら、イコの体のありとあらゆる部位をザシュっとやっていくのが強烈。特に油断したイコの右スネをナイフが一閃する痛恨の一撃があるんだけど、どうみてもナイフが肉だけでなく骨まで到達したくらい深い部分までえぐっているので、観ていて毎回イテーってなる。しかも闘ってる足元が海水なわけで、視覚的にも余計に痛い。傷口に塩とはまさにこのことだね笑 女性VS男性と言うことで、ジュリー・エステルがパワー的には不利な描写があるものの、それを補うかの如くしなやかなテクニックで応戦するのが他にはないポイントだ。
余談だけど、ここではイシュマエルが本気で殺そうとしておらず、事あるごとに「もうやめよう」を連発する。組織時代にこの2人は恋人関係だったのかな?
僕もジュリー・エステルに足で締められてみたい・・・。
・イコ・ウワイスVSサニー・パン
こんなに殺伐とした構え合いは観たことがない!
© 2016 PT. Satu Indonesia Film
本作のラスボス戦とだけあって、サニー・パン演じるリーは圧倒的な強さを誇るキャラクターで、とにかく手がつけられない凶暴な動きを見せる。虎拳のような構えでイコの腕に爪を立てて抉ったり、六王銃(ロクオウガン)みたいに両拳を突き出したりと、見た目にも漫画みたいな派手で挙動の大きい技が多い。サニー・パンはシンガポール出身の俳優で、ゆったりした独特のトーンで話す口調と優しそうな顔立ちが特徴のオッサンなだけに、本作での冷酷で物怖じしない佇まいがギャップを生み、アクションと演技の両方により一層恐ろしさを際立たせてました。実は俳優だけでなく武道家、アクション監督としての顔も持っているらしく、自分のスタントチームまで展開するほど器が大きく、それこそイコと似た境遇の人物じゃないか。なるほどそれであのアクションのレベルの高さってわけだ。
武器戦の色に負けないよう、構えだけで相手を殺そうとする殺気立った構えにらめっこも含めて、とにかく素手の技のインパクトで印象付けようと頑張っているラストバトルだけど、他のバトルシーンよりも間に挿入される会話が長く、ちょっとテンポが悪いかな〜。
喉輪されたイコが腕をシュババッて捌いて牽制するのが、イコらしい個性があって良かったです。
・日本がらみ
・プロレスラー後藤洋央紀の参戦
実は本作、日本の大手映画会社である日活が製作に名を連ねている。それが関係しているのか、どういうツテがあったかはよく分からんけど、作中に日本のプロレスラーである後藤洋央紀が出演してるんですよね。役柄はイコが演じるイシュマエルの過去の回想シーンに登場する日本人の殺し屋役。プロレスラーらしくどうやってイコと闘うのか・・・と期待してたけど、登場時間と画面の滞空時間が呆気なく短い笑 格闘らしいアクションも特にしておらず、イコに殺られる噛ませ犬役程度で、ゲスト出演と言った方が良い。本当はもっと格闘シーンを撮影したんだろうけど、かなりカットされちゃったんだろうな〜。まあ、そこまで重要なシーンでもないんでね。
■鑑定結果
一個体が強い中ボス〜ラスボスの連戦はバラエティに富んでいて、バトル漫画が好きな人の心に響きます!
■映画『ヘッド・ショット』はどんな人におすすめ?
・イコ・ウワイスのアクションを観たい人。
・『ザ・レイド』とは異なる趣のアクションが観たい人。
・バトル漫画が好きな人。
■最後に
本作の主演であるイコ・ウワイスの鑑定はコチラ☆
それでは今回の鑑定はここまで。
またお会いしましょう!
よろしければシェアをしていただけると嬉しいです!↓↓
コメント