みなさんこんにちは! 管理人のJing-Fuです。
今回鑑定をするのは『るろうに剣心』です。
日本の人気漫画を原作とした実写アクションシリーズの第一作目。
最新作の『るろうに剣心最終章TheFinal』と『るろうに剣心最終章TheBeginning』の公開がいよいよ迫る中、劇場で全国公開されているリバイバル上映に足を運んできました。
今回は、その凄まじいアクションシーンの解説を中心に鑑定していきます!
目次
■作品情報
・基本情報
(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会
■英題:RUROUNI KENSHIN
■発掘国/制作年:日本(2012)
■キャッチコピー
・監督、キャスト
■監督:大友 啓史
■アクション監督:谷垣健治
■主要キャスト
緋村剣心:佐藤健
神谷薫:武井咲
鵜堂刃衛:吉川晃司
高荷恵:蒼井優
相良左之助:青木崇高
外印:綾野剛
明神弥彦:田中偉登
戌亥番神:須藤元気
斉藤一:江口洋介
武田観柳:香川照之
・あらすじ
動乱の時代であった幕末期。幕府の要人暗殺に暗躍していた剣客の緋村剣心(佐藤健)は、そのあまりにも強力な剣術から「人斬り抜刀斎(ばっとうさい)」と呼ばれて恐れられており、京都を震撼させていた。それから10年後の明治11年。剣心は以前と打って変わって「不殺(ころさず)の誓い」を掲げ、弱き人々を助ける流浪人(るろうに)として日本全国を旅して回っていた。ある日東京にたどり着いた剣心は、「神谷活心流 人斬り抜刀斎」と呼ばれる辻斬りがお尋ね者になっていることに気付く。身に覚えのない話に首を傾げる剣心だったが、そこに神谷活心流剣術の師範代である少女の神谷薫(武井咲)が現れ、剣心を辻斬りと勘違いして挑みかかってきたのだが・・・。
■ざくっと感想
本作の鑑定結果は、、、
和月伸宏原作、1990年代の少年ジャンプを代表する漫画の一つである『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の実写化作品。動乱の時代であった幕末〜明治初期の日本を舞台に、かつて「人斬り抜刀斎」と呼ばれて恐れられた凄腕の剣客、緋村剣心の活躍と葛藤を描く歴史アクション大作です。
お恥ずかしながら管理人は原作を1ミリも読んだことがない身なんですけど、特に原作を知らなくても不便なことはなく、誰でも楽しめる重厚なストーリーと徹底された時代構成がこの上ない魅力となっています。そして何より、本作最大のアピールポイントとなっているのが、観る者を圧倒する壮絶なアクションの数々。その迫力とスピード感は、それまでの時代劇ソードアクションの在り方を変えてしまっただけでなく、数ある邦画アクション映画の中でトップクラスに君臨すると断言できるレベルで、日本だけでなく世界中で評価されていることからもそれを伺うことができる。アクション監督に谷垣健治、スタントコーディネーターに大内貴仁と、アクションの本場である香港にて、香港アクションスターのドニー・イェンのもとで長年キャリアを積んできた逸材が参加しているからこその演出クオリティなのだ。
監督は、『龍馬伝』や『ミュージアム』などで知られる大友啓史。そして『亜人』『バクマン』などの人気俳優である佐藤健が主役の剣心を演じている。他にも武井咲、吉川晃司、蒼井優、江口洋介に香川照之と、あまりにも豪華すぎる出演者達が作品に華を添えています。
以下、ネタバレありの感想と考察になります。
作品を未見の方は鑑賞後の閲覧をおすすめします!
■感想と考察
・最も優れたアクション実写化作品
(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会
ファンに愛されている原作という存在がある分、漫画やゲームの実写映画というのは特に観客からの評価がシビアに見られるジャンルだと思う。邦画におけるアクションを売りにした実写化作品て、ストーリーの逸脱っぷりと製作者が観客に対してナメくさった禺言を発したことで大炎上した『進撃の巨人』よろしく、決して成功例が多いと言うわけではない。最近だと『BLEACH』も大コケして、製作費も回収できなくて惨敗したらしいからなぁ。
そんな中で本作は、変にオリジナルストーリーに走るわけでもなく原作の流れをベースにしている物語となっているようで、まず入り口部分から原作ファンに好意的に受け入れられているみたい。そして明治時代初期のノスタルジックな世界観の遵守、実写における違和感を出さないギリギリラインで原作アニメの動きを再現する立体的なソードアクションなど、実写作品としてもいち作品としてもこれといった死角が見当たらない。
一番重要なのが、劇中のキャラ達の風貌が「コスプレ」になっていないこと。当然ハリウッドと邦画では映画の製作費の規模が違うため、邦画が変にビジュアル面にコストをかけるとかえって安っぽく見えてしまうのが難しいところ。本作では主役の剣心をはじめとする原作ありきのキャラクター達の衣装は、派手さを狙うよりもリアルテイストに描きなおされているため、原作のイメージを守りつつ実写化における違和感を、見事に回避もできてるんですね〜。
この映画が映画として評価されているのは、「ストーリーは見応えがあるけどアクションがいまいち」でも「アクションが凄いだけで中身のない物語」でもなく、ストーリーとアクションが調和を取れているからじゃないだろうか。「殺さずの誓い」という剣心のバックストーリーと葛藤、そして相手を斬れない「逆刃刀」という武器が独特のアクションを演出。ストーリーとアクションが互いに影響してそれぞれの魅力を引き立て合う、まさに相乗効果という言葉がうってつけじゃないかな。
アクションを売りにした邦画における実写化作品としては、間違いなく最も優れた作品になっていることでしょう。
・目指したのは、日本の『ワンチャイ』
ドニーさんVSウー・ジンに匹敵する、佐藤健VS綾野剛。
(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会
大友監督はドニー・イェンの『ドラゴン危機一発’97』を観てそのアクションのヤンチャっぷりに目を奪われたらしく(当然だ)、それがきっかけでドニーさんのもとで長年仕事をしていた日本人の谷垣さんの存在を知り、本作のアクション監督にオファーしたとインタビューで語っている。しかも大友監督は谷垣さんとの初対面時に「日本版ワンチャイを撮りましょう」という発言をしたらしい。「かっこいいアクションを撮ろう」とか「とりあえずアクションは派手な方向で」とかではなく、よりにもよって「ワンチャイ」というコアなワードをチョイス。ワンチャイとは、ジェット・リーのキャリアを代表する香港映画の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズのことで、列強の介入を受ける激動の清朝末期を舞台に、リンチェイ演じる英雄ウォン・フェイフォンの活躍を描いた作品だ。アヘンや銃といった異国からの影響が絡むヒストリカルなストーリーが重なり、『るろ剣』の明治初期とほぼ同時期の時代劇でもあり、同じ土台で壮絶なアクションが繰り広げられる作品を引き合いに出すのは非常に理に叶っていると思いませんか。大友監督の映画ならびにアクションへの志が生皮ではないことが十分に伝わるはずだ。
↑これが『ワンチャイ』のジェット・リーことリンチェイ。構えが板についている。
で、流石は香港映画界でメシを食べてきた谷垣さん。構築するアクション演出がとにかく凄まじいの一言に尽きる。だいたい平面的な横への動きに限定されがちなチャンバラアクションに、華麗なワイヤーアクションとアクロバティックな動きを取り込むことによって、キャラクターがタテヨコナナメに動き回る立体的なアクションを創り上げたんだから。ラストの剣心VS鵜堂刃衛(佐藤健VS吉川晃司)ももちろん凄まじかったが、剣心VS外印(佐藤健VS綾野剛)の中ボス戦がその真骨頂。吹き抜けの空間内を、多様なギミックを利用して縦横無尽に動き回るキレッキレのバトル。『SPL 狼よ静かに死ね』のドニーさんVSウー・ジンを彷彿とさせるような、「殺陣など存在せず本当に殺し合っているんじゃないか」と錯覚するほどの熱量になっていてビビるよ。
一連のアクションを複数のカメラを同時に使用してマスターショット(長回し)で撮ることにより、カメラごとに映像が切り替わってもツギハギ感をほとんど感じさせない。しかもアクションの動きがスピーディでカット割も少なくないにも関わらず、アクションの主体人物を画面の中央に置くことを意識しているので、めちゃくちゃアクションが観やすい。これ重要! スタローンは監督仕事をする時にこれを見習え! 笑
本作のヒットによって日本国内でもようやく谷垣さんの名前と手腕が浸透するきっかけとなったのも頷ける。もちろん、それに応えて漫画の中のキャラクターになりきった動きを具現化する、すなわちイイ仕事をする佐藤健ら役者陣の踏ん張りもあってこそだけどね!
香港映画で培われたDNAと日本という基盤が組み合わさることにより、本当に素晴らしいアクション化学反応が起こったと思う。「日本映画にしてはアクションがすごい」「邦画としてはかなり頑張っている」とかじゃなくて、「これが日本のアクション」として称えたいですネ。
・「痛さ」を感じる効果的なアクション演出
「不殺の誓い」を掲げる剣心の闘い方は、同ジャンルの刀アクションと比較しても非常に独創的。逆刃刀は相手を斬ることができない特殊な刀なので、斬撃が打撃に変わるという一風変わった攻撃を見ることができる。刀を振り回して相手を斬るのではなく、叩くというアクションが斬新。また、剣心は劇中で2回ほど刀の「柄」を利用したカウンターを繰り出すんだけど、こんな相手の崩し方今までに観たことがなかったし、剣心というキャラクター性を表現するかのような妙技でした。
そんな逆刃刀は、単に人を斬らないという設定だけに留まらず、アクションの迫力を効果的に表現できるアイテムとしても相性が良かったみたい。剣心が刀身を相手に叩きつける動きをスローで流し、ヒットの瞬間に汗とパワーパウダー(粉のこと)を撒き散らすことによってその威力がどれだけ強いのかが画面越しにもよく伝わってくるのだ。刀で人を殴った時のズッシリ感、かなり重たそうに見えた。同様に、剣心に吹っ飛ばされた相手がただ飛んでいくのではなく、何か物に当たってそれを壊すことによって「痛そう」と感じさせるテクニックも上手い。本作には、そういった観客に「迫力と痛さ」を間接的に伝達する、いかにも香港映画らしいオプション演出が散りばめられていることも特徴の一つだ。アクション映画を観ていて「凄い」と思うことは何回でもあるけど、「痛そう」と思うことができる表現は、実はあまり多くないからね。
左之助の持つ斬馬刀の見せ方も良かった。左之助が手放した斬馬刀を飲食店の女店員がかろうじて支える様子は、地味ながらも左之助がいざ斬馬刀を振り回す前から「この武器は相当重いんだな」というのが自然と分かるわけ。アクションアイテムの特性を表現する方法は、何も実際にアクションをやるだけが全てじゃないのだ。ちなみに斬馬刀が得物の左之助だが、どちらかと言えば彼の自慢は武器ではなく拳で、しかも重視されているのは技のテクニカルさではなく気合の喧嘩殺法。ドロップキックやスープレックスといった、剣心が見せないパワー一辺倒の技を全て請け負っていて、これぞ男って感じでかっこいい! 元総合格闘家の須藤元気演じる戌亥番神と左之助のバトルは力のこもった殴り合いが続くが、途中で香港コメディを思わせるような抜けたくだりが挿入されており、緊迫しているはずなのに思わず頬が緩む 笑
・『ルパン三世』をオマージュしたアクション?
圧巻のドリフト走り!!!
(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会
物語の終盤で勃発する、剣心と左之助が武田観柳の屋敷に乗り込み、100人の敵を次々と薙ぎ倒していく爽快感抜群の見せ場。この場面で剣心が地面に対して体を平行に倒し、急傾斜な角度で弧を描いて走り抜けるショットがあるんだけど、これがまた鳥肌が立つくらいかっこいい!! 通称「ドリフト走り」と呼ばれるこのアクションは、本作を象徴するアクションの筆頭格。実はこのドリフト走り、もともとは谷垣さんたちドニーさん組が、「『ルパン三世 カリオストロの城』の冒頭で、ルパンの愛車であるフィアットが崖を斜めに登っていくシーンを人間でやったらどうなるか」として発案していたアイデアが起源という面白いエピソードがあったりする。その後『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』の冒頭で、ドニーさんがドリフト走りのプロトタイプを導入し、その完成版として仕上げたのが本作のドリフト走りになっているらしいです。ドニーさんのもなかなかインパクトが大きい走りだったけど、本作で佐藤健が見せたドリフト走りはスピード感もキレもさらに磨かれていてぐうの音もでなかった。
↑『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』でドニーさんが見せた、ドリフト走りのプロトタイプ。映像で観ると、丸みを帯びた軌道の面白さが分かる。
あと、序盤の神谷道場で剣心が武田観柳配下の地上げ屋達をシバき倒していくシーン。アクションの締めとして、剣心が2本の木刀で相手の顔面を両側から殴りつけるカットが映るんだけど、これは『七福星』でサモ・ハンが倉田保昭(のスタントマン)の顔に二刀ラケットを炸裂させたシーンのオマージュだと、谷垣さんが著書で語っていた。いいねえ。
↑このシーンの元ネタは・・・。
↑『七福星』のココ。本気でサモ・ハンに両頬をシバかれたスタントマンは病院送りになったとか・・・。
これらのような香港映画や他作品からの影響やリスペクトは、本作も含めて後のシリーズでも数多く垣間見えることになるので、ファンであればそれらを探してニヤニヤするのもまた一興である。
・個性が過ぎるキャスト
日本映画界屈指の豪華出演者が集められており、ギャラだけでも負担がとんでもなさそうだけど、その分キャラクター達の描写やドラマが研磨されていることは言うまでもない。吉川晃司の目ヂカラとか江口洋介の鋭さとか、個性が武器の職業である俳優の中でも特に個性が突出しすぎた人選がなされている印象が強く、キャラクターに深みを与える大友監督のセンスの良さが際立つ。事件の元締めとなる武田観柳役の香川照之なんか、自由奔放で掴み所のない人物像を憎たらしさ全開で演じており、素人目でも彼が演技を存分に楽しんでいるのが分かるからね 笑
「ネコちゃ〜ん♡」の武井咲にハートを射抜かれないよう注意 笑
・ブレイク前のあの俳優も?
出演陣の豪華さが目立つ本作だが、実は主要キャスト以外のちょっとした脇役にも、後にスターとなる俳優たちが起用されているのが今なら分かる。武田観柳が町の水に毒を放ち、その被害者たちが道場に運ばれてくるシーンで、左之助が運んでくる女の子は、なんと永野芽郁、僕らの芽郁ちゃんなのだ!! まだ子役時代で幼い顔つきなので、これは言われないと絶対に気づかない。そして剣心が抜刀斎と名乗っていた過去の回想シーンで、婚約を目前に控えながらも剣心に斬られて絶命してしまう悲しい運命の武士を、『東京喰種』や『初恋』の窪田正孝が演じていた。
外印役の綾野剛も、この時はまだ今ほど売れている状態ではなかったし、主演の佐藤健も本作が起爆剤となって人気が急上昇することになった。そう踏まえると日本国内でも大いに注目されることになった本作は、少なからず現在の日本映画界で活躍している若手実力派俳優たちに翼を与えた、重要な役割も担っていると言えるかもですね。
特に窪田正孝が演じた演じた武士は剣心の頬の十字傷のきっかけとなった人物であり、最新作では有村架純が演じる彼の婚約者が登場するので、また何らかの形で物語に絡んでくるのは間違いないでしょう!
■鑑定結果
原作ファンもミーハーも裏切らなかった、非常に優秀な実写化作品であると同時に日本を代表するアクション映画です!
となります!!
続編のアクションシーンについても解説しています☆
・『るろうに剣心 京都大火編』
・『るろうに剣心 伝説の最期編』
・『るろうに剣心 最終章 The Final』
・『るろうに剣心 最終章 The Beginning』
本作でアクション監督を務めた谷垣健治氏が監督を務めた香港映画、『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』の記事も書いています。ドニー・イェンが主役で日本が舞台となっており、エンタメ感抜群のアクションが最高な作品でした! 『るろうに剣心』のアクションにハマった人には是非お勧めした一品です!
それでは今回の鑑定はここまで。
またお会いしましょう!
よろしければシェアをしていただけると幸いです!↓↓
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