みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。
今回鑑定をするのは『SPIRIT』です。
ジェット・リーことリンチェイが、当時「最後の武術映画」と称して出演をしたカンフー映画です。
それでは早速鑑定していきましょう!
目次
■作品情報
・基本情報
■原題:霍元甲/Fearless
■発掘国/制作年:中国・香港
■キャッチコピー
・監督、キャスト
■監督:ロニー・ユー
■主要キャスト
フォ・ユアンジャ:ジェット・リー
ジンスン:ドン・ヨン
田中安野:中村獅童
ユエツー:スン・リー
ミスター三田:原田真人
ユアンジャの父:コリン・チョウ
チン師匠:チェン・チーフィ
ヘラクレス:ネイサン・ジョーンズ
司会者:ミシェル・ヨー ※劇場公開版では出演シーン全カット
・あらすじ
中国、清代の末期。天津の名門武術家系に生まれたフォ・ユアンジャ(ジェット・リー)は、幼いころから強さと武術に憧れていたが、病弱ということもあり父親の霍恩第(コリン・チョウ)はユアンジャに武術を教えなかった。父親の目を盗んで教本などを漁り、独学で武術を習得し始めたユアンジャの腕は見る見るうちに上達していき、成人になるころには天津で彼の右に出る者はほとんどいなくなっていた。しかしどんどん高飛車で傲慢になっていくユアンジャの「強さ」への熱が収まることはなく、酒の場で上辺だけの人間関係を築き続けたり財産もどんどん浪費してしまうなど、古くからの親友ジンスン(ドン・ヨン)でさえ止められないほどだった。ある日弟子の一人がチン師匠(チェン・チーフィ)に傷つけられたと知ったユアンジャは、チンに決闘を挑む。決闘の末、勢いに任せてチンを殺害してしまったユアンジャが家に帰ると、その報復として妻子が無残に殺されていた。大切なもの全てを失った悲壮感のもと、天津を離れて何千キロもさまよったユアンジャは川に落ちるのだが・・・。
■ざくっと感想
本作の鑑定結果は、、、
2004年のスマトラ沖地震に巻き込まれたリンチェイが、家族との時間や慈善活動の準備のために俳優業を一時休業し、その復帰作として選んだ本作は、中国の実在した武術家・フォ・ユアンジャの半生(フィクション)が描かれるドラマチックカンフー映画です。リンチェイが演じるフォ・ユアンジャはウォン・フェイフォンと同じくらい中国では有名な歴史人らしく、有名どころで言えば『ドラゴン 怒りの鉄拳』でブルース・リーが「俺の師匠を殺しやがってッ!!」とブチギレていたけど、その師匠がフォ・ユアンジャでしたね。リンチェイは『ドラゴン 怒りの鉄拳』のリメイクである『フィスト・オブ・レジェンド』でブルース・リーと同役を演じていたので、その師匠を本作で演じるとはなんとも運命的な配役だなあ。
『ドラゴン 怒りの鉄拳』の鑑定結果はこちら☆
リンチェイのありとあらゆるカンフーアクションが詰め込まれており、アクション監督としてユエン・ウーピンの構築するアクションも光っているので、間違いなく彼の代表作の一つとして挙げるに相応しいかっこよさと見応え、そして美意識に圧倒される作品。アクション映画好きにとってはカンフーVS他武術という異種格闘技戦の対戦カードも激アツ。撮影当時に「最後の武術映画」と称して主演をしただけのことはあるクオリティだ(その後もアクション映画には出演を続けているけど)。リンチェイの意気込みはアクションシーンだけでなく、彼が掲げる「平和」への想いがドラマ部分にも大きく作用し、読み応えのあるメッセージ性も楽しめる物語に仕上がっている。
『トム・ヤム・クン』でのVSトニー・ジャー戦が印象的だった筋肉男とのネイサン・ジョーンズとリンチェイの対決も実現! 日本からは中村獅童が参加しており、好感の持てる武人を演じながらラストにリンチェイと壮絶な対決を繰り広げます。
以下、ネタバレありの感想と考察になります。
作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!
■感想と考察
・リンチェイ×ウーピンの芸術アクション
いちいち決めるポーズがインスタ映えする、リンチェイの往年の構えよ。
(C)Wide River Investments Ltd. (C)Hero China International Ltd.
リンチェイは、まるで本作が自身が培ってきた武術の集大成であると言わんばかりに、余すことなく武術アクションを披露しているのが特に印象的だった。単にカンフーアクションとは言え、拳と蹴りによる拳法、様々な武器を扱う戦法、トリッキーなワイヤーワーク、華麗な演舞にアクロバットなど、アクションの魅せ方はよりどりみどり。それはもう「かっこいい」とかの次元ではない。血肉を削って習得してきたリンチェイの身体スキルと、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズでもリンチェイと組んできたユエン・ウーピンによる演出力の相乗効果があってこその芸術の域に達する。
アクションとドラマのどちらかに重点が傾き、どちらかが微妙なクオリティなっているなんてことはなく、しっかりと調和がとれているのも素晴らしい。アクションがあってのドラマ、ドラマがあってのアクションという構図が物凄く自然。それはストーリーの進行と共に変化していくユアンジャの「武術」への考えがしっかりとアクションムーブメントの中にも反映されているからだ。ただ己の強さのみに固執していた中盤までは、パンチやキックと言った、一見統制が撮れているように見える動きの中にユアンジャの高揚感や怒りといった邪念を強く感じる。チェン師匠を殺害してしまう場面では、もはや型の制御を失ってしまった荒々しさが明白だ(リンチェイの顔が怖すぎ)。その反面、家族や友情といった大切なものをすべて失い、「何のために武術をするのか」を導き出した後半からのアクションからは邪念が払拭されていて、動きの中に落ち着きと秩序を感じるようになるのが分かる。語らずともその場のアクションを観るだけで、主人公ユアンジャの内情を理解することができるのだ。
アクションとドラマが両立できている雰囲気は、世界中で評価されまくってるドニーさんの『イップ・マン』シリーズで感じた匂いと同じだ。リンチェイが長く決して平坦ではなかった人生の中で見つけた「平和への想い」、「何のために武術をするのか」、「本当の強さとは何なのか」などという強いメッセージを、フォ・ユアンジャという歴史人物の生涯に重ねて描き、劇中のアクションにも反映させる表現力。全ての要素が噛み合って相乗効果を生み出した完璧な仕上がりなんじゃないかな。『フレディVSジェイソン』という振れ幅のデカすぎる作品を監督したロニー・ユーが本作の監督であるとはとても思えん 笑
・VSチェン・チーフィのソードアクション
刃こぼれまでもリアルタイムで増えていく、殺る気MAXの斬り合い!
(C)Wide River Investments Ltd. (C)Hero China International Ltd.
ユアンジャの運命を大きく変えることになる、チン師匠との決闘。ここではリンチェイとチェン・チーフィ(『イップ・マン 序章』の冒頭でドニーさんと手合わせをしていた劉家拳の師匠の人。とても同一人物とは思えん面持ちだ 汗)の青龍刀を扱った壮絶なソードアクションが繰り広げられる。ここで何よりも目、いや耳を見張るのが、ズバリ刀から発せられる効果音だ。刀が空を切る斬撃音、刀身がぶつかり合い轟く金属音。鋭利で細く甲高いSEはとても耳障りが良いのだが、聞いているだけで刃の鋭さが伝わることもあり、ガチでアドレナリン放出が尋常ではない。柱や壁を裂いてえぐる斬撃の破壊描写、刀身に走る幾多の刃こぼれ、刀身が衝突して散る火花など、刀の切れ味を視覚的にも表現する演出も功を奏しており、命を懸けた緊張感という観点では本作随一の迫力を放つ素晴らしい見せ場だった。僅かながらも、水を使って刀の軌道を美しく見せる演出もあってグッド。いや、マジでここで心を奪われる人が続出するはず。それほどまでにリンチェイの華麗な刀さばきの美しさは言うまでもないし、これほどまでに「耳」を刺激するソードアクションは今まで観たことがない、必見!
・VSネイサン・ジョーンズの肉弾戦
オトナとコドモ!!
(C)Wide River Investments Ltd. (C)Hero China International Ltd.
アメリカ人の最強プロレスラーとして、ユアンジャと武術大会で闘うことになるヘラクレス・オブライエン。演じるのはオーストラリアが生んだ怪物プロレスラーのネイサン・ジョーンズ。リンチェイよりも一回り大きい背丈、筋肉と言う分厚い装甲で覆われた巨体、スキンヘッドのイカつい顔面など、インパクトに絞れば作中で最も存在感の立つ敵キャラに違いない。まさに柔と剛、チュンリーとザンギエフのファイト。ここでは巨体のプロレスラーらしく、ネイサンはひたすら筋肉圧力と勢いに任せたTHE・パワータイプな攻撃を仕掛け、リンチェイがその隙をついて地道に反撃をしていくの繰り返しで、流れとしては比較的単調な試合運びとなっている。だけどリンチェイの弱点の突き方がバラエティに富んでいて、急所打ちはもちろん、サブミッション(関節技)や自重利用などあらゆるイテテ攻撃よって悲鳴を連続させるネイサンを眺めているのは割と飽きない。なるほど、これはジャッキーが『ヤングマスター 師弟出馬』のラストバトルで取り入れていた手法と同じだ! そうでなくとも、ネイサンは一人で画面を支配してしまうほどの強烈なヴィジュアルの持ち主なので、バトルシーンの画の強さは推して知るべし。
ちなみにネイサンは、本作の出演がきっかけとなり、トニー・ジャーの『トム・ヤム・クン』に参加することにないったらしい。アジアの名だたるアクションスターたちと拳を交える機会に連続して恵まれて、彼の俳優業はこの頃が間違いなく最盛期だった。最近だとハリウッド作品の『マッド・マックス 怒りのデスロード』でもその個性を爆発させてたね。
ネイサンの出演する『マッド・マックス 怒りのデスロード』の鑑定結果はこちら☆
・VS白人三連撃
武器フェチにはたまらない連続試合。
(C)Wide River Investments Ltd. (C)Hero China International Ltd.
ユアンジャの活躍によって中国人の反欧感情が高まることを危惧した列強たちが開く異種格闘技トーナメント。ここでは拳法、槍、刀剣と、リンチェイの素手と武器による戦闘を矢継ぎ早に堪能することができる。リンチェイがほぼ一方通行でイギリスのボクサー、ベルギーの槍使い、欧州(国名が出ない)のフェンシング王者ら白人たちを沈めていく、本作きっての爽快感抜群な格闘シーンだ。武器を握らずとも強く、どんな武器を握ろうとも自由自在に操ってしまうリンチェイの万能武術スキルにはただただ脱帽するばかり。槍と刀剣の見た目は明らかにリンチェイのデビュー作『少林寺』を意識していて、ファンなら思わず唸らずにはいられないね。
ここの初っ端、ユアンジャに素手で呆気なく負ける、浜乙女の海苔みたいな濃い~モミアゲをしたイギリスのボクシング王者。演者がジャン=クロード・ルーイエという名前の人物だったので、まさかと思いアクション好きとしてすぐに調べてみたけど、ジャン=クロード・ヴァン・ダムとは1ミリも関係のない人でした笑
・VS中村獅童のラストバトル
ヘビのように不規則に動く武器、三節混。
(C)Wide River Investments Ltd. (C)Hero China International Ltd.
武器戦と拳法戦の両方が繰り広げられるハイライトだが、画として見栄えしているのは武器戦の方だ。リンチェイは三節混、中村獅童は刀を握りしめて闘う異種武器戦として、そもそも対戦設定のオプションが面白い。三節混とは3本の棒を鎖で繋いだ、リーチがかなり長い分使いこなすにはかなりの技量を必要とする特殊武器だ。歴代映画だと『少林寺三十六房』でリュー・チャーフィーが得物としていたのが多分一番有名だろう。しかし本作でのリンチェイの三節混術、映える映える。実はリンチェイ自身も『少林寺』で既に三節混の演舞を披露していたのだが、あの頃と比べてもキレが全く衰えておらず、むしろ技の熟練度とラインナップが増している分こちらの方が異次元の見応えがある。リンチェイの鬼畜過ぎる動きに中村獅童もここばかりは着いていけなかったようで、ほとんど吹き替えを使用してるのが素人目で観ていても目立つ 笑 しょーがない、こんな動きに合わせるのは吹き替えだって相当なプレッシャーだろうに。スクリーン内でリンチェイ以上に三節混が似合い、120%で使いこなせるアクション俳優は現代の映画界には存在しないことが立証された瞬間でもある。
逆に後に続く素手での勝負は、試合中に毒を盛られたユアンジャのドラマが並行して織り込まれているので、純粋にアクションの盛観さでは武器戦に拮抗できなかったのが残念だ(普通にかっこいい動きをしてるんだけどね)。とは言っても、ここではユアンジャが人生の果てに導き出した武術と勝利への定義が語られる、物語においては極めて重要なシーンとなっているので、アクションに重点が寄っていないのは至極当然のことである。毒を盛られても最後まで死力を尽くすユアンジャと、弱ったユアンジャを心配しながらも武人として全力で拳を交える田中の死闘は、アクションの派手さとは異なる意味合いで魂を揺さぶられるだろう。
■日本がらみ
三田を演じる原田真人は『ラストサムライ』でも同じような風貌と同じような役柄で出演していたのが紛らわしくて、たまにどっちがどっちだったか分からなくなる(そんなの僕だけか)。
■鑑定結
リンチェイが放つありとあらゆる武術アクションを堪能したい人は絶対外しておけない名作です!
となります!!
同じくフォ・ユアンジャが師匠として登場する『ドラゴン 怒りの鉄拳』の鑑定結果も併せてどうぞ☆
それでは今回の鑑定はここまで。
またお会いしましょう!
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