【ネタバレ/感想/考察】『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の鑑定【ラストの意味は?】

ラブロマンス
(C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

 

Jing-Fu
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みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。

 

今回鑑定をするのは『るろうに剣心 最終章 The Beginning』です。

実写版『るろ剣』シリーズの第5作目にして最後を飾る本作は、原作でいう『追憶編』がベースとなっており、佐藤健が演じる剣心が「不殺の誓い」を立てるまでの経緯、すなわち1作目よりも以前の出来事が描かれます。

これまでのシリーズが築いてきたスタイルから手の平を返した、異質的な作風も特徴。

そんな『るろうに剣心 最終章 The Beginning』のネタバレを明かしながら、感想と考察を鑑定していきますね。

十字傷と別れに込められた意味とは・・・?

 

■『るろうに剣心 最終章 The Beginning』のあらすじと基本情報

まずは予告編をどうぞ☆

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』本予告映像

(C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

 

■あらすじ

様々な人間の思惑と野望が入り乱れる、動乱の幕末。緋村剣心(佐藤健)は、倒幕派・長州藩のリーダーである桂小五郎(高橋一生)のもとで凄腕の暗殺者として暗躍し、幕府の要人たちを次々に斬り捨てていた。そのあまりの強さに、剣心はは最強の人斬りとして“緋村抜刀斎”という呼び名がつけられ、人々から恐れられていた。ある日、暗殺の現場で若く美しい女性の雪代巴(有村架純)と出会った剣心は、その場で気絶してしまった彼女を介抱するのだが・・・。

 

(C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

 

■発掘国/制作年:日本(2021)

■上映時間:137分

■キャッチコピー:これで終わる。ここから始まる。

■監督:大友 啓史

■アクション監督:谷垣健治

■主要キャスト

緋村剣心:佐藤健

雪代巴:有村架純

桂小五郎:高橋一生

沖田総司:村上虹郎

高杉晋作:安藤政信

辰巳:北村一輝

斎藤一:江口洋介

 

■『るろうに剣心 最終章 The Beginning』のネタバレ感想と考察

 

①シリーズ最終作にして異質作

②「死」が漂う斬撃アクション

③ラスト、十字傷と別れの意味は?

それでは鑑定していきましょう!

 

ネタバレ①:シリーズ最終作にして異質作

 

シリーズ初のラブロマンスは、波乱に満ちた儚さと切なさで彩られる

(C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

何故、剣心は人を斬らないと決めたのか。これまで語られなかった剣心のルーツに迫る本作は、最終作にして言わばエピソード0。第一印象は「めちゃめちゃ硬派な時代劇ラブストーリー」でした。過去シリーズも時代劇といえばそうなんだけど、髷や着物、鎖国時代ならではの西洋文化の未浸透具合が更に古風なイメージを生み出していた。そして過去シリーズのような華やかさやギャグシーンがほぼないと言ってもいい。これまで見慣れていたるろ剣ファミリーの不在、様々な人物の思惑と野望が入り乱れる幕末、人斬りとして暗躍しながら背徳感を抱く剣心の佇まいは、作品全体に想像以上に暗さと冷たさを浸透させており、シリーズの中では間違いなく、圧倒的な異質作。

混沌とした時代に翻弄された剣心と巴の恋劇は、なんとも儚くて、切なくて、ちょっぴり微笑ましくて、残酷で、悲しくて、そして美しい。様々な感情が働く2人の結びつきは本当にドラマチックで尊い。お互いに心の中で苦悩が続く苦しさ、互いの存在が心の在り方を変えていく暖かさから一転、明らかになる耐え難い真実と行き着いた運命。観客からすればこの2人の境遇と心境、そして最後に辿ることになる結末が分かっている以上、それらを知らないフリして観ることができず、2人の馴れ初めと別れを眺めているのが正直ツライ。でも、その愛と哀しみを経験したからこそ剣心の中で「不殺の誓い」への道筋が確立されたわけであり、これまでのシリーズ作品に繋がっていることを考えると、とても感慨深い思いで心が揺さぶられた。

Jing-Fu
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1作目の冒頭への繋げ方も完璧でした。

ネタバレ②:「死」が漂う斬撃アクション

 

佐藤健が『ザ・レイド』をする狂気のぶった斬りアクション

(C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

実写版『るろ剣』シリーズのアクションて、主人公の武器である逆刃刀が人を斬ることができない、斬撃ではなく打撃メインの武器であるために、それまで見慣れていたソードアクションに斬新性を生み出していたのが最大の特徴だったんですよね。相手に一太刀当てても死が発生せず、2打3打と高速打撃をぶちかましていくことによってアクションの中に唯一無二のドラマが生まれていた。でも本作の剣心は長州藩の志士として暗殺業を請け負っており、「不殺の誓い」を立てる前の境遇であるため、トレードマークであった逆刃刀は不在。つまり剣心は背徳感を負いながらも殺る気MAXで、手にした真剣でズバズバと敵対人物を斬り殺し、都度自分と相手の両方に「死」の可能性が発生してることになる。これはむしろソードアクションの基本に戻っているんだけど、今まで長らく逆刃刀の立ち回りを観続けてきているからこそ、このスタンダートさがかえって真新しく映る。最終作にしてここまで毛色の異なるアクション殺法が観れるとは思ってなかった。

剣心が斬撃を放つたびに血飛沫が上がり、彼が去った後には血の海と化している光景は完全に座頭市。相手が泣こうが喚こうがズバババっと刀を連鎖一閃させていく剣心からは、過去シリーズのような暖かさや抜け感は微塵も感じないし、やってることは『ザ・レイド GOKUDO』ヤヤン・ルヒアンと全く一緒なのでとにかくギャップの違いが恐ろしい。冒頭の殺戮シーンでは、手が使えない状態で相手の耳を噛みちぎり、口に刀を加えて蹴りとの併用で急所を突き、縛りが解除されると狂ったように周囲を滅多斬りにする凶暴性の強い殺陣になっていて、本作における剣心の心の在り方を印象付けることに成功している。超至近距離で刀を振るう佐藤健の動きも相変わらず凄まじく、一瞬で肉が断ち切られたり、刃が肉の間で擦れて進んでいるのが伝達される様子がなんとも痛々しかった。「ザン!」とか「ザシュッ!」とか、一転して耳障りの良い斬撃音も刀の鋭さが伝わってくるし、障子や畳み、灯籠にほとばしる血も効果的に使われていた。無駄に人体欠損や切り株表現が用いられているわけでないのに、目と耳の「直感」で「今スクリーンの中で巻き起こっている出来事は相当エゲツない」と感じさせる表現と演出力には恐れ入ったなぁ。

Jing-Fu
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ちなみに手を縛られた剣心がロロノア・ゾロのように刀を咥えるアイデアは谷垣さんたちアクション部の考案で、「この時代の剣心がやったら絶対かっこいい」とか「『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』の冒頭でドニーさんがナイフを咥えていてかっこよかったからいつかやりたいと思ってた」とか「ヒーローは何か咥えてるとかっこいい!」といった背景があったみたいですね。

 

ただし、過去シリーズと比べるとアクションの頻度は恐ろしく控えめ。また、ドリフト走りや空中旋回といったアクロバット術もほぼ皆無。管理人は剣心の真剣アクションの連続に期待を抱いて鑑賞したため、ここまでアクション味が薄いのはちょっと物足りなかった。だけどよくよく考えると、本作ってアクションに重点とエンタメ性を求める必要がないんですよね。物語の舞台はカオス絶頂期の江戸末期、加えて人斬り剣心の心も荒んでいる。そんなダークサイドな環境の中に娯楽性と高揚感が連続して顔を出すと、致命的に作品バランスが崩れてしまう。そういう意味でも、作品のテーマに背かなかった重々しいアクションを構築したのは素晴らしい選択だし、逆に観ているだけで作品のテーマと剣心の心境が伝わってくるアクションになっているのも流石だし、過去シリーズとはまた違う風味でドラマとアクションの両立に長けている仕上がりだと思った!

Jing-Fu
Jing-Fu

ただ、辰巳役の北村一輝のアクションというのはもう少し観てみたかった気がする。

 

考察①:十字傷に込められた思いとは?

消えゆく命の中で、手にしていた小太刀で剣心の頬に十字傷を刻む巴。これにはめちゃくちゃ複雑な感情が込められているように思える。普通は恋をした相手に傷を付けるなんてことはまずしない。しかし、どんなに慕おうとも剣心は巴の婚約者の命を奪ってしまった仇敵であり、その思いが未だに解消されていなかったことは彼女の日記からも読み取れる。仇を討つべき相手に恋をしてしまった、これが巴の苦悩と葛藤。婚約者が負わせた傷の上に新しい傷を作ったのは、やはりその憎しみの表れに間違いない。

さらに巴は剣心に十字傷を作りながら、「・・・・・、あなた。」と呟いて絶命する。「・・・・・」はボソボソっと口が動いているだけで、何を言ったのかは正確に読み取ることができない。「愛してます」か「さようなら」か「忘れないで」の中で迷った。さっきとは逆になるけど、巴は剣心のことを憎んでいるのと同時に愛し、未来に必要な存在であるとしまっているのも事実。最期に剣心の心臓を突き刺すこともできたはずなのに、傷を作ることだけに止まった。この傷には、剣心の身体に自分との想い出=愛を残す意味も込められていたんじゃないだろうか。こう考えると、「忘れないで」が一番しっくりくる。『The Final』で恵は剣心の十字傷について、「誰かの強い恨みが乗った傷はそう簡単には消えない」と言っていた。剣心の頬から十字傷が消えないのは、怨念と同じくらい強い、「忘れないで」という愛も込められているからだという答えに行き着いたんだけど、どうでしょうか。

Jing-Fu
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つまり、剣心に傷を付けることこそ、巴の全ての想いが成就する、複雑かつ最善の方法だったんだと思います。

 

考察②:剣心は何故あのように立ち去ったのか

自らの手で巴を殺めてしまい、雪の中で悲しい別れを遂げた剣心。共に暮らした家の中、布団の中で眠るような亡骸となっている巴に対し「行ってくるよ」と静かに呟く剣心は、その後家にハデに火を放ち、その場を立ち去った。愛した相手を弔うにしてはちょっと横暴にも思えた行為だけど、なんでこんな別れと立ち去り方をしたのか。まず巴の遺体を火葬するというのはもちろんだが、巴との思い出は自分の心と頬の傷の中だけに残すとする想い、過去の背徳を一旦ここで浄化して終着点にし、同時に新たな出発点とする意気込み、敵対人物に対して自分の足跡が割れないようにするための証拠隠滅・・・。などなど、剣心の様々な胸の内が垣間見えてきた。巴が十字傷を付けることによって全ての想いを成就させたのと同じく、剣心も家に火を放つことが全ての想いを成就できる唯一の方法だったんでしょう。また、ここで凄まじい勢いで燃えている炎は、剣心が未来のために掲げた意思の強さを物語っているかのようにも見えた。

Jing-Fu
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「行ってくるよ」と剣心が呟いた直後に、生前巴が生けて剣心に送っていた白い花がフレームインしてくるのは、愛した人を送り出す巴の静かな笑顔が思い浮かんでいるのを表したかのようですね。

 

■鑑定結果

 

Jing-Fu
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シリーズ最終作で剣心の全てのルーツに迫り、これまでに観たことがないほどの壮絶な葛藤と儚いラブストーリーを描く異色作。アクションは控えめですが、それ以上にストーリーが奥深く身に染みる。剣心の終着と起点を観た後にシリーズを1作目から観直すと、全てのピースがはまる!

鑑定結果:ミスリル映画(☆9)

 

■映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』はどんな人におすすめ?

 

・るろ剣シリーズを愛している人

・愛と哀しみ渦巻く時代劇ラブストーリーを観たい人

 

■最後に

これまでの実写版『るろうに剣心』シリーズの鑑定もしてます☆

 

『るろうに剣心』

 

『るろうに剣心 京都大火編』

 

『るろうに剣心 伝説の最後編』

 

『るろうに剣心 最終章 The Final』

 

 

それでは今回の鑑定はここまで。

またお会いしましょう!

 

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