みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。
今回鑑定をするのは『アオラレ』です。
煽った相手がイカれたラッセル・クロウだった!?
1回のクラクションから始まった恐怖の煽り運転返しに翻弄される主人公を描くスリラー作品です。
そんな『アオラレ』のネタバレを明かしながら、感想と考察を鑑定していきますね。
ラストまで続く究極の煽り返し、ハンパじゃないって!!!
目次
■『アオラレ』のあらすじと基本情報
まずは予告編をどうぞ☆
■あらすじ
プライベートに様々なストレス問題を抱えながら、15歳の息子のカイル(ガブリエル・ベイトマン)と暮らすレイチェル(カレン・ピストリアス)。ある日カイルを学校へ送るためにレイチェルが車を走らせていたところ、青信号になっても動かないトラックの後ろについてしまう。痺れを切らしたレイチェルはクラクションを鳴らしてトラックを追い抜かす。しかし直後、信号で止まっていたレイチェルの車の横に先程のトラックが近づき、中から中年の男(ラッセル・クロウ)が話しかけてきて・・・。
(C)2021 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
■原題:Unhinged
■発掘国/制作年:アメリカ(2002)
■上映時間:90分
■キャッチコピー:これが、あおり運転の最終形態。
■監督:デリック・ボルテ
■主要キャスト
男:ラッセル・クロウ
レイチェル:カレン・ピストリアス
カイル:ガブリエル・ベイトマン
アンディ:ジミ・シンプソン
フレッド:オースティン・P・マッケンジー
メアリー:ジュリエンヌ・ジョイナー
■『アオラレ』のネタバレ感想と考察
それでは鑑定していきましょう!
ネタバレ①:明日は我が身、地獄の煽り運転返し!
後ろから迫るトラック。金箔の煽り運転攻撃!
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昨今の日本でも大きな社会問題となっている「煽り運転」。数年前と比べるとドライブレコーダーは格段に普及しており、その醜態がSNSに晒されれば社会的立場を失うことは確実。にもかかわらず、未だに定期的にニュース番組でバカな煽り運転動画を見かけるもんだから、まだまだ解決には程遠いんだろうな〜。
本作の物語は、そんな煽り運転がテーマとなって始まる。青信号になっても全く動かない車に対してクラクションを放つという何気ない行為が引き金となり、サイコパスのターゲットになって地獄の煽り返しに遭うというリアリティが恐ろしい。だっているもん、こういう変態。決して映画の中のフィクションではなく、車を運転していれば誰しもが主人公のレイチェルになりかねない、「明日は我が身」な生々しい恐怖というわけだ。交通量の多い白昼の道路で繰り広げられる煽りデッドヒートとカーチェイスは、観ていて思わずアドレナリンが放出されるほどの緊迫感に仕上がっており、下手なカーアクション映画よりもスリリングな見応えがあった。レイチェルの車がセミポンコツカーで、サイコパスの車が重厚感タップリのフォード F-250ということもあり、車間が縮まり車体がぶつかる度にヒヤヒヤを加速させる設定と見せ方も上手い。
煽り運転がテーマになっている映画といえば、スティーブン・スピルバーグ監督の監督デビュー作にして名作の『激突!』が真っ先に思い浮かぶけど、それとはまた毛色が異なる作風になっているのも特徴だ。実は煽り運転の恐怖と言うよりかは、煽り運転を平気で行うサイコパスの狂気こそが本作の真髄。煽りカーチェイスによる破壊と焦燥よりも、サイコパスがレイチェルのスマホを盗んでプライベートを手中に収めたことによる心理攻撃、暴力、殺人を行うイカれ描写の方が割合が多いのよね。煽り運転返しから始まる一連の凶行は、主人公のレイチェルにとって最後まで事態が何一つ好転せず、終始精神をすり減らしていくかのような居心地の悪さが居た堪れない。そしてその気持ち悪さは様々な角度から支援を受けている。主人公レイチェルの実態もばつが悪く、素朴な美しさを持つ人妻だが、離婚問題、母と弟との間に抱える問題、子供とのぎこちない距離、時間へのルーズさ、そして失職と、冒頭から疲れとストレス全開の人生を送っていることが分かる。つまり最初から画面を支配する空気が重い。それに加えて作中の天候は雨上がりの淀んだ曇り空。不快感を煽る工夫の数々が単純ながらも手堅いというわけだ。
主人公への感情移入型サイコパスムービーとしてはよく練られている方なんじゃないかと思う。
ネタバレ②:怖すぎラッセル・クロウ
バックミラー越しに見えたら最恐な光景。
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『アメリカン・ギャングスター』や『レ・ミゼラブル』などで知られ、『グラディエーター』でアカデミー主演男優賞を受賞したこともある名優ラッセル・クロウが、煽り運転以上の狂気を見せるサイコパスを怪演していた。本作は『イコライザー』や『ジョン・ウィック』など、いわゆる「ナメてた相手が殺人マシーンだった映画」の一環であり、大物俳優に表裏ギャップの大きいシリアスキャラクターを演じさせる同シリーズはほとんどハズレがない。最近で言うと、個人的にはジャッキー・チェンの『ザ・フォーリナー 復讐者』が素晴らしかったな。
さて、そんな界隈に次に足を踏み入れたのがアカデミー俳優のラッセル・クロウ。これがね、めちゃくちゃ怖い。精神を病んでおり、無精髭を汚らしく伸ばし、終始臭いそうな脂汗を滲ませ、だらしないビールっ腹デブで、目を剥いて「礼儀ってもんを教えてやるぜ〜」と煽りを入れてくるラッセル・クロウはマジでやばい。隠密心を微塵も匂わせず、白昼堂々と周囲の人目も憚らずに大胆不敵な鬼畜っぷりを連発させ、警察と道徳を頼りにするこちらの「あわよくば助かるかもしれない」と言う僅かな希望を真っ向から否定してくる悪道非道っぷりよ。しかもかなりのデブな巨躯なので、スクリーン越しにもこちらに迫ってくる圧が強すぎる。いざ実戦となると、そこそこ鍛えている奴よりもこういう体幹MAXの巨漢の方が厄介なのは間違いなく、「敵わないかもしれない」リアリティな絶望感は格別。日本人からすれば元グリーンベレーや元殺人マシーンよりも「頭のおかしいデブ」の方が近しい存在なわけで、現実味があってより寒気が走るよね。
プライドが高そうなラッセル・クロウ本人にとっては不本意かもしれないけど、彼のサイコパスっぷりはスパークしてた。
劇中で自ら「トム・クーパーだ」と名乗っているが、エンドクレジットを確認すると役柄が「Man(男)」となっており、トム・クーパーは偽名である可能性もある。これはこれでサイコパスのセオリーっぽくてほんのり怖い。しかし本作でラッセル・クロウが演じるサイコパスはには素性が一切わからないと言う「理不尽な恐怖」は設定されておらず、むしろ彼のバックストーリーも非常に哀愁が漂うものになっていた。家庭も仕事もプライベートも何一つ上手くいっておらず、精神安定剤を飲みながら素直に怒りをぶつけまくるサイコパス。つまり彼は最初からサイコパスだったわけではなく、彼もストレス社会が生んだ申し子であり、誰しも彼になり得る恐ろしさがあるのだ。結婚指輪を投げ捨て、だらしない容姿をキープし、「俺の最終手段は暴力だけだッ!」とブチギレる。失うものがない捨身スタイルだからこそ、周囲の目線を気にしない凶行への説明がつく。
ネタバレ③:ラストの結末は?
牛肉がめちゃ美味しい昼のダイナーで暴れるサイコ・クロウ
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母親の移住と住宅街の地形、フレッドとカイルのゲーム計画、スマホのパスワード未設定、そしてハサミ(キャンディ棒切りハサミだっけ?)。実は序盤の何気ない会話やいきさつにラストへの伏線がたっぷりと詰め込まれており、サイコパスとの最終バトルに向けてそれらが順次回収されていく面白さは中々巧みだった。ラストはレイチェルが息子のカイルの危機を前にジョン・マクレーン化して、「これがアンタへの礼儀よッ!!」と、ツララではなくハサミを左目に突き刺す。そしてそこに強烈な蹴りを入れてハサミを押し込むオーバーキルでフィニッシュ。恐らくサイコパスから受けた仕打ちに、多分それまでのプライベートストレスを全て上乗せしたんだろう 笑
その後、車で帰路につくレイチェルとカイル。ここでレイチェルがまた目の前の迷惑車にクラクションを鳴らしてしまい、スモークガラスが降りた向こうからカメオ出演のジャイモン・フンスーあたりがニタ〜っと笑って幕を閉じるバッドエンド・・・だと得意げに読んでたんだけど、正反対でしたね 笑 案の定、信号無視で突っ込んできた車に対してクラクションを鳴らしかけるレイチェルなんだけど、咄嗟に堪えて我慢、「それでいいよ」とカイルに言われて微笑み、何事もなく事なきを得る綺麗な終わり方だった。
これはつまり、ストレス社会の中でも時には我慢が必要、だとでも言いたいのだろうか。特に日本を含める現実ストレス社会で生きる人間にとってこれ以上我慢を強いるのは酷な話だ。確かに一線を超えた行為に踏み込むと、本作のサイコパス側に陥ってしまうだろうが、レイチェルが起こした範囲の行動であれば、ほとんど誰でもやってしまうのではないだろうか。それを含めて、冒頭からありとあらゆるストレスニュースが流れる本作は、ストレスで蔓延する現代人の生きづらさを物語っているのかもしれない。
■鑑定結果
ストレス社会が生み出した最凶のサイコパスによる鬼畜スリラー。ここまで情け容赦がないと、かえって爽快感さえ覚えてしまうほど、恐ろしいサイコ劇を観ることができます。
■映画『アオラレ』はどんな人におすすめ?
・煽り運転の恐ろしさを体感したい人
・ナメてた相手が実は〜、な映画が好きな人
・ラッセル・クロウのサイコパス演技を見たい人
■最後に
それでは今回の鑑定はここまで。
またお会いしましょう!
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