ネタバレ/感想/考察『ポセイドン』の鑑定結果【パニックムービーの金字塔を迫力満点にリメイク】

パニック
(C)2006 Warner Bros. Entertainment Inc.

 

Jing-Fu
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みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。

 

今回鑑定をするのは『ポセイドン』です。

津波によって転覆した豪華客船の中から脱出しようともがく生存者たちを描いた、パニックサバイバル作品。

それでは早速鑑定していきましょう!

■作品情報

・基本情報

(C)2006 Warner Bros. Entertainment Inc.

■原題:Poseidon

■発掘国/制作年:アメリカ(2006)

■キャッチコピー

その瞬間、運命もさかさまに転覆し始める。

 

・監督、キャスト

■監督:ウォルフガング・ペーターゼン

 

■主要キャスト

ディラン:ジョシュ・ルーカス

ラムジー:カート・ラッセル

マギー:ジャシンダ・バレット

ジェニファー:エミー・ロッサム

ネルソン:リチャード・ドレイファス

クリス:マイク・ヴォーゲル

エレナ:ミア・マエストロ

ラッキー・ラリー:ケビン・ディロン

コナー:ジミー・ベネット

バレンタイン:フレディ・ロドリゲス

ブラッドフォード船長:アンドレ・ブラウアー

グロリア:ファーギー(歌手)

・あらすじ

乗客4000人を乗せた超豪華客船のポセイドン号は、大晦日の夜の海を航海していた。船内では年末年始を祝う豪華なパーティーが開かれ、観客たちは盛大に盛り上がっていた。しかし新年に突入した直後、突如として現れた巨大な津波の直撃によってポセイドン号は転覆、船底を上にしてひっくり返った状態でかろうじて浮いている状態になってしまった。大パニックになる船内で、船長のブラッドフォード(アンドレ・ブラウアー)は救助が来るまで船内に留まるべきだと主張をする。しかしプロのギャンブラーであるディラン(ジョシュ・ルーカス)は船外への脱出を決めていた。娘を探す元NY市長のラムジー(カート・ラッセル)、マギー(ジャシンダ・バレット)とコナー(ジミー・ベネット)親子、自殺を決意していた初老のネルソン(リチャード・ドレイファス)、船内ウェイターのバレンタイン(フレディ・ロドリゲス)を加えたメンバーは、船からの脱出のために船底を目指すのだが・・・。

■ざくっと感想

Jing-Fu
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本作の鑑定結果は、、、

鑑定結果ダイヤモンド映画(☆7)!!

ポール・ギャリコ原作のパニック大作の金字塔『ポセイドン・アドベンチャー』を、現代の解釈でリメイクして製作されたのが本作。所々に原作からのオマージュを感じる要素があるけど、船が転覆してそこから脱出するという基本プロットを除いて、登場人物や物語の設定は一新されている。1972年の時点では技術上の限界で映像化不可能だった沈みゆく船内のパニック描写を、最新鋭のCGと大規模なセットによって迫力満点に描くことに成功。災害パニックものとしては間違いなく一級品の面白さを誇る作品に仕上がっています。

『ハルク』『フォードVSフェラーリ』ジョシュ・ルーカス『バックドラフト』『デッドフォール』カート・ラッセルによるW主演をはじめ、当時ハリウッドでときめいていたエロカワ女優のエミー・ロッサム『ジョーズ』の大御所リチャード・ドレイファスなどのなかなか豪華な出演陣が集結。表現力豊かなキャストによる必死に体を張ったパニック演技が、サバイバル劇により一層の緊張感をもたらしています。

惜しむらくは、パニックとアクションに特化した分、原作の魅力要素の1つであった「深堀されたキャラ設定」と「人間関係」のドラマ部分が薄れてしまったことですかね。

 

以下、ネタバレありの感想と考察になります。

作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!


 

 

 

 

 

 

 

 

■感想

・目を見張る転覆シーン

船が津波に飲み込まれるシーンの圧倒的スペクタクル!

(C)2006 Warner Bros. Entertainment Inc.

本作の最大の見せ場と言っても過言ではない、冒頭で惨劇の元凶となるポセイドン号の転覆シーン。ローグウェーブと呼ばれる異常規模の大津波が船体の側面を叩きつける様子は、原作においてもミニチュアと実際に俳優たちを傾いていくセットの中で転がすという手法で衝撃的に描かれていた。しかし原作の誕生から30年以上たった映像技術はレベルが飛躍しすぎていた。まるで本物の客船が波に飲み込まれていく様子を収めたかのような臨場感、波の一滴一滴が船体を叩きつけて飛び散る綿密さ、船体が傾いていくにつれて中の人間やあらゆる物が猛烈にシャッフルされていく阿鼻叫喚の大災。どれをとっても迫力と言う点ではリメイクである本作の方が桁違いに凄まじい。原作ではせいぜいパーティホールと操舵室の様子しか描かれていなかったが、本作では他にもディスコ、エレベーターホール、調理上、機関室、プールなど、船内におけるあらゆる場所でのひっくり返りを観ることができて恐ろしいほどの見晴らしのよさ。単に船が横倒しになるのではなく、波の威力が強すぎて船体が海中でほぼ一回転してしまい、そこからまた戻って逆さまになるという豪快なひと時を描いた名シーンは、タイタニック号も真っ青になるほどのクオリティだった。

津波による船体の傾きや水攻めだけではなく、フラッシュ火災やガス爆発、感電といった2次災害の様子にまでも目を配っているので、想像以上にパニックものとしての色は濃い。好きな人にはたまらんはず。

・恐怖と迫力の増したパニック・サバイバル

エレベーターシャフト内のパニックはめちゃくちゃ怖い。

(C)2006 Warner Bros. Entertainment Inc.

脱出メンバーの前に立ちふさがる障害の数々は、原作よりもさらにバリエーションがアップしていてかなり見応えがあった。爆炎火柱が猛威を振るう綱渡り、閉所特有の精神攻撃を受けるシャフト内、息も詰まる長時間の水中移動、船体の傾きによって発生する事故レベルの水流。原作では割と淡白な印象を受けたパニックシーンも、凄みのあるBGMと鬼気迫るアクション演出によってかなりダイ・ハード仕様に生まれ変わっており、手に汗握る展開がずっと続く。流石は『ネバ―エンディングストーリー』『エアフォースワン』など、あらゆる時代で手堅い映像表現とアクション演出を構築できるウォルフガング・ペーターゼン監督の手腕と言ったところか。

障害の先鋒として立ちふさがるエレベーターシャフトでのパニックアクションが一番好き。原作でエイカーズが落下死するシャフト内のオマージュシーンと思われるが、底が見えないほどの暗い穴の上に不安定なテーブルの橋をかけて渡る高所恐怖症泣かせ、更に上からじわりじわりと迫りくるエレベーターの焦燥感と、原作よりも萎縮震慄の恐ろしさが格段にアップしてます。

ラストの船底からの脱出シーンを、プロペラを爆破して海中に飛び込み、倒れる船から逃げるというハイライトらしいダイナミックなアクションシーンに改造したのも強烈だった。原作では船底にたどり着き、外から船底の一部を焼き切ってもらって青空の下に脱出、救助ヘリに乗り込んでハイチャラバ~イとなんとも味気のない幕引きだったけど、進化した映像技術によって痒いところに手を届かせた緊張感の持続はベスト演出だった。

Jing-Fu
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上下が反転した美術泣かせの船内のセットも、流石は原作以上に作り込まれていてすごいです。

・寒さで凍えながら奮闘するキャストたち

(C)2006 Warner Bros. Entertainment Inc.

アクションスターであるカート・ラッセルを始め、キャストたちは実際に体を張ってパニック演技をしているので本物の迫力を伺うことができる。もちろんスタントマンを使ってる場面もあるだろうけど、カメラに顔を見せながら長時間水中で息を止めたり泳いで進んだりと、極力誤魔化しを使わず原作の精神をちゃんと引き継いで撮影をしているのが素晴らしい。撮影当時還暦手前のリチャード・ドレイファスまでも必死にジジイクロールをして頑張っていたし、アクションスターとはいえカート・ラッセルも50半ばだったので相当しんどかっただろうな。ラムジーが溺死するシーンは、水中で肺の空気がなくなってどんどん水を飲み込んでいっているマジの事故にしか見えない、カート・ラッセルによる迫真の演技は観ていて怖いくらいだった。

・人間臭さの薄れたドラマ

CGと進化した特撮技術によってパニック・アクションの表情はこの上なく向上していたが、原作ほどの人間ドラマを観ることができなかったのは残念。原作では生存者の一人一人に奥深い設定がなされていたし、脱出劇の中で巻き起こる生存者同士のいがみ合い、衝突、理解、信頼といった起伏のあるストーリーが魅力の1つであったことは間違いない。本作でも各キャラにバックストーリーはあるものの、原作ほどの深堀は見受けられなかったし、脱出劇もほとんどが協力と手の取り合いに限られ、いがみ合いなどといった負の要素はほぼなし。

原作のスコット牧師に位置するディランの脱出に対する動機にまず難がある。牧師ながらも既存のキリスト教の価値観を古いとみなす異端児で、その行動的な性格で生存者を導くリーダーとなったのがスコット牧師。だが本作のディランは元海兵隊という前置きがあるものの、「プロギャンブラーの勘が働いて船内に留まることを選ばなかった」という素っ気ない動機で動き出すので、言い出しっぺで必然的にリーダーとなるものの、皆を救いたいという救済精神がなかったのだ。だから当然、脱出の過程で仲間を思いやる様子があっても、最初に「一人の方がいい」と強めに行ってしまっていることもあり、原作ほどの人間臭さと重みを感じることができませんでした。

原作のロゴのポジションにあたるラムジーには、元消防士の前NY市長という経歴があるので、どちらかと言えば思いやりがある分こちらがスコット牧師なのかもしれないけど、脱出の立案者ではないので悩ましい。ラムジーと娘のジェニファー、その彼氏のクリスとの確執と受け入れはそこそこドラマチックだったけど、ありがちな展開で真新しさはない。

Jing-Fu
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にしても元消防士のカート・ラッセルって、絶対に『バックドラフト』を意識してるでしょ 笑

・監督のセクハラ疑惑

シャフト内での移動シーンを観ていて物凄く気になるのが、ことあるごとにエミー・ロッサムの豊満な胸の谷間がクローズアップされること。もちろん男性陣としては眼福この上ない癒しの時間なんだけど、必要性がないのに明らかに狙ってカメラに収まった瞬間を確信犯的編集しているため、かなり不自然に感じる。

Jing-Fu
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これはたぶんウォルフガング・ペーターゼン監督のセクハラ編集なので、エミー・ロッサムはキレてもいいと思います。

 

■考察

・何故ネルソンは生き残ったのか

生存者の中の問題児ネルソン。溺れるエレナに気付いた以外何一つ見せ場がなく、常に脱出メンバーの足を引っ張り続けるお荷物っぷりを炸裂させているジジイだ。妻との関係に亀裂の走っていた彼は心を病み、海への飛び込み自殺を図るためにポセイドン号に乗り込んでいたのだ。自殺願望があるのであれば船の中に残ればよかったのに、何故「建築家として言うが、船は逆さまに浮くようにはできていない」と偉そうに発言して脱出メンバーに加わったのか、理解しかねる。

その後はエレナに飲料水を差しだしながら「水だけはそこら中にあるからね」と、いろんな意味で笑えないナンセンスなナンパを始めるネルソンは、エレナを愛してしまう。しかも物凄くたちの悪いことに、その直前にネルソンがエレベーターシャフトで足蹴にして落としたバレンタインというウェイターは、なんとエレナの連れだったのだ。NYにいる病気の弟のもとへ行きたいが金がないというエレナを気遣い、船員としてエレナを密航させていたナイスガイを、こともあろうにネルソンが殺害。自殺願望があるならエレベーターシャフトでせめてバレンタインと一緒に落ちればよかったのに。劇中の生存者たちにはこの3名の関係性は分からないかもしれないが、全てを知っている観客からすれば大変に胸糞が悪く、このジジイに対しては全く持って感情移入をすることはできんかった、いやしたくない。

結局最後まで生き残ってしまったネルソンには何が残ってるんだろう。新たに思いを寄せたエレナも死んじゃったし。死にたい人間がいざ死を前にするとひるむ様子、死にたいと言っていた人間が死ねなかった皮肉、を描きたかったのかは不明。余談だけど、ラストで海に飛び込んだ脱出組が救命ボートに乗り込む際に、お互いがよじ登るために協力をしている中、誰一人としてネルソンを助けようとしていないのが笑える。クリスはボートに登れずに困っているネルソンを明らかに視界に入れているのに、すぐに視線を外して完全無視。これ、クリスはクリスで精悍そうながらも絶対に性格が悪い 笑 ボートに上がった後もネルソンのみ身を寄せて体を温め合う相手もおらず、地味に不憫だった 笑

演じるリチャード・ドレイファス『ジョーズ』といい『ピラニア』といい、つくづく海で難儀な目にあってばっかりだなあ。

■日本がらみ

・今回、特に日本がらみの要素は見つかりませんでした。

 

■鑑定結果

Jing-Fu
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災害パニック作品としてのスペクタクルな映像と演出においては、現時点でも右に出る作品がほとんどないくらいの一級作品です。

 

鑑定結果:ダイヤモンド映画(☆7)

 

となります!!

 

 

 

それでは今回の鑑定はここまで。

またお会いしましょう!

 

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