ネタバレ/感想/考察『#生きている』の鑑定結果【韓国ゾンビが浮き彫りにする、現代テクノロジーを奪われた人間の弱さ】

ホラー
(C)2020 #Alive Netflix.All Rights Reserved.

 

Jing-Fu
Jing-Fu

みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。

 

今回鑑定をするのは『#生きている』です。

Netflixオリジナル作品である韓国ゾンビ映画です。

『新感染 ファイナルエクスプレス』以降、韓国のゾンビ映画の勢いが加速してますよね!

それでは早速鑑定していきましょう!

 

■作品情報

・基本情報

(C)2020 #Alive Netflix.All Rights Reserved.

■原題: #살아있다 /#Alive

■発掘国/制作年:韓国(2020)

■キャッチコピー

生き残れ

・監督、キャスト

■監督:チョ・イルヒョン

 

■主要キャスト

オ・ジュヌ:ユ・アイン

キム・ユビン:パク・シネ

・あらすじ

集合住宅に住むゲーム好きの青年ジュヌ(ユ・アイン)は、朝の好きな時間にのんびりと起床し、いつも通りお気に入りのオンラインゲームに熱中していた。その傍ら、机の上に残された書き置きを見て、母親が外出していることに気付く。すぐにゲームを再開させるジュヌだったが、テレビに流れるニュース速報を目にして、外の異変を察知する。ソウル江北区から広がった謎のウィルスによって人々が凶暴化しているらしく、建物の外は大パニックになっていた。ジュヌが慌てて外の様子を見ようと玄関のドアを開けた瞬間、息を切らせた隣人の男が部屋に入ってきたのだが、、、。

■ざくっと感想

Jing-Fu
Jing-Fu

本作の鑑定結果は、、、

鑑定結果:プラチナ映画(☆6)!!

突如として韓国全域で発生した謎のゾンビパンデミックの最中、集合住宅の自室に取り残された1人の青年の籠城生活と生への歩みが描かれる韓国発掘のゾンビ映画です。自宅の中という限定空間が基本的なステージということもあり、シチュエーション的な雰囲気はイタリア産のエレベーター内籠城ゾンビ映画『デスフロア』と似通った匂いを感じた。『#生きている』というストレートな日本語による邦題の響きがいまいち弱いけど、原題ママの意味だし、物語の本質を正確にとらえているので下手に盛るよりは好印象で良いね。

ゾンビ映画としては可もなく不可もなくと言ったところか、比較的マイルドな仕上がりでグロさも控えめ。その中でも本作は「孤独になった人間の脆さ」「生きていることに対する喜びの噛みしめ」に重きが置かれており、人間が1人では生きていけないことを対比的に教えてくれる。作中に様々な現代テクノロジーが登場するのがいかにも近年の韓国映画らしいスタイルだが、そんなハイテク文化を奪われた現代人がどれほど弱いのかが描かれているのも興味深い。

同じ韓国産として世界中の視線を釘付けにした『新感染 ファイナルエクスプレス』ほどのインパクトはないものの、ゾンビ騒動を通して、現代人が忘れかけている「人と人との繋がり」の大切さを改めて思い起こさせてくれる作品です。

 

以下、ネタバレありの感想と考察になります。

作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!


 

 

 

 

 

 

 

 

■感想と考察

・ゾンビよりも怖い「孤独」

人間は1人じゃ生きていけません。

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物語の舞台は、どこかの巨大なショッピングモールでもなければ高速で前進を続ける列車の中でもなく、とある集合住宅が密集する中の1室。そこは主人公ジュヌが暮らす家だ。多くの人々がこの世で最も安住の地であると掲げるであろう「自宅」を舞台の中心とした本作は、住み慣れた聖域の外が見る見るうちにゾンビで侵食されていくという設定にリアリティが効いており、頭の中で誰しもが自分を主人公の立場に位置づけしやすい。普段通りの朝を迎えたはずが、一瞬で周辺の環境が一変し、昨日まで当たり前であった生活が崩壊するという、ゾンビ映画としては比較的素朴なシチュエーションじゃないだろうか。

外の情報がまともに入ってこない中で、自分以外は全員ゾンビになってしまったのか疑心暗鬼に怯え、資源や備蓄品が徐々になくなっていく焦燥感。ジュヌがこの状況に辟易し、自暴自棄になり、徐々に精神を追い詰められていく様子に重きが置かれていて、じわじわとしたホラーをもたらす。そういったゾンビによる直接的な恐怖よりも、孤独」こそが人間が生きるにあたって最も大きい障害として演出されているのが巧みでした。孤独がどれだけ強烈に人間の心を破壊してしまうのかは、同じゾンビ映画の『アイ・アム・レジェンド』ウィル・スミスが見せたズタボロの演技でも立証済みだった。だからこそ、ジュヌが他の生存者と遭遇した時に見せる安堵感、飢えを満たしてくれる飲食物を口にした際の自然な幸福感がよく光っていて、「人間が命を感じている瞬間」の見せ方が華はないながらも上手い。やっぱり、人が生きるうえで心の支えになっているのは人なんだなと、金八先生の名言に通ずるかもしれない考え方が頭をよぎったのだった。

Jing-Fu
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管理人は基本寂しがり屋なので、劇中のジュヌには余計に感情移入をしてしまいました。

 

・形成されつつある韓国ゾンビスタイル

『新感染』くさいゾンビたち。

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肝心のゾンビは、『新感染』と同様のスタッフがいるのか、はたまた『新感染』の影響が強すぎたのかは知らないけど、びっくりするほど『新感染』のゾンビたちだった。「暗闇では行動が鈍くなる」といった特性はないものの、表情や仕草、鳴き声に疾走する姿など、まるで『新感染』のパラレルワールド的ポジションの作品なのかと錯覚するほどに。いや、案外この物語は『新感染』のストーリーと並行して描かれている、まったくもって同軸の世界で起こっている出来事なんじゃないか、まさか『新感染 外伝』なのか!!?と深読みもしてみたけど、感染の発生源がバイオ団地とソウル江北区とそれぞれ異なっているため、そんなことはなさそう。『新感染』『新感染』と連呼ばっかり出してすみません。ああ『新感染』。Netflixドラマの『キングダム』のゾンビもよく似ていたので、『新感染』から始まった韓国ゾンビブームのスタイルが、今後この形で定着していくのかが見ものだ。

前述した通り、ゾンビの恐ろしさよりも孤独になることへの恐怖にフォーカスがいっていることもあり、ゾンビパニックものとしては特筆すべきポイントが羅列できるほどあるわけではない。ただその中でも、一匹のゾンビが上階から垂れ下がったロープをよじ登るという知的な行動を見せ、ジュヌの妨害を屁ともせずに彼に向かってゾンビドヤ顔を向けるシーンは中々面白かった。

あと、劇中で生きている人間がゾンビを想って他人をエサに仕向けている様子は、今までにあんまり観たことがなくて驚いたなあ。管理人は古今東西のゾンビ映画を網羅したようなフリークではないので偉そうなことは言えませんが、廃れた人間たちが娯楽でゾンビと生存者を対決させたりエサにするシチュエーションをよく見かける中で、「ゾンビになった妻が飢え死にしないように」と泣く泣く他人を犠牲に強いる夫の奇行が、おぞましくもどこか哀愁の漂う特殊なシーンでした。ああ、でも『バイオハザード2 アポカリプス』の教会のシーンで、さりげなくそんなことしてるジジイがいたようないなかったような、、、。『バイオハザード』と言えば、ゾンビウィルスが人体の中を巡っていく様子を表現した本作のオープニングクレジットからは、PS2ソフト『バイオハザード アウトブレイク』からの影響を少なからず感じたかな。

・浮き彫りになる現代人の弱さ

ああ、またバカなYoutuberが緊急時にも関わらず自撮りしてる。そう呆れていたけど実はこのシーン、、、

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様々な現代テクノロジーや文化が劇中に取り入れられているのは、もはや昨今の韓国映画では見慣れた光景。ジュヌは自室にパソコンなどの機器を完備させたゲーマーだし、ゾンビ渦中を突破するためにタブレットやドローンを活用するなど、韓国ならではの味が本作でも色濃い。しかも面白いことに、本作ではそれら利便性の高い日常品が全く機能しなくなるという、現代人が慣れ親しんでいる現代文化の弱点を突いていたりもする。ゾンビパンデミックによって社会インフラが止まってしまった状況では、水道や電気など、普段湯水を浴びるように使っている資源は完全に枯渇してしまうのは序の口。現代人必須のアイテム、スマホを使おうとするにも通信網が死んでいるため、電波が届かずに意味をなさない。緊急災害情報をFM周波数を通して傍受するためにアンテナ代わりになるプラグを部屋の中で探すが、見つかるのはワイヤレス製品ばかりで、身の回りに溢れる便利製品がいざというときに仇となる痛恨の一撃。もはや人生の一部ともなったあらゆる現代アイテムを奪われた人間が、ろくに何もできないという皮肉が浮き彫りにされているのが、現代人としてたまらなくもどかしい。

物語の中盤、別の部屋で手に入れたトランシーバーを使って離れたユビンと会話を始めるのにも深い意味を感じる。携帯電話の原型とも言える、同時には会話のできないトランシーバーを不慣れながらも手に取って話を進めるジュヌたちのやり取り。一言一言の言葉を噛みしめるジュヌたちの表情からは、今や離れた場所からも指先1つで簡単にできすぎる「会話」の重みが切に伝わってくる。本来遠く離れた人と話すということは、現代人が考えているよりも遥かに銘肝なことなのかもしれない。

一方で現代文化の全てがマイナスイメージに繋がっている訳でもない、序盤でジュヌがタイトルにも繋がる「#生き残らねば」とSNSで発していたことが、インフラが寸断された街の至る所で多くの人々の生きる希望を繋いでいたというオチがラストに用意されており、現代文化ならではの強みもちゃんとフォローされていたので良かった。

物語の開始直後には、ジュヌの家にゾンビから逃れるために猪突猛進で1人の男が飛び込んでくるのだが、ジュヌは彼がすぐ隣の部屋に住む隣人であることを知らない(映画を観ている観客に対してはそのエビデンスはないので、本当に隣人なのかは確かに不明だが)。何気なく流れるシーンだけど、これもオンライン上でのやり取りにすっかり慣れてしまい、本来あるべき人と人との繋がりを忘れかけてしまった現代人への警鐘ではないだろうか。

■日本がらみ

・今回、特に日本がらみの要素は見つかりませんでした。

 

■鑑定結果

Jing-Fu
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ゾンビ映画としては特筆すべきインパクトはないものの、現代文化の弱点を突いた演出が他にはない味となっており、現代人としての在り方を考えさせられました。

鑑定結果:プラチナ映画(☆6)

 

となります!!

 

 

 

それでは今回の鑑定はここまで。

またお会いしましょう!

 

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