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みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。
今回鑑定をするのは『ドラゴン危機一発』です。
今年は伝説のカンフースター、ブルース・リーの生誕80周年という記念すべき年です。
そんな2020年を盛り上げるかのように、現在全国の映画館で「ブルース・リー 4Kリマスター復活祭」という名目で彼の主演作が公開されています。
今日はその公開作の内の1つである『ドラゴン危機一発』を鑑定していきます。
目次
■作品情報
・基本情報
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■原題:唐山大兄 / The Big Boss
■発掘国/制作年:香港(1971)
■キャッチコピー
その魅力のすべてがついにやって来た!
・監督、キャスト
■監督:ロー・ウェイ
■主要キャスト
チェン:ブルース・リー
メイ:マリア・イー
シュウ:ジェームズ・ティエン
マイ:ハン・インチェ
マイの息子:トニー・リュウ
クン:リー・クン
・あらすじ
中国の田舎町からタイへと出稼ぎにきた青年のチェン(ブルース・リー)は、タイに住む従兄弟のシュウ(ジェームズ・ティエン)を頼って製氷工場で働くことになった。
シュウの家にはクン(リー・クン)をはじめ、チェンのように出稼ぎにやってきた男たちが仲良く暮らしており、シュウの妹であるメイ(マリア・イー)にも気に入られたチェンは、同じくこの家で生活を共にすることになる。
ある日、製氷工場で働き始めたチェンは、誤って氷を落として割ってしまうが、シュウの家に住む仲間の2人が割れた氷の中に麻薬が入っているのを目撃する。
実は工場の社長のマイ(ハン・インチェ)は、製氷業の裏で氷の中に麻薬を仕込んで密売をしていたのだ。
麻薬の存在を知ってしまった2人は呼び出され、マイの部下に殺されてしまう。
帰ってこない仲間を心配したシュウは、事情を聞きにマイのもとへ出向くが、今度はシュウも帰ってこなくなり、チェンたちも仲間の捜索に動き出すが・・・。
■ざくっと感想
本作の鑑定結果は、、、
アメリカへと渡っていたブルース・リーが香港へ凱旋帰国して主演した香港映画である本作。
ブルースが32年という短い生涯の中で残した、僅か5本の香港主演映画の内の1作目という記念すべき作品です。
作品の全体的なトーンの安っぽさは否めませんが、その中で他の演者の動きとは比べ物にならない、若いブルースのカンフーアクションが光っています。
それまでのカンフー映画にはなかった、実践的でリアルなブルースの格闘はインパクトが大きく、今観直しても全く見劣りすることがありません。
この作品だけで彼が香港のトップスターに躍り出たことも頷けます。
以下、ネタバレありの感想と考察になります。
作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!
■感想と考察
・時代を先取りしていた、ブルースのカンフーアクション
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ブルース以前のカンフー映画では、役者がそれっぽく腕を動かしたり、トランポリンやワイヤーで大袈裟な動きをする、いわゆるなんちゃってアクションが主流で、本作と同時期に公開されているジミー・ウォングの『片腕ドラゴン』がいい例です。
ブルースはこれらに対し、「俺が本物のカンフーを見せてやる」と宣言していたそうです。
ジークンドーを創設した武術家の言葉は正しく、本作でブルースが披露するカンフーアクションは誤魔化しがなく、リアリティと迫力に溢れた、まさに「本物」の動きでした。
本作の時点では、怪鳥音やヌンチャクなどの後にブルースのトレードマークともなる演出はなく、ジークンドー独特の技術が用いられているわけではありません。
ですが力のこもった強烈なパンチ、打点の高い蹴り、次々と敵を蹴散らしていくブルースのカンフーはバイタリティに溢れ、作品内で他の役者が見せるアクションシーンと比べても、その動きのキレの違いは一目瞭然。
ブルースが劇中で見せた連続3回回し蹴りが速すぎて、公開当時「李三脚(ブルースには脚が3本ある)」という単語が世間で囁かれたと聞けば、作品を未見の状態でもその速さが容易に想像できると思います。
今から半世紀近く前の作品であるため、さすがに全体的な古臭さは否めませんが、ブルースのアクションシーンだけはどれをとっても見劣りをすることがなく、彼のアクションが時代を先取りしていたことを物語っています。
むしろ現代の下手なアクション映画よりもスタイリッシュです。
物語の最後に展開される、チェンVSマイの死闘。
マイを演じるハン・インチェは60年代~70年代の香港映画で武術指導や俳優として活躍していたベテランということもあり、本作内で唯一ブルースとの格闘シーンで互角に見栄えする動きを見せています。
2人の闘いが始まる前に、互いの目元が交互にクローズアップされていくのは、アメリカの西部劇を思わせるかのような演出。
恐らくはアメリカで映画やドラマの出演、武術指導に携わっていたブルースが持ち込んだ演出だと思われます。
これによって闘いに向かう時間に緊張感が生まれており、ブルースが演技だけでなく製作サイドでも才能を発揮していたと思うとますます感心しますね。
・燃えるブルースの演技
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若くてエネルギッシュなブルースですが、演技力はまだ青く、どこかぎこちない一面も。
それでも、キャラの設定上「喧嘩をしてはいけない」という制約が付きまとう中、中盤までは中々アクションを披露する機会がなく、溜めに溜めて怒りを噴火させるブルースの怒りの演技は鋭いです。
全ての怒りを拳に集中させ、相手をぶん殴った痛みと憤りで拳・頬を震わせる姿が印象的でした。
瞳の中でメラメラと炎を燃え上がらせる怒りこそ、ブルースのシンボルとも言うべき演技で、彼のアクションと同様のパワフルさが、青い演技をカバーしているのです。
いわゆるパワハラ環境の中でタイ人従業員らにこき使われる中国人たちをかばい、彼らを救うことによって称賛されるチェンの姿には光るものがあり、その後の香港や中国の娯楽文化に定着することになる「異国の地で虐げられる同胞を救う英雄像」の原型で、国民性がよく表れていると思います。
本作の香港でのプレミア公開が終わった直後、作品の中と同じようにブルースは歓喜した観客たちに担がれて、劇場の外まで運ばれて行ってしまったというエピソードがあるほど、ブルースのヒーロー像が人々を湧かせてたと聞けばなおさらですね。
・ブルースが不在であれば光らなかった作品
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作品としてのクオリティを問われると、お世辞にも決して面白いとは言えません。
ハリのない脚本、チープな演出、グダグダな展開。
はっきり言えば「つまらない」のですが、それらを観ようとする気概を、ブルースのアクションシーンがかろうじて支えているという状況です。
というかブルースが不在だったらこの作品はどうなっていたんだろう。
仲間たちが順番に行方不明になっている深刻な状況の中で、昇格したチェンを筆頭にキテレツな行進で湧いているシーンは、いくら演技だとはいえいい大人がやることではなく、なんだか鳥肌が立つくらい、見ていて辛いです。
序盤から終盤まで、子供や女も容赦なく、次々と人が死んでいく暗いストーリーも観ていて気持ちが良いことはありゃしない。
いずれのギャグシーンも寒く、チェンに殴られた従業員が壁を人型にくりぬいて突き破るといったどうしようもないバカ演出もあって失笑します。
大切な仲間を皆殺しにさせられたチェンが復讐を誓って、マイを含む工場の悪党たちを見事一掃するのですが、残された生血と死体の山の中で、犯罪者として警察官に連行されてしまうアンチヒーロー像的な最後がなんとも悲劇的でした。
■日本がらみ
■鑑定結果
作品として万人にお勧めをすることはできませんが、若いブルースのエネルギッシュな演技とアクションには一見の価値があり、ブルースに興味を持っている人や、カンフー映画が好きな人は一度手に取ってみるのもアリです。
となります!!
それでは今回の鑑定はここまで。
またお会いしましょう!
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