ネタバレ/感想『トム・ヤム・クン!』の鑑定結果【タイ・アクションの集大成!格闘アクションの革命作】

アクション
(c) 2005 Sahamongkolfilm International Co., Ltd. All rights reserved.

 

Jing-Fu
Jing-Fu

みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。

 

今回鑑定をするのは『トム・ヤム・クン!』です。

実写版『モンスターハンター』公開記念!

ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアルテミスの師匠となるハンター役のトニー・ジャーを勝手に応援企画第2弾!

 

 

トムヤムクンを作る料理人の話ではありません!笑

それでは早速鑑定していきましょう!

■作品情報

・基本情報

(c) 2005 Sahamongkolfilm International Co., Ltd.All rights reserved.

■原題:ต้มยำกุ้ง/The Protector

■発掘国/制作年:タイ(2005)

■キャッチコピー

取り戻したい愛がある、
取り戻したい象がある。

・監督、キャスト

■監督:プラッチャヤー・ピンゲーオ

 

■主要キャスト

カーム:トニー・ジャー

マーク:ペットターイ・ウォンカムラオ

プラー:ボンコット・コンマライ

マダム・ローズ:チン・シン

ビンセント:ダミアン・デ・モンテマス

ジョニー:ジョニー・グエン

TK:ネイサン・ジョーンズ

カポエイラファイター:ラティフ・クラウダー

剣術使い:ジョン・フー

・あらすじ

タイ東部の森林の中。何百年もの歴史の中で、国王へ献上する象を育ててきた王国戦士「チャトゥラバート」の末裔たちが暮らす村があった。いまもなお像と人間が共生するこの地で、青年のカーム(トニー・ジャー)も幼少期より父親像のポーヤイと小象のコーンと静かに仲睦まじく暮らしていた。ある日、立派な雄象であるポーヤイを国王に献上するための審査会に出すために、カームは父親のコイ(ソトーン・ラングリャン)と共にコーンも連れて町に出かける。ところが審査会には密輸組織のメンバーが紛れており、ポーヤイはもとい、町で開かれていた水かけ祭りの最中にコーンまでもが連れ去られてしまう。怒りに燃えたカームはベトナム人のジョニー(ジョニー・グエン)の命令で2匹の像がオーストラリアへ連れていかれたことを聞き出し、単身オーストラリアへ向かうのだが・・・。

■ざくっと感想

Jing-Fu
Jing-Fu

本作の鑑定結果は、、、

鑑定結果ミスリル映画(☆9)!!

『マッハ!』で世界中にアクション大旋風を巻き起こした、主演のトニー・ジャープラッチャヤー・ピンゲーオ監督、アクション監督のパンナー・リットグライ『マッハ!』組が再度集結! 今度は大切な像を盗まれたトニー・ジャーが、タイを飛び出して畑違いのオーストラリアを舞台に大暴れをする、タイ原産の超絶ムエタイアクション作品の第2弾です。

「CG、ワイヤー、スタント、早回しを使わない」というジャーの無謀すぎるアクション縛りは継承されており、本作でもジャー本人による超人的なハードアクションとリアルヒッティングによる衝撃度120%の迫力は健在。劇中のジャーの対戦相手にはカンフー、カポエイラ、剣術、プロレスなどの使い手が向けられ、ムエタイVS他武術の異種格闘技戦が火花を散らすのが見ものになっている。さらに本作では「4分間の長回しアクション」「49人連続骨折り」という、アクション映画において前人未到の限界にも挑んでおり、『マッハ!』で自ら築き上げてしまった高すぎるハードルを見事超えてしまった究極の作品だ。

 

以下、ネタバレありの感想と考察になります。

作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!


 

 

 

 

 

 

 

 

■感想と考察

・アクションのさらなる高みへ

『マッハ!』の超人アクションでも十分満腹だったのに、その腹がはち切れるほどの極上アクション・フルコースが詰まっている本作。『マッハ!』で自分たちの構築した実験的アクションスタイルの感覚が掴めたのか、前作のアクションよりもさらにクオリティが洗練されている感触がある。どんな分野においても、一度やったことと同じことを繰り返しても、前回を超える評価を得ることはできない。本作の製作陣はちゃんとそこを把握していて、前作で培った経験をベースにもう一歩先の限界点に挑み、アクションの更なる高みへと到達しちゃいました。闘神トニー・ジャーは、またも高いステップを「飛び越えて」しまったのだ。

Jing-Fu
Jing-Fu

物語の舞台がタイから外国のオーストラリアへ移り、中国人や白人と言った外国人が中心の敵になっていることも、前作からのスケールアップを助長させていますね。

 

・冒頭の大暴れ

左右交互に内臓破裂蹴り!!

(c) 2005 Sahamongkolfilm International Co., Ltd. All rights reserved.

前作よりもジャーのアクションが爆発するタイミングが早いのが素直に嬉しい。物言わぬ仏像よりも、家族として生活を共にしてきた像を奪われる方がもっと憎い。そういわんばかりに密輸組織に関係する家に飛び込んできたジャーの目は血走り、冒頭から『ドラゴン怒りの鉄拳』状態の激おこアタックで観客をビビらせる。繰り出す連続蹴りの破壊力は、リアルヒッティングによって絵に描いたように吹っ飛ぶザコ的と壊れるオプションの様子から察することが可能だ。

その後は運河に移動して高速のボートチェイスを展開させ、家屋を丸ごと破壊したりヘリに突っ込んで大爆発したりと、ハリウッド映画さながらのやりたい放題ぶりを見せていて素晴らしい。

 

・トニー・ジャーVSエクストリームスポーツ

オーストラリアに到着した直後、カームはジョニーを探して街を徘徊。ナイフを突き出すジョニーの手下に対し、横にあった2.5メートルはある電灯の先端を極・シンバルキックによって破壊し威嚇! 相手が「はえっ??」てキョトンとするのが笑える。観ているこっちも一緒の表情になってるから 笑 このシンバルキックは、ジャー『マッハ!』の来日時に、PRイベントでくす玉を割るために見せた技だ。

その後は廃倉庫に移動。ジョニーが集めた手下たちとの乱闘がスタートする。敵のザコ役たちはローラーブレード、マウンテンバイク、バギーなどのエクストリームスポーツ武装をしており、危険で華麗な動きでジャーを攻め立てるのが見もの。ここでこだわっているのが、「10~20秒の長回し」と「ギリギリのスリル」だ。10~20秒って、短く聞こえるけどアクションで考えたら随分長い時間だよ? その長回しの中で、ジャーは猿のような機敏さと柔軟性を活かして倉庫内の不規則な環境を逃げ回り、すんでのところで相手の攻撃が当たらないギリギリ感がたまらないひやひやを誘う。片輪走行してくるバギーのタイヤ下で身をよじるジャーは極めて危険に見え、突進してきたバギーをガラスを蹴り上げた逆上がりでかわし、そのすぐ直後にそのガラスをバギーが突き破るという神技で締める!

 

・4分間の長回し

本作で挑んだアクションの新境地の1つ。レストラン「トム・ヤム・クン」の上階に続く広大な螺旋階段と中フロアを、ジャーがザコ敵を蹴散らしながら突き進んでいき、その様子を4分間カメラが止まることなく追従するという、先にも後にも世界最長記録を誇る前代未聞の格闘シーンである。

ジャーは何も殴る蹴るをするだけではない。常に走り続け、飛び回り、投げ飛ばし、喝を入れながら突き進む。ジャーの体力はもちろん、カメラマンの体力、ザコ敵の配置とリアクション、シームレスアクションの中に何か一つでもズレが生じれば、どこまで進んでいようとその時点でNGテイクになってしまう究極に難易度が高い荒業だ。この映像が完成したのは本当に奇跡に近い。ジャーのバイタリティがアホみたいに高すぎて、観ていて細かいことを考える思考回路が完全にショート。

撮影はジャーとスタッフの体力を考慮すると、1日に2階までしか決行することができなかったらしい。8回の撮影で成功しているので、4日かかったことになる。実は7回目の撮影の時点で成功してたらしいんだけど、なんとゴールである最上階にたどり着き、締めの「象はどこだッ!!」を怒鳴る直前にカメラのフィルムが切れるという、バラエティのような血の気が引くアクシデントに見舞われたんだとか。ジャーはこの瞬間、怒鳴るセリフを通り越して本気でブチギレて崩れ落ちたらしい 笑 確か『WHO AM I?』でも同じような撮影トラブルがあって、野生のサイにまたがるというせっかくのスタントが白紙になったジャッキーがスタッフにブチギレてたっけ。

ジャーももちろんだけど、多分このシーンで一番プレッシャーが重かったのはゴール手前に待機しているザコ敵の彼だろう。それもそうだ。自分の立ち回りとリアクションを少しでも間違えれば、最下層からゼーゼー言いながら登ってきたジャーの顔を潰すことになるんだから 笑 ジャーに体を押さえつけられながらも、必死に自分の右腕を決められているように自ら背中に回す彼の演技は、涙無くして観ることはできない。

 

・トニー・ジャーVSジョニー・グエン

ジョニーはスパイダーマンの中の人!

(c) 2005 Sahamongkolfilm International Co., Ltd. All rights reserved.

4分間長回しの後に訪れる、レストラン最上階での対決。ジョニー・グエンはカンフーの使い手と言う設定の役で、『酔拳2』ロー・ワイコンの如き鞭のようにしなやかな足さばき、ドニーさんにも匹敵するドロップキックなど、華麗でハイレベルな足技を連続させる。

ジョニーはベトナム出身の国内を代表するアクションスターです。その実績は高くスパイダーマン』ではグリーン・ゴブリン、『スパイダーマン2』ではスパイダーマンの中のスタントを担当したり、『ブラック・ダイヤモンド』ではジェット・リーと対決したりと、ハリウッドでの経験もかなり豊富。ベトナムでは「ベトナムタイガー」という異名で呼ばれ、『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』ベロニカ・グォと共演した主演作の『CLASH クラッシュ』は評価されており、この業界で精力的に活動をするお方だ。そんなわけで、ジョニーの本作での登場時間は長くはないものの、素晴らしい職人芸の立ち回りを披露しております。

そう、残念なのはこの2人の対決がここで終わってしまうこと。ジョニーはその後も登場してマークに向かって「ケリをつけようぜ!」と言いながらもそのシーンが流れることはなく、死体すら映らないので末路が分からず、スタッフ全員が編集の最後に校正をしなかったような大雑把っぷり。レストランを守れなかったからってちゃっかり頭を丸めるくらいの誠実なキャラだったんだし、どうせならきちんとジャーにトドメをさされてほしかった。

 

・トニー・ジャーVSラティフ・クラウダー

ムエタイVSカポエイラ、異次元の立ち回り

(c) 2005 Sahamongkolfilm International Co., Ltd. All rights reserved.

これはちょっとすごい格闘シーンだ。凄すぎて早速文章のIQが落ちてる。

オーストラリアの寺院が襲撃され、マダム・ローズの配下である格闘集団が畳みかけてカームに襲い来るシーン。その先鋒として登場するのが、カポエイラ・ファイターのラティフ・クラウダーだ。カポエイラはブラジル発祥の格闘技(ダンス)であり、日本人のほとんどはポケモンのカポエラーしか知らんと思う。体の上下左右関係なく戦い続けるスタイルを観れば、カポエラーが何故逆さまになって戦うポケモンになったのかも頷けるはず。まさにダンスと言うか、せわしなく動き続けるリズムとステップが非常に独創的。タテヨコナナメのどこからでも蹴りが飛んでくる掴みどころのなさと、ジャー顔負けの豪快なアクロバット術には目が釘付けになること間違いなし。ムエタイVSカポエイラの希少な対戦カードはもちろん、そもそもカポエイラの動きや動画自体を観たことがなかったもんだから、物珍しさとしての見応えも折り紙付きの名格闘シーンになってます。

インターネットで彼の動画を観て直接オファーをしたという、ジャーの作り手としてのセンスも伺える。ラティフは本作で映画界に足を踏み入れ、その後は主にスタントマンとして幅広く活躍。エクスペンダブルズ』『キングスマン ゴールデンサークル』『デッドプール2』や、最近だと『ザ・マンダロリアン』なんかでも汗を流しているらしいよ。

 

・トニー・ジャーVSジョン・フー

ジャーの身体の向きが・・・

(c) 2005 Sahamongkolfilm International Co., Ltd. All rights reserved.

ラティフの次に登場するのが、ジョン・フーが演じる剣術使いだ。ラティフよりはインパクトが薄いものの、銅鑼のバチで二刀流となったジャーを相手に、手にした剣の切れ味を増幅させるような、とてつもなくキレの良い回転動作で存在感を見せつける。ジャージャーで、信じられないほどの体のネジりの勢いでジョンの胸にバチをカウンターヒット! クリティカル度100%のスカッとする決め技だった。

管理人の名前とどこか似ているジョンだが、「アジアのオーランド・ブルームと呼ばれるくらい、さぞ女子受けしそうな爽やかで甘いマスクの持ち主。本作でわざわざ撮影現場に自分を売り込みに行き役を獲得した後は、『TEKKEN-鉄拳-』『リベンジャー』などのアクション映画に主演。『ラッシュアワー』のドラマ版で、ジャッキー・チェンが演じていたリー警部を任されたのも記憶に新しい。

 

・トニー・ジャーVSネイサン・ジョーンズ

観よ! この絶望的な体格差!

(c) 2005 Sahamongkolfilm International Co., Ltd. All rights reserved.

ガラスをぶち破って突然乱入してくる、プロレスファイターのTK。いわゆる本作のラスボスを演じるネイサン・ジョーンズは、ジャーがコドモに見える2メートル越えの筋肉タワーみたいな風貌なため、登場した途端に画面を支配してしまうインパクトを放つ。ここではネイサンのパワー一辺倒な重量級アタックはもちろんだが、彼にアクションをさせずとも彼を「最強」と思わせる演出力がめちゃくちゃ巧みだったりする。これまでに目にしたことのないような圧倒的巨体の登場の裏に流れる重厚的なBGM、ジャーの蹴りを全て筋肉の鎧で跳ね返し、ジャーの攻撃が通用しないことを叩きつける絶望感、そしてスキンヘッドの強面なネイサンが一切セリフを喋らず、猛獣のように唸り声しか上げない本能的な恐ろしさ。どこをとってもネイサンの使い方が上手いというか、彼の魅力をフルで利用した表現力には脱帽してしまった。

寺院での3連戦は、まさに異種格闘技戦の真骨頂。床にはスプリンクラーで溜まった水が広がっており、役者たちが躍動する度に、彼らのアクションを美しくかっこよく見せるエフェクトとして機能しているのが見逃せない。知名度よりも確固たる技術力を持ち合わせた俳優たちを寄せ集め、ポテンシャルを出し切らせた製作陣たちの手腕の賜物なのだ。

 

・49人連続バッキバキ!

あっはっは! 見ろ! 人がゴミのようだ!

(c) 2005 Sahamongkolfilm International Co., Ltd. All rights reserved.

マダムローズの根城に乗り込んだカーム。しかしそこには既に殺され、骨の剝製にされてしまったポーヤイの悲しい亡骸が。これを見たカームの怒りが大噴火する!!

4分間の長回しと同じく、アクション映画の前人未到ポイントに挑んだ意欲的なシーン。次々と向かってくるスーツのザコ敵たちを、ジャーが関節技=サブミッションを駆使してなんと49人連続で粉砕していくという文字通りの無双アクションだ。どことなく『マトリックス』で無数に登場するエージェント・スミスをイメージさせる場面だが、ジャーはネオよりももっと野蛮で危険な立ち回りを炸裂。決して長回しではないのだが、「バキッ!ボキッ!」と鳴り響く耳障りの良い効果音、どう見ても本当に折れているとしか思えないほどひん曲がるザコたちの足と腕のリアリティ、単調化を感じさせない、ジャーの関節技の多彩な魅せ方と立ち廻り。まさに「痛快無比」以外に適語が見つからない。

ジャーはここでのアクションで、古式ムエタイの「象の型」を取り入れている。これは「投げ、たたき、つかみ、砕く」に特化した戦術で、確かに象のイメージが湧くような動きをしているのが特徴的だ。ジャーの腕は象の牙のごとく鋭く相手を捕らえ、脚は象の鼻のように相手に巻き付き締め上げる。そうか、ジャーの衣装が上下ともにグレーだったのは、ここでジャーに象の姿を重ねるためへの伏線だったのかと気付いて関心した。

途中、ザコ敵の中でもほんの少しだけ長く蹴り技を披露する白人がいて、でも結局はジャーに腕を決められ、ウルトラきりもみキックで呆気なくKOされる。彼はオランダの元キックボクサーであるロン・スモーレンバーグ。実は『WHO AM I ?』のラストで、ジャッキー・チェン相手に怒涛の足技をお見舞いしていたラスボスの1人なのだ。本作に参加するにあたっても「ジャッキーと共演してるんやで!!」と製作陣に向かって必死に営業をし、結果ちょこっとだけ出番を貰うことができた。「ジャーと闘って自分の実績にしたかった」という割には対決らしい対決ではないが、後に2人は『トリプル・スレット』で再び拳を交えることになる。

 

・トニー・ジャーVSネイサン・ジョーンズ Round 2

デカい相手にはデカい武器、象の骨!

野性は力でねじ伏せると、ボンクレーも言っていた!

(c) 2005 Sahamongkolfilm International Co., Ltd. All rights reserved.

49人を突破したカームを待ち受けていたのは、寺院で一度敗れた大男のTK。互いに獣の雄叫びを上げて闘いの火ぶたが切られる!

ジャーネイサン・ジョーンズの第2回戦。「カームは寺院でTKの頑丈な体を目の当たりにしたが、唯一の弱点が頭部であることにも気付いていた」という設定がちゃんと効いていて、同じ轍は踏まんとネイサンの頭部に集中砲火を浴びせるジャーの高打点攻撃で熱気は最高潮! 飾らずとも身長差のある2人の攻防は観ているだけで映えていて楽しい。また、冒頭から長く引っ張られていた「チャトゥラバートの闘う理由」もここにきてようやく判明。「チャトゥラバートは象の弱点である足の筋を守っていた」という教えを応用→ネイサンと他の臭そうな重量級レスラー3人を「巨大な生物」に見立てる→ポーヤイの骨をナイフのように使用し、体中の筋を斬り裂いて再起不能にする。そんな小柄なジャーが巨体衆を料理していく反撃術を、『マッハ!』の時にはなかったアクション×伏線で巧みに解明させる手法がなんと巧みなことでしょうか。

・演技表現を磨いたジャー

哀愁漂う負の演技が強め

(c) 2005 Sahamongkolfilm International Co., Ltd. All rights reserved.

ストーリーは『マッハ!』の仏像を象に置き換えただけで、奪われた大切なものを取り戻しに行くという基本的なプロットは変わらず。変わり映えはしないが、まあ今回の対象は仏像という無機物ではなく「象」という生物に変化したため、より感受性のアップしたストーリーにはなっている。あとは社会問題の1つである、野生動物の違法的な密売の実態とムゴさを描いたのには思わず胸が痛んだ。反面、食おうとしてた動物に悪党が食われるという皮肉を取り入れているのが絶妙。あと、悪役のマダムローズをオカマにする必要があったんだろうか。一応劇中の組織内の権力争いに絡まっているもののただそれだけで、オカマと言うキャラは全体的なストーリー上に必然性がなく、なぜこんな設定にしたのかは不明。

お世辞にも『マッハ!』では感情表現が豊かとは言えなかったジャーだけど、本作では「喜び」だけでなく、「悲しみや怒り」といった負の演技に挑戦。実家の庭を見るといつも2頭の象がいたという環境で育ってきたジャーは、やはり象を飼っていただけあって象との戯れが自然かつ楽しげに映る。そして象に対しての悲しみを感じる場面では、顔をくしゃくしゃのびちょびょにして泣き崩れる哀愁の強さ。そこから復讐心を燃やしてアクションの動きにも伝達させる怒りの咆哮。『マッハ!』の時よりは確実に演技力が向上しているのが分かりますね。やればできる男、それがジャーです。他には『マッハ!』でもジャーの相棒的存在を演じていたペットターイ・ウォンカムラオが、本作でも再びジャーと安定タッグを組んでいたのが嬉しかった。前作のチンピラ役一転、熱血警官だがちょっぴりドジという役柄を相変わらずの茶目っ気たっぷりな演技で華を添えるだけではなく、地元警官の設定上大部分のセリフをオーストラリア訛りの英語で表現しており、さりげなく俳優の力量を開花させているのが憎いね~。

 

・象にもアカデミー賞を!!

エレファント・LOVE

(c) 2005 Sahamongkolfilm International Co., Ltd. All rights reserved.

本作に登場する象はいずれも凄い。人間顔負けの「演技」をしてるからだ。コーンの母象は、「死んだふり」の演技がそんじゃそこらの犬ッコロよりもめっぽう達者。密猟者に撃たれて崩れ落ちる場面の、母象の血走って見開かれたあの目よ。コーン役の子象にじゃれあわれながらも、ピクリとも動かず死んだふりを徹底する涙誘いの役者魂よ。子象は子象で、人間の子供に水をかけ返してドヤ顔をキメるなど、こちらも非常に芸達者です。この年のアカデミー賞に本作の象たちをノミネートしなかった審査員たちは、見る目がないなぁ。

 

・ジャッキー・チェン??

冒頭、カームがシドニーの空港に降り立ち、1人のアジア人の男と肩がぶつかるというシーンがある。2人は咄嗟に身構えて静止するんどけど、しばらくして軽く謝罪し合い、その場を去っていく。ここ、ストーリー上全くもって何の関係もないイベントなのに、妙に意味ありげな配置をされているのが気になる。アクション映画ファンだったら、相手の男の容姿がどう見てもジャッキー・チェンを意識しているのにピンと気づくだろう。ソックリさんとまでは行かないながらも、言われれば確かに寄せてる顔立ち、同時期に公開された『NEWポリスストーリー』時のジャッキーのようなロン毛、明らかに確信犯である。『マッハ!』公開時にアメリカのどこかのメディアが「気を付けろジャッキートニーが飛び越える!」と謳っていたこともあるし、やはりアクションレジェンドに対して敬意を払いつつ「ここからは俺(ジャー)の時代だ!」とでも表現したかったんだろうな。

■日本がらみ

・今回、特に日本がらみの要素は見つかりませんでした。

 

■鑑定結果

Jing-Fu
Jing-Fu

タイ・アクションの最高峰であり、集大成的な作品でもあります!

鑑定結果:ミスリル映画(☆9)

 

となります!!

 

トニー・ジャーについて知りたい方はこちらの記事もどうぞ☆

 

それでは今回の鑑定はここまで。

またお会いしましょう!

 

よろしければシェアをしていただけると幸いです!↓↓

コメント

タイトルとURLをコピーしました