みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。
今回鑑定をするのは『バイオハザード』です。
実写版『モンスターハンター』が公開されたこともあり、同じく日本のゲームを原作とし、これまた同じく主演がミラ・ジョヴォヴィッチである『バイオハザード』が今夜金曜ロードショーにて地上波放送されます!
それでは早速鑑定していきましょう!
目次
■作品情報
・基本情報
(C)2002 Constantin Film Produktion GmbH. All Rights Reserved
■原題:Resident Evil
■発掘国/制作年:アメリカ/イギリス(2002)
■キャッチコピー
・監督、キャスト
■監督:ポール・W・S・アンダーソン
■主要キャスト
アリス:ミラ・ジョヴォヴィッチ
マット:エリック・メビウス
スペンス(スペンサー):ジェームズ・ピュアフォイ
レイン:ミシェル・ロドリゲス
カプラン:マーティン・クルーズ
ジェームス:コリン・サーモン
J.D:パスクエール・アリアルディ
リサ:ハイケ・マカッシュ
レッドクイーン:ミカエラ・ディッカー
・あらすじ
21世紀の初頭、全米No1の民間企業に成長したアンブレラ社は、コンピューターテクノロジーや医薬品事業に精通し、自社の家庭用医薬品シェアが90%となるほどの、経済的にも政治的にも影響の大きい企業であった。しかし社員にも知らされない極秘裏で、細菌兵器など軍事向けの事業にも着手していたのだ。ある日、アメリカのラクーンシティにある極秘地下研究施設「ハイブ」にて、研究中であった生物兵器の「T-ウィルス」が何者かの手によって施設中に流出。バイオハザードが発生したと判断したメインコンピューターのレッドクイーンは、外部にウィルスを漏らさないためにハイブを完全隔離、中の研究員ら500人すべてをハロンガスによって死亡させた。それより少し後、ラクーンシティ郊外の洋館のシャワールームで、気絶していたアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)が目覚めた。何故か記憶を失っているアリスが洋館内を彷徨っていると、突然警官だと名乗るマット(エリック・メビウス)と、彼とは別に武装した特殊部隊たちが突入してきて・・・。
■ざくっと感想
本作の鑑定結果は、、、
ゲーム会社のカプコンによる、日本を代表するゲームの1つである『バイオハザード』のハリウッド実写化作品。巨大な地下施設の中で発生したバイオハザードによって無数のゾンビが溢れかえる状況の中、とある任務で施設に突入した主人公たちの脱出劇を描いたサバイバルアクションホラー作品です。
至る部分にゲームから流用の設定や単語を見受けることができるが、原作を忠実になぞった実写化作品というわけではなく、あくまでも映画におけるオリジナルストーリーとして構成されている。言い換えると、原作の基本的な世界観を下敷きにして、そこから新しいバイオハザードを作ったという感じですかね。また、原作よりもアクション面が強調されているのも大きな特徴の1つ。
クリーチャーたちの造形、スケールの大きさ、そしてしっかりと構築された世界観は、流石はハリウッド作品だと唸る部分がある。確かに、いちアクションホラー作品としては面白いのかもしれないが、原作ファンからすると決して容認できない箇所がいくつもあり、これを『バイオハザード』として許容できるのか怪しい点があるのも事実だ。
それでも『スーパーマリオブラザーズ』とか『ストリートファイターⅡ』とか、それまでにハリウッドにおける日本のゲームを実写化した作品にほとんど成功例がなかった状況で、本作は恐らく商業的に成功を収めた初のゲーム実写化大作。本作の世界的なヒットは、主演のミラ・ジョヴォヴィッチをスターダムに押し上げるとともに彼女の代表作となり、また『ワイルド・スピード』と揃ってミシェル・ロドリゲスの知名度も上がることになった。監督は後にミラと結婚することになる、『モータル・コンバット』や『エイリアンVSプレデター』の変態ポール・W・S・アンダーソン。
以下、ネタバレありの感想と考察になります。
作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!
■感想と考察
・実写シリーズでは最も強いサバイバルホラー感
クールビューティなミラのキャリアにおいて代表シリーズとなった本作。
(C)2002 Constantin Film Produktion GmbH. All Rights Reserved
ゲームとは全く関係ないストーリーラインで、ファンが見慣れているキャラクターも一切登場はしないオリジナル色が強い中で、「ラクーンシティ」「T-ウィルス」「バイオハザード=生物災害」「クリーチャー」という設定の基本中の基本は守ることができている(実写化と銘打つのだから当然の話だけど)。物語の舞台を広大ながらも移動が制限された巨大地下施設の「ハイブ」に設定したことによって、原作の持ち味であった「サバイバル」感もよく出ていると思う。特に段々と銃弾が底をついていく特殊部隊員たちが、押し寄せるゾンビの群れに押されて追い詰められていく焦燥感は中々のものだ。中盤、主人公たちが地下の配管トンネルを進むシーンがあり、通路がゾンビで埋め尽くされている中、彼らの頭上に伸びているパイプを伝って移動するシーンのスリルの最たるや、ひょっとして実写シリーズにおいては最も秀逸なサバイバルシーンとなっているんじゃないだろうか。さらにハイブからの脱出に原作の十八番である「時間制限」を設けることにより、よりサバイバル劇の臨場感が増しているのも評価できる。
とにかく、主人公のアリスがまだ完全な超人化する一歩手前みたいな段階なので、シリーズで一番刺激的なサバイバルホラーに仕上がっているのは間違いないでしょう。
・質感が光るバイオククリーチャーたち
完璧なビジュアルで実写世界に飛び出したリッカー
(C)2002 Constantin Film Produktion GmbH. All Rights Reserved
原作シリーズの顔でもあるゾンビはもちろんだが、他にもT-ウィルスの影響で生み出されたクリーチャーとして、ゾンビ犬ことケルベロスと、ゲームの2作目冒頭で衝撃的な登場をしてプレイヤーをビビらせたリッカーが参戦している。いずれも原作のゲームからそのまま飛び出してきたかのようなビジュアルで、湿り気と腐臭が画面越しに漂ってきそうな質感クオリティには思わず目を見張った。
こういう所は、流石はハリウッドの力だな~と感心しますね。
いずれも見た目だけではなく、それぞれの特徴がしっかりと踏襲されているのも良かった。ケルベロスには集団で襲い掛かってくる見せ場もあり、俊敏な動きで飛び掛かってくる恐ろしさは原作そのもの。またリッカーは本作のいわゆるボスキャラとしてのポジションを担っていて中盤以降は登場頻度が多い。壁や天井を縦横無尽に走り回る厄介さ、強力な飛び付きと爪攻撃、名前の由来ともなっている長い舌を活かしたアクションもあって、ゲームと同じく劇的な名物クリーチャーとして君臨している。
・バイオらしさの欠如
配管トンネルでのサバイバルホラー感は中々のもの。
(C)2002 Constantin Film Produktion GmbH. All Rights Reserved
と、上記の通り評価できるポイントも多々ある中で、原作ファンの視点から見ると全てに満足することはできず、やはり気になる点が散漫しているのも正直な話。管理人もバイオ大好き人間で、少年期は親がプレイしているのを横で観ていて、ちょっと恐怖耐性がついた頃を境に、手に入る過去ソフトをPS1〜PS3でまたいでプレイし、未だ新作はプレイし続けているくらいですからね 笑 気になる所はとことん気になりましたよ。
・オリジナル要素の薄まり方
原作ありきの実写化ということで、多少は創作における自由度はあるのかもしれないけど、あまりにも原作の魅力ポイントを削ぎすぎなんじゃないだろうか。そりゃ「T-ウィルス」とか「ゾンビ」とか最低限の要素は活きてるけど、ゲームのキャラはほぼ未登場、ストーリー進行も同じなのは軸だけ。原作ファンとしては、完全なゲームベースの実写化作品というのを観てみたかった。普通にゲームの1作目、森の洋館でサバイバルをするジルとクリスを主役にした作品にすればよかったのに。
以下、作中に登場した、原作へのオマージュと思われる設定や単語です。
【森の洋館】→ゲーム1作目の舞台
【地下施設】→ゲーム2作目の舞台
【スペンス(スペンサー)】→ゲームにおけるアンブレラ創設者の1人
【ウィリアム・バーキン】→ゲームにおけるT-ウィルスとG-ウィルスの生みの親。
・アリスというキャラのガッカリ感
問題の三角飛び蹴り。・・・いらない、いらない。
(C)2002 Constantin Film Produktion GmbH. All Rights Reserved
これは本実写化シリーズにおける、バイオらしさの欠如に最も加担した要素。ミラが演じる主人公のアリスは映画における完全オリジナルキャラクターだ。別にオリジナル主役キャラの登場と滞在だけだったらまだ目を瞑れるものかもしれないが、問題はアリスに設定された能力。アリスはアンブレラの元特殊工作員ということが劇中で判明しており、その経歴のせいでバカみたいに強い。明らかに常人離れした身体能力を武器に次々とゾンビたちを無双してしまうのだ。ミラのアクションを堪能する点では良いかもしれないけど、バイオでやるこっちゃない。
そもそもPS1時代の初期作が掲げていたのは、「銃器は扱えるがごく普通の人間が、閉鎖空間内で資源が限られている中でのクリーチャーと対峙した時の恐怖」だ。クリーチャーに対しては基本的な対抗手段が弾の限られた銃器しかなく、「やられるかもしれない」という恐怖と緊張感の中、倒すよりもどうやってかわすかをプレイヤーに強いたのがゲームの魅力だったのに、それを殴って終わらせられるのなら怖くもなんともない。ちょっと殴ったりド突いたりするくらいならまだしも、パンチのコンボやサブミッションという高い技量はもちろん、しまいにはケルベロスに向かって三角跳び蹴りを喰らわせる始末。結果として作品のホラー感を薄め、アクション(特に格闘アクション)の方が強くなってしまうという悪影響を及ぼしてしまった。「派手なアクションないと、大作映画として地味になる」という問題点はあっただろうが、それならそれで後述する原作らしいホラー色をもっと強めるとか、アクションは銃器系や爆発のみに絞るべきだった。繰り返すけどこんな演出はバイオでやるこっちゃないよ。唯一、ラストのリッカー戦のアクションバランスは秀逸だった。ここでは体術に頼らず、なしのつぶてのハンドガンと最低限のアイテムで戦い、そして地の利を生かしたトドメは非常にダイナミック。いかにもバイオのボス戦らしくて見応えがある。
と言っても、映画1作目である本作のアクションはまだ可愛い方で、シリーズを追うにつれアリスはどんどん超人化していってしまい、アクション要素は右肩上がりで濃くなっていく。もはやポール・W・S・アンダーソン監督による「後の嫁の自慢映画」と捉われてもおかしくないくらいの逸脱っぷりだ。余談だけど、ポール監督はこの1作目の頃からミラに対する執着や下心感情が少なからず芽生えていたらしく、劇中では必要もないのにミラのおっぱいだけでなく陰部までもがカメラインして(当然地上波ではカットだろうが)、観客を複雑な気持ちにしてくれる。しかも堂々と見せるのではなく、特殊な角度からチラ見せショットを狙った異常なものばかりで、ポール監督の変態っぷりというか、覗きたくない性癖のようなものが否が応でもチラつく。こんなあからさまなセクハラ演出、よくミラが使用OKに抗議しなかったな。
もう一つ余談。アリスの体術主体のアクションが悪影響を及ぼしたのは映画シリーズだけじゃないと思うんだよね。ゲームシリーズでは4~6で主人公による体術アクションが取り込まれ、特に5と6はホラー景観を損なうほどの超人技が炸裂するので大批判の嵐だった。これって、カプコンのスタッフが映画シリーズに影響されてるのが背景の1つであることは確実だろう。
・クリーチャーが少ない
ゾンビに加え、ケルベロスとリッカーという合計3種類のクリーチャーが登場するものの、贅沢を言えばもっと他のクリーチャーにも登場してもらった方がファンは喜んだんじゃないだろうか。1時間半の映画にあんまり詰め込みすぎるとそれはそれでとっ散らかっちゃう気もしなくはないので、これくらいが妥当かと思えなくもない。でもバイオって、その名の通り「生物災害」がテーマで、多種多様なクリーチャーが登場するのが他のゾンビ物との差別化ポイントだし、せっかくなら実写化作品にてそのリアルなクリーチャーたちを、せめてあと2~3種類は観てみたかったのが正直な気持ちだ。クモのウェブスピナーとかサメのネプチューンとかヘビのヨーンとか、モンスターパニックファン層も喜ぶ素材は十分あるのに。
・雰囲気が怖くない
ゲーム初期シリーズの魅力は、雰囲気重視の「静」の恐怖だった。例えば1作目では、薄気味悪く鬱蒼とした洋館を舞台に、足音が響く静かな廊下や部屋を徘徊し、いつ得体のしれないクリーチャーと遭遇するか。そういう常に緊張感が張っている怖い空気がホラー演出の華でもあった。しかし実写化である本作においては、数時間前まで人間がいた地下施設が舞台となり、薄気味悪さが弱い。ゾンビが登場する中盤までは、書類が散らばったり浸水した研究室はちょっと雰囲気が出ていたけど、全体的にホラーは薄味になっている。
怖がらせ方はだいたいハリウッド映画特有のワッとする脅かし系。またはグロ系の演出か。顔や手足など、ゾンビの人体欠損はそこそこインパクトがあり、小さい子供からしたら目を覆いたくなるかもしれん。見せ場の1つであるレーザートラップのシーンでも人体切断描写が強く、ジェームス隊長がサイコロステーキになる、もはやネット上ではネタとなり下がったシーンも、苦手な人はちょっとしたトラウマになるほど印象が強い(演じるコリン・サーモンは、同じポール監督の『エイリアンVSプレデター』でもサイコロステーキになりかかっていた)。でも結局はグロくて精神的に不快なだけであり、怖いという訳ではない。ちなみにこのレーザートラップはゲームの方にも逆輸入されており、4作目以降にちょこちょここの仕掛けが登場する。やはり本作がカプコンのスタッフに与えた影響は大きいようだ。
少なくとも、レインが最初に遭遇するゾンビの登場シーンは、絶対にゲーム1作目をオマージュした「振り向きゾンビ」にすべきでしたね。
■日本がらみ
■鑑定結果
映画としては堅実に楽しめる作品。でも、やはり原作の強いファンとしては、どうしてもゲームで光っていたじわりと広がるあの「恐怖」を重ねてしまうんです。
となります!!
それでは今回の鑑定はここまで。
またお会いしましょう!
よろしければシェアをしていただけると幸いです!↓↓
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