【ネタバレ/感想/考察】『竜とそばかすの姫』の鑑定【歌は? ラストは? 美女と野獣がモチーフ?】

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(C)2021 スタジオ地図

 

Jing-Fu
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みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。

 

今回鑑定をするのは『竜とそばかすの姫』です。

『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』などでお馴染みの、細田守監督による最新アニメ作品です。

現実性と近未来性の両方を兼ね備えた仮想世界の「U」と現実を舞台に、過去の喪失感から抜け出せない少女の再生と愛情を描く、人間の成長がテーマとなっています。

それと同時に、世界で更なる普及を進めるインターネットの素晴らしさと危険性の両方を曝け出しているのも特徴でした。

そんな『竜とそばかすの姫』のネタバレを明かしながら、感想と考察を鑑定していきますね。

仮想世界で開催される歌唱シーンは圧巻の見応え!

 

■『竜とそばかすの姫』のあらすじと基本情報

まずは予告編をどうぞ☆

『竜とそばかすの姫』予告2【2021年7月16日(金)公開】

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■あらすじ

高知県の田舎に父親(役所広司)と共に住む女子高生のすず(中村佳穂)。すずは幼い頃に母親(島本須美)を事故で亡くして以来、そのショックから抜け出せずに大好きな歌も歌えなくなってしまっていた。ある日、数少ない友人のヒロちゃん(幾田りら)の勧めで、全世界で50億人以上が集うという超巨大インターネット空間の仮想世界「U」に出会ったすずは、「ベル」というアバターで参加する。現実世界での抑圧から解放されるUの中ですずは自由に歌うことができ、自らが作詞作曲した歌が次第に世界から注目されていくのだが・・・

 

 

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■英題:BELLE

■発掘国/制作年:日本(2021)

■上映時間:121分

■キャッチコピー:もう、ひとりじゃない。

■監督:細田守

■主要キャスト

すず/内藤鈴:中村佳穂

しのぶくん / 久武忍:成田凌

ヒロちゃん / 別役弘香:幾田りら

カミシン / 千頭慎次郎:染谷将太

ルカちゃん / 渡辺瑠果:玉城ティナ

すずの父:役所広司

すずの母:島本須美

ジャスティン:森川智之

竜:佐藤健

■『竜とそばかすの姫』のネタバレ感想と考察

①仮想世界と現実が織りなす、再生と愛情の物語

②Uと『サマーウォーズ』のオズの違い

③仮想世界の美女と野獣

④すずが歌えない理由と「そばかす」

⑤「現代人の行動力の乏しさ」と「行動に出ることの難しさ」

⑥すずの歌の再生と心情

⑦「U」は何を意味していたのか

それでは鑑定していきましょう!

 

ネタバレ①:仮想世界と現実が織りなす、再生と愛情の物語

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細田守と仮想世界と聞けば、誰しもが真っ先に『サマーウォーズ』を思い浮かべるはず。『サマーウォーズ』で描かれた仮想世界の魅力がこの上なく素晴らしかったので、何故また同じテーマを物語に選んだのか、『サマーウォーズ』の二番煎じになるんじゃないかと正直心配になっていた。何より前2作の『バケモノの子』『未来のミライ』が個人的に不発だったので・・・。

な〜んて偉そうなこと言いましたけど、観終わってからそれらが全くの杞憂であったことが分かりました! 『サマーウォーズ』よりもさらに現実味を帯び、そして更なる未来を先取りした、リアリティある魅力と危険に満ちた仮想世界と現実を交互に映して描かれる、喪失感に溺れる主人公すずの再生と愛情の成長譚。細田守監督が常に掲げる「人間の成長」の一貫性を感じるし、『サマーウォーズ』をはじめ過去作品とはまた別角度からのメッセージ性を吹き込む物語は非常に奥深くて考察のしがいがあった。話のテンポと展開も分かりやすく、ドラマとシリアスとギャグのバランス配分なんかも絶妙で、何より主人公の成長を周囲の人々との繋がりを交えて描く細田守監督鉄板の心の温かさが素晴らしく、過去作品の中でもかなり好きな作品になったかもしれない、それくらいの没入感に浸れた作品だった!

そして予告編でもウリになっていた、主人公のアバターのベルによる歌唱シーン。これがまた凄いのなんの! 現実世界のトラウマと抑圧から解放されたように力強く歌う歌唱力、メッセージ性の強さがエモーショナルに響く歌詞、何でも自由自在に表現することができる仮想世界ならではの圧巻のライブパフォーマンス。JPOPも洋楽もいまいち疎い管理人ながらも、ここは思わず見入ってしまうほどの美しさと迫力だった。主人公のすず並びにベルの声優を務めている中村佳穂は声優ではなく、実力派のシンガーソングライターなんだとか。なるほど、それであの息を飲むような歌唱力なのかと納得がいく。もちろん声優ではないので、劇中のセリフにはどこかぎこちなさもあったんだけど、それが逆に自分の殻に閉じこもるすずをリアルに表現できているとも思ったので、ニッチながらも的を得たキャスティングだと感心しました。

Jing-Fu
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ルカちゃんが吹奏楽の演奏中にカミシンを視界から外していたのは実は好意があったからとか、カミシンの写真の中にラストでキーポイントとなる双頭ビルが映り込んでいたりとか、イベントの大小問わず伏線とかも相変わらずしっかりしてて、物語が進むに連れてますます目が離せなくなるのも楽しい。

 

ネタバレ②:Uと『サマーウォーズ』のオズの違い

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仮想世界という共通の設定だからか、本作で登場するUには至る部分に『サマーウォーズ』のオズからのオマージュが見受けられた。細田守監督作品ならではのユーモアですね。

・導入部、Uとは何ぞやを説明する女性音声(水卜ちゃん!)によるチュートリアル
・アバターというシステム
・チュートリアルの中心アバターがウサギキャラ
・仮想世界を漂うクジラ
・コメント(吹き出し)の映り方

何より目で追えないほどの莫大なアバターが登場するので、この中に『サマーウォーズ』で登場したアバターが混じってるんだろうな〜と、ストーリーを追いつつ「ウォーリーを探せ」をやるかのように目を皿にして探してみたけど、1匹も見つかりませんでしたね〜笑 『おおかみこどもの雨と雪』でも同じようなことをやっていたので、細田守監督のことだからそれくらいの遊び心はあると思うんだけど、多分一回観てそれを判断するのは無理だな・・・。

Jing-Fu
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せめてキングカズマくらいは分かりやすくカメオ出演してくれると思ったのに笑

 

同じ仮想世界と言えど、『サマーウォーズ』のオズと本作のUは毛色がかなり異なっていたのも興味深い。『サマーウォーズ』のオズは、仮想世界の中にあらゆるエンタメが揃っているだけでなく、ショッピングや社会システムなどといった「インフラ」に特化したイメージが強かった。一方、本作のUではそういったインフラについての言及はほとんどなし。アバター作成のために本人の生態情報を読み取り、ボディーシェアリングなる機能で現実世界の人間たちが生活のために「利用する」のではなく、仮想世界の中に入り込んで「生活をする」という、仮想世界という図式がより色濃くなった印象だった。

Jing-Fu
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オズの世界登録者数が10億だったのに対し、Uの世界登録者は50億と5倍に増えており、この10年でネット社会がさらに普及して身近なものになっていることが伺えますね。

 

ネタバレ③:仮想世界の美女と野獣

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Uの中で織りなされるベルと竜のドラマは、びっくりするくらい『美女と野獣』だった。皆が振り向く美しい顔のベルと粗暴で醜い容姿の竜というポジションもそうだし、竜が潜んでいる廃れた城、「ここから出ていけ!!」と咆哮する竜、絢爛豪華な広間で流麗なダンスで親睦を深める2人など、オマージュというよりかはモチーフと言った方が正しい。実際に細田守監督は、本作において仮想世界における『美女と野獣』をやりたかったんだとか。「本当のあなたを見つける」というコンセプトも合致しているし、洒落た演出だなーと思った!

Jing-Fu
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最後に気付いたんだけど、すずのAsが「ベル」なのは、「ベル=鈴」だけじゃなくて『美女と野獣』にも掛かってたってことか笑

考察①:すずが歌えない理由と「そばかす」

冒頭、すずは通学路の橋の上でか細い喉を張りながら、必死に歌を歌い始めます。しかしすぐに激しく嘔吐してしまう。同級生とのカラオケでは歌を拒む様子もあり、彼女が歌を歌える状態ではないことが分かります。劇中、何故すずが現実世界では歌えないのか、具体的に触れられることはありませんでした。一瞬、何か重い病にでもかかっているのかと思いましたが、これには彼女の幼少期のトラウマが関係しているようです。すずの幼少期の回想シーンを観ていると、彼女と母親が本当に仲の良い親子関係にあったことが分かります。両親からスマホのピアノアプリを与えられて、すずが音楽の世界にハマりはじめ、歌や音楽が母親との思い出になっていたのは微笑ましい光景。それだけすずにとっては歌はイコール母親とも言うべき大切な幸せのツールであり、母を亡くして歌をも無くしてしまうほどショックだったんでしょう。重い病ではなかったものの、まあ、一種の心の病とも言えますかね。

母親を亡くしたことによって、すずは内向的な性格になってしまい、父親にも一方的な距離を置いてしまい、学校でも周囲の友人が恐ろしく見えて打ち解けることができなかったと、すず自らが語るシーンがありました。タイトルにもある通り、すずの顔にはそばかすがあります。幼少期からあったみたいです。彼女は母親を亡くして気落ちしていく中で、自然とそばかすを自らのコンプレックスとして認定してしまったんでしょう。冬の通学路にてマフラーで深めに顔を覆っていたのもその表れじゃないですかね。コンプレックスというとちょっと強く、そこまで彼女が人前で顔を出せないような仕草を見せる様子があったわけではないですが、このそばかすが「仮想世界においては魅力となっている=コンプレックスも味方によっては前向きに考えることができる」ことと、終盤に心の成長を見せた彼女が世界に顔を向けるために乗り越える「壁」として機能しているんだと思います。

すずが家で飼っている犬にも注目をしたい。この犬は右前足に怪我をしており、端が欠損していました。ここも劇中で特に触れられることはなかったですが、何故飼い犬にこんな設定がなされているのか。この犬はすずの幼少期の回想シーンに登場していないため、すずの母親が亡くなってから彼女の家に来たのだと推測できます。きっと足を怪我して傷ついた犬を見て、自身も心に傷を負っている身として同じ境遇を感じ、すずがどこからか保護してきたんでしょう。劇中では、すずの数少ない心を許せる存在になっていることからも明白です。

 

考察②:「現代人の行動力の乏しさ」と「行動に出ることの難しさ」

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劇中のUの世界で何よりも顕著に描かれているのが、ネット上のアンチ。どんなシーンやどんなキャラクターに対しても、それらを評価や絶賛、そして擁護をするコメントよりも、攻撃的なアンチコメントのセリフが圧倒的に多い。これはいかに現代のネット社会が危険で傲慢で自分勝手であるかの象徴。匿名社会であるネット上での責任を回避した誹謗中傷の実態を浮き彫りにした警鐘とも言える演出ですね。

そして同時に、ネット上で好きなようにコメントをする人間は、実際に現実の世界で行動を移すことがほとんどできないという「現代人の行動力の乏しさ」と「行動に出ることの難しさ」もテーマに含まれているようです。

終盤で竜のオリジンであることが判明した14歳の少年である恵(けい)。家庭内という柵の中で父親からDVを受ける恵は、「ネット上でどれだけ励まされたり心配されたりしても、誰も行動してくれない!」と怒りを露わにします。大体の人間は興味本位で画面越しに相手を覗き込み、偽善者ぶって見て見ぬふりをしている、そんな風に言われているように感じました。その後すずは、恵と弟の知(とも)を救うために単身遠く離れた東京に向かうわけですが、普通であれば実際にあったこともない人間のためにここまで行動に移すのは不可能に等しいのではないでしょうか。ネット上ではなんでも好きにできる(発言できる)からこそ、現実世界での行動力に麻痺が生じている傍観者たちへの注意喚起はもちろんですが、実は当事者である恵の方にもまた異なるメッセージが垣間見えます。恵はUの中で竜として、絶対的な強さを誇って暴れ回っていました。それは、彼が現実世界で父親によって抑圧されている怒りのパワーがUの中のASに反映されたため。つまり恵はネットの中でストレス発散をしていたことになり、彼もまた現実で行動に出ることができなかったのです。ただし、これは恵自身に問題があるというわけではなく、恵のような社会的弱者が、声を上げたり行動に出ることができない社会体制を問題視しているんですね。

ネット上のアンチどもは罵詈雑言や誹謗中傷を気兼ねなく世に発することができる。しかしそれは発言の場が匿名という立場に守られたネット上であるからということです。画面越し、トーク越しの人間に対しては虚勢を張ることができても実際に相手を前にすると怖気つく、そんな無様な姿を担っているのが恵の父親。2人の息子を武力で支配する彼は特にネットでアンチを行なっているわけではないですが、DVの現場を見ていたすずに対し、画面越しに威圧的な態度に出ます。しかしすずが恵の家を訪れて目の前で対峙すると、自分がえぐったすずの頬の血を見たこともあり(えぐるシーンが結構生々しくてイタタ。ガリッ!て感じ)、ビビって腰が引けていました。弱い犬ほどよく吠えるとはよく言ったもので、画面越しに威圧していた赤の他人が現実で介入してくると何にも行動ができない。ネット上で誹謗中傷をする奴なんて大体こんなもんでしょう、情けないですね。

 

考察③:すずの歌の再生と心情

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恵に自分がベルであることを伝えるために、彼女はUの中でベルとしてではなく、すず自身として歌う決断をします。母親の死をきっかけに現実世界で歌うことができなくなってしまった彼女が、何故歌うことができたのか。それはもちろん、すずとして歌うことが恵を救うための唯一の手段であるからなのですが、この時すずは何を想っていたんでしょうか。

彼女は苦境に立たされた恵たちを救いたい、その一心で歌っている中である重大なことに気が付いていました。それは、何故彼女の母親が亡くなることになったのかについてです。冒頭から、すずが長年その答えを導き出せないでいることが分かっていました。しかし危険が迫っている者を助けたいという気持ちが強く芽生え、同時にその感情こそが、川で見ず知らずの子供を救った時の母親の心境であったことに気付いたんですね。その優しさこそが、2人が親子であることを物語り、すずは当時の母親を理解することができました。そして彼女の心の中から溜まりに溜まった曇りが消えていき、恵たちのために行動に移すことができたんでしょう。

さらにすずは、母親が亡くなった後から周囲の人々によって母親代わりの愛情を知らず知らずの内に注がれていたことにも改めて気付きます。放心状態で川に落ちそうになっていたのを助けてくれたのは忍だったし、すずが所属(?)している合唱隊のご婦人たちが今まで気遣いではなく愛情を持って接していてくれたことも再認識していました(ご婦人たちについてはそれまで詳しい説明がなく、すずの母親も合唱隊に所属していて仲良しグループでもあったことがここで判明する)。母親の気持ちの理解と家族の温もり、ここでこれらを取り戻せたからこそ、すずは自分の中の殻を破ることができ、父親とも距離を縮めることができたんでしょうね〜。

 

考察④:「U」は何を意味していたのか

・「U」はもうひとつの現実
・「As」はもうひとりのあなた
・現実はやり直せない
・でも「U」ならやり直せる
・さあ、もうひとりのあなたを生きよう
・さあ、新しい人生を始めよう
・さあ、世界を変えよう

これは、本作で登場する仮想世界の「U」についての説明。冒頭ですず並びに観客に対してこの土台メッセージが流れるのは当然のことですが、エンドロールの前にもう一度この説明が登場しています。何故、意味深に2回も同じものが流れるのか? 実は物語の展開とすずの心情の変化を振り返ると、このメッセージは冒頭とラストで意味合いが異なっているのではないかと考えさせられました。

冒頭、すずがUの世界に足を踏み入れた時、彼女は現実世界では殻の中に閉じこもっている状態でした。「現実はやり直せない」「でも「U」ならやり直せる」これは言うまでもなく、すずの悲しい現実と直視したくないという気持ちと、仮想空間では何にも枷をかけられることも抑圧されることもなくもう一つの人生を贈ることができるという願望を代弁していますよね。「さあ、もうひとりのあなたを生きよう」「さあ、新しい人生を始めよう」「さあ、世界を変えよう」は、完全にすずの現実逃避を表現しています。

しかし、物語を経てすずは成長し、殻を破って守りたいと想う人を助けるための一歩を踏み出すことができました。ラストでのすずの在り方を踏まえると、ラストに流れるこのメッセージは、文章は同じながらも意味合いが変わっているような気がしました。

「現実はやり直せない」「でも「U」ならやり直せる」「さあ、もうひとりのあなたを生きよう」これはすずが悲しい現実を変えるためにUの中でそのきっかけを作ったこと。そして「さあ、新しい人生を始めよう」はその結果で、ベルを通して得た成長を頼りに現実での新しい人生を贈ることができるようになったこと。「さあ、世界を変えよう」はこれからのすずの明るい未来を指しているかのように聞こえる言葉でした。

「どこかで得た経験と知識によって、避けられない現実をどのように成長して生きていくことができるのか」という、細田守監督らしい「人間の成長」の哲学なんじゃないでしょうかね。

 

■鑑定結果

Jing-Fu
Jing-Fu

細田守監督らしいテーマ性を、近未来的な仮想世界とインターネットシステムを引用して伝える、非常に奥の深く温かい作品でした。

鑑定結果:エメラルド映画(☆8)

 

■映画『竜とそばかすの姫』はどんな人におすすめ?

 

・細田守監督の作品が好きな人

・圧巻の歌唱シーンを堪能したい人

・仮想世界の魅力と危険性のメッセージ性を読み取りたい人

 

■最後に

 

それでは今回の鑑定はここまで。

またお会いしましょう!

 

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